第65話 魔導師長シアン
「師匠っ♡シアンね、師匠のこと、だーいしゅきなの〜♡」
シアン。
ヒルザとダイアナの歳の離れた異母妹で、部族民とは思えぬお上品で綺麗な女の子。
ヒルザとダイアナ、シアンもそうだが彼女達の生まれた部族……「ヴァルバ族」は、ド級の蛮族ド蛮族で、男達は女を各地から攫ってきて無理矢理孕ませ、民を増やしているらしい。
遊牧民で一つの所に留まらず、世界中を荒らし回っているのだとか?
もちろん、各国は討伐しようとしてくるが、ヴァルバ族の戦士は、恐れを知らず死ぬ気で殺しにくるド蛮族。それだけでなく、各地にヴァルバ族の分家というか氏族が分散しているから、滅ぼしきることもできないらしい。クソ害悪ですねこれは……。
ヒルザはそんなド蛮族な部族社会を嫌って、妹達を連れて逃げたらしい。なんか辛い生活だったらしいよ?他人の苦労話とか興味ねーけど。
で、シアンは、どこかしらの国の貴族の娘から産まれた子。目の色はヴァルバ族らしい赤色だが、肌色は白で白い髪をした、産まれながらに高貴な血筋のお上品な美少女だった。
そんなシアンは、年齢的には十代前半の少女だが、三人くらいは俺の子供を産んでいるし……、空中都市驚異のメカニズム(?)により、不老不死になっている。
なので今も、白肌白髪の美ロリである。やったぜ。
ああ、因みに俺は別にロリコンではない。
ロリもいけるって話だ。
と言うか、この世界は中世だからね?日本だって、ほんの百年どころか数十年前、二次大戦前後では、農村の子なんて十五で嫁に行ってガキ孕みました〜なんて当たり前だったじゃん。
この世界でもそうで、基本的には十五くらいで結婚してガキ産んでないと行き遅れ扱いだなあ。
十三のガキを孕ませても、別に普通では?ってカウントだ。
寧ろ、二十歳超えてたエリカとかヒルザとかを孕ませたら「ババアじゃん?!」みたいな反応されたわ。
で……、そう。
この子は、弟子なんだよな。
ダメな方の弟子であるザニーとは違い、『魔術(マジック)』のスキルを持って生まれた才能マン。
二番弟子だが、一番弟子より出来が良い。
恐らくは、俺の技術にしてスキルである『召喚(サモン)』を、この世界で俺の次に使いこなしているのが、彼女だった……。
そんなシアンは今。
「で、何やってんの?」
「シアンはねぇ、空中都市の『魔導師長』なんだよぉ♡」
これまた勝手に、魔導師長などという謎役職をやっていた……。
「ヨシ!じゃあ魔導師長に良い感じの杖をあげちゃう♡」
「わあっ!師匠、ありがと〜!」
なので、公認してやる。
威張っていいぞ、魔導師長!俺の一存で即罷免できるけれども。
「そうだ!後で任官式やってやるよ!空中都市の民を全員集めて、パレードもやろう!他のみんなにも役職をやるよ、生き甲斐をやるよ!俺が全部くれてやる!」
だから、一生をかけて俺に尽くすんだぞー。
「嬉しい……!私ね、師匠?あなたの為だけに、生きるよ♡」
んー、景気のいいこと言われちゃったぞ。
本当かどうかは分からないが、忠誠の言葉は気持ちがいいな!ベッドの中での「愛してる」という言葉に匹敵する気持ちよさだ。中身のなさという意味でも同じだね。
実際そうであるかはどうせ分からないのだから、言葉をかけるのは大事だぞ。
世の中の多くの童貞野郎諸君は、黙っていても気持ちは伝わる!愛すれば愛し返してもらえるんだ!とか、気持ち悪い妄想をしていると思われるが、世の中はもちろんそんなもんではなく……。
愛も友情もなんでも、時間が経てば、或いは故あれば、薄れて消えてゆくものなんだよ。
だから、行動や言葉で愛を示してやるのが一番なんですよね。
逆説的に言えば、内心では愛してなくとも、行動を十分に示せば愛している「ということになる」んだよ。
じゃなきゃ、ホストやキャバクラなんてもんはねえよなあ?
アレも、知っての通り、客のことを本気で愛しているホストキャバ嬢なんてこの世にいない訳よ。
でも、あたかも愛しているかのように振る舞うから、馬鹿な客共は発情して高い買い物をしていってくれんの。
それと同じ。
俺は、愛しているようにみせてやっている。
好きなだけ贅沢させて、ガキを産ませ、認知してやり、教育もしてやる。
知りたいことを教え、欲しいものを与え、レベルも上げてやり……。
愛の言葉を囁いて、ベッドの上で散々に可愛がってやっている……。
俺が内心で、「仲が冷めたら空中都市から放り出そう」とか、「管理外の場所で死んだらしゃーなし」とか、そんなことを思っていたとしても、俺の行動は常に愛に溢れている。
なので、対外的にも俺は愛妻家で通っているんだよね。
だがそれは当たり前なんだよ。
俺だって、女達を、従順で顔のいい女を選んで手に入れてきた訳で。
あっち側が、強くて金持ちでハンサムな男を求めてきても、妥当な話じゃん?って感じだろ。
え?何?
利害関係とかそういうの抜きで、真実の愛!とかそんなものが、この世にあるとお思いですか?
んな訳ないでしょそりゃ。
物語の中では、どーしよーもない弱者男性が何故か美人に好かれてよしよしされるようなのが多い。逆も然りで、普通の女子高生が学園の王子様達にモテモテ!みたいな少女漫画なんてあるあるだ。
だが、まあ。
冷静に考えて欲しい。
そんな訳ねーだろ。
憧れのあの子、クラスのマドンナは、イケメンサッカー部のエースとよろしくやってるし、学園の王子様は一軍女子の彼女がいるわ。
夢見過ぎーーーッ!!!
その点、俺はもうなんか……、凄いよ?
「シアン、ここでの生活は楽しいか?」
「うんっ!楽しいよ!ここだと、飢えることも凍えることもないし、ヴァルバ族だからって知らない人達に石を投げられたりもしないんだもん!」
「そうだなあ!お前らみたいな脱走したヴァルバ族は、普通ならどうなるんだ?」
「あはは、必死に働いて生き延びても、誰にも受け入れてもらえずに、最後は野垂れ死にするに決まってるじゃん!そんな分かりきったことを聞くなんて、師匠ったら変なのー!」
「野垂れ死に覚悟で逃げたのか?」
「うん!だってヴァルバ族にいたら、私も孕み袋として消費されちゃうし……。それなら、尊厳を保ったまま、野垂れ死に覚悟で旅に出るかなーって」
そう……、逆。逆なんだよ。
女側がこの認識なんだ。
弱者男性が何故か美人によしよしされるの逆。
弱者女性が、何故か、世界で一番強くて金持ちでハンサムな貴族様に飼われて、よしよしされている構図になる……。
なので実は、俺ってめちゃくちゃやっているように見えるかもしれないけど、周り……空中都市外部からの評価って、めちゃくちゃ高いんだよね。
もちろん、貴族的には、どこの血筋かもわかったもんじゃないヴァルバ族みたいな蛮族を娶ったりしているので、その点については褒められたもんじゃないんだが……。
……けど、民にめちゃくちゃ優しいし、善政もやってて、国にもたくさんの技術や宝物を気前よく渡してる。
賛否あれども圧倒的に賛の方が多い、とにかくめっちゃ凄い奴って扱いなのだ。
報復だの何だので他人を殺すこともあるが、それは貴族の義務だし、殺す時はちゃんとターゲットを決めての殺人なので、「殺し過ぎない」と評価されている。
吹雪の中に引きこもってこの世界の人々を奴隷にしているような陰キャ山賊団の連中とは違い、公にも立場を認められた立派な貴族なのだ、俺は。
「俺の孕み袋やってるのは良いのか?」
「うんっ!師匠の子供、いっぱいほしいもん!……それに、部族の孕み袋の待遇ってもっと酷いよ?私のお母さんとか、使われ過ぎて三年で壊れちゃったらしいし……。師匠は、抱いてくれる時、すっごく優しいよね!前戯もしてくれるし、体調悪い日は遠慮してくれるし!複数の男で回したりもしないし!」
「そりゃそうだ。大切な弟子は、ちゃんと優しーく可愛がってやらなきゃだろ?」
「えへへ〜♡嬉しいなぁ、こんなに幸せになれるなんて、思ってもいなかった……」
「安心しろ、これからは一生、幸せなことしかないからな。俺に従う限りは、いくらでも幸福を与えてやる」
「うんっ♡私ね、師匠の言うこと、何でも聞くからっ♡」
いやあ……、やっぱり愛だよねっ!!!!
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