第64話 副将軍ダイアナ
「旦那様……。アッシャーの民、総勢二千四十五人。揃いました」
はい。
申し遅れました、こちら正妻。
第三王女のユスティーヌ様です。
こいつこんなお澄まし顔しとるけどな、夜はほんまにすごいんやで?腰使いもうぐわんぐわんよ。ぐわんぐわん。
……それは良いとして、現在。
俺は、空中都市に住む全ての人を集めていた。
「はいっ、注目!」
俺は、十枚の黒い翼を生やして、空に浮いて見せる。
ヒルザは、六枚の赤い翼で空を飛ぶ。
「こちら、『アッシャーの民』の標準装備とします」
エ?エト……?と、困惑の声。
説明してあげちゃおう。
「なんかぁ、皆さん、地上の人達のことを『穢れた下界』とか言ってるらしいじゃん?」
あ、いや、その……!弁明の声。
「いや!良いんだ!下界が穢れてるって認識は正しい!君達は間違ってないゾ!我々は選ばれし者なんダ!」
ワアッ……!と歓声。
「……なので君達には、空中都市に住むアッシャーの民の印として!下界に落ちても戻って来れるように、翼を授けようじゃないか!!!!」
ワアアアアッ!!!!おお、大歓声。ある種のライブだな、二千人もいるしな。
そんな訳で、女達と子供達全員に、ナノマシンをぶっ込んでいく。
シャドウフォークの子なんかは、自前の羽がある子もいたが、そんな子にも配慮して、非生物的な幾何学模様のエネルギー膜にしてあるからね。これでOKよ。
「この光の翼がある限り、我々は同朋だ!家族だ!!一族だ!!!この空中都市で、俺の所有物として、穏やかに生き続けるがよい!わはははははは!!!」
ばんざーい!ばんざーい!
はい。
そんな訳で、今この空中都市のトレンドはズバリ「選民思想」!
愚かで穢らわしい下界の民を、美しい空中都市から見下ろすアッシャー族!
そんな偉そうなお高く止まったアッシャー族の女達は、俺の前では単なる雌豚!
楽しいにも程があるでしょこれ。
え?良いのこれ?こんな楽しさ許されて?
金出しますよ?ホ別五万くらい。
いやぁ……、外資マンだった頃はよくやったよ、買春。
ジャブジャブ贅沢させて女の子の男性観ぶっ壊して、まともな一般男性では満足できない身体にする遊び、楽しかったなあ……!
その大規模バージョンが楽しめて、しかも大成功な訳だよ今?いやー、楽しいね!我が世の春って感じ?今までの人生で春以外なかったような気がするけど。
何にせよ、楽しい。最高に楽しいよ。
神様ってこんな気持ちなのかなあ?
……いや、転生の女神は「やめとけ」って遠回しに言ってきたし、あくまでも人として楽しんだ方がいいか。
神にも、なろうと思えばなれそうな感覚はあるが、なる前に人の生を楽しまなきゃな!
はい。
そんな訳で、俺は、アッシャーの民の副将軍を名乗るダイアナに会うことにした。
ダイアナは、赤毛のリカント。ヒルザの異母姉妹だな。
弓の名手で、『弓術(アーチェリースキル)』を持ち、腕前に誇りがある凛とした美女……だった。
「よう」
「ああっ、旦那様っ♡」
訓練場となっている、空中都市の巨大コロシアムにて、的に矢を射ているダイアナは。
俺の声を聞くと、昔は散々「アタシの誇りなんだよ」と言っていた、大事な大事な弓矢を雑に投げ捨てて、俺に抱きついてきた……。
うーん!
良いね!
……俺は別にウルクの王様とかではないので、自分に靡かない女が靡いたら興味なくなるとか、そんなことはないです。
弓が誇りなんだ!凛としてて可愛いね!
誇りを捨てて俺に媚びるんだ!バカみたいで可愛いね!
同じことだわね。
どっちであれ、ちゃーんと尻尾フリフリして(物理的にも)、俺を色んな意味で気持ちよーくしてくれるんなら、文句はない。
俺は、飛びついてくるダイアナを抱きしめて、優しく撫でた。ケツも揉んだ。
そんな俺のセクハラ抱擁に、とろんと蕩けた瞳で酔いしれるダイアナは……。
「アタシに会いに来てくれたの?嬉しい……♡」
と、頬にキスをし、俺の胸元に顔を埋めて匂いを嗅いできた……。
あー可愛い!
昔は散々、部族の誇りがどうこうと勇ましいこと言ってたのに、今じゃただの雌犬だあ。最高だね!
誇りってのも……、腹一杯食えて、安全な場所でセックスに溺れて、労働からも解放されるってなると……ってか?
「でも、どうして会いに来てくれたの?ア、アタシ、なんか悪いことした……?」
んー。
大分怯えてるな。
他の子にも会いに行ったが、俺が自発的に会いに来るのは久々だからって、捨てられると思ってビビってたなみんな。
うーん、ちょっぴりかわいそう?
俺のものなんだから、もうちょっと大切にしてやろうか。
例え旅に出ている途中でも、ちょくちょく戻って……いや、俺のプライベートに余計なタスクとして挟まれるほどではないんだよなあ。
まあ、こうして、暇な時には顔を出してやって、ちょっと甘い言葉を投げかけてやりゃあ良いだろ、多分。
「あー、そう!副将軍になった記念にぃ、魔法の弓とかあげちゃおうかなーって!」
「ありがとう、旦那様っ♡」
なんか良い感じの弓をあげる。
あ、そうそう。
護身用も兼ねて、翼型ナノマシンと同じ時代と世界の謎科学武器をあげてるんだよね、今。魔法の、とは言ってるが、魔法の産物ではない。
魔力関係ない武装だから、この世界の魔法とかの不思議パワーには基本的に干渉されないし、デザインも未来都市風で空中都市の科学ファンタジーな神秘性?的なそういうアレをイメージ通りに再現してくれてる感じなので、良いね。
好感度ヨシ!
「下界の民が、もしかしたらこの美しい空中都市に侵攻してくる可能性もあるし、モンスターの襲撃だってあり得る。そんな時に、この都市を守るのは……、君だッ!!!」
「うん……、うんっ!アタシが!アタシ達が守るよ!旦那様の役に立つ!!!」
やっぱり、こいつもユートピア過ぎてディストピアな空中都市で狂いそうになってるのか。
俺には理解できない話だが、仕事を辞めるとやることがなくて逆に鬱になるような人も、世の中には多いらしい。
俺が、与えられた贅沢で全てを忘れて享楽に耽り続けるレベルの愚かな女は集めていないってのもあるけどね。
まーアレよ。
人間を育てるには水槽内が綺麗過ぎても汚過ぎてもダメってことだな!
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