第63話 防衛将軍ヒルザ

学術都市バレアが選挙期間中で、学院がお休みなので、俺は今、空中都市に帰還している。


そしてそこで、女達の様子を見て回ることとした。


そんな訳で、はい、こちら。


ヒルザとダイアナ。


そしてシアン。


この三人は、最初に俺が仲間にした愛人達だ。


ちょっと可愛がってやったらすぐにハメ穴女になったもんな、ちょろいわー。


「旦那様!」


腹筋バキバキ、高身長の褐色美女であるヒルザが、喜色満面の笑みを浮かべながら、俺に抱きついてくる。


ムチムチでありつつもしっとりと汗ばんだおっぱいを俺に押し付け、ぶっとい腕を肩に回してきた。ええのぉ〜!


あーあ、さっきまであんなにキリッとしたツラでカッコつけてたのにね。


俺の前ではガンガン「女」出してくるわ。


俺は、腕をヒルザの後ろに回し、筋肉尻を撫でつつ、キスをしてやった。


そして、しばらくいちゃついた後に、ここ……空中都市の大闘技場の休憩室で、話を聞くことにした。


「どうだ、最近は?」


「旦那様の国を守るべく、空中都市軍の将軍をやっているぞ」


んー、そういやそんな話になってたな。


任命した覚えがないんだが、まあ、良いんじゃないの?


「良いね!じゃあこれからも将軍やってくれ。ほーら、将軍の証に宝剣あげちゃう!」


そう言って俺は、召喚魔法で、なんか強そうな剣を適当に召喚してあげた。


そしたらもう、キラキラした目で喜んでんの。


安上がりで良いわぁ。


地球の女ったらないぜ?


やれ、ブランドの何十万もする鞄が欲しいだ、フランス料理を食いてえだのと……。


この世界の女達は基本的に、殆どがブスで汚くてマナーもなってないが、上澄みの女達を捕まえて自分で躾けると、地球の女よりよっぽど良い女になるぜ!


……いやマジで、この世界、ブスが多過ぎる。


地球の女はまあ、無理矢理整形だのをしたり、化粧だのをして整えられるが、この世界にはあんまりないからな。


化粧なんてできるのは金持ちだけ、殆どの貧民だの冒険者だのは、隙間風だらけの荒屋で生まれ育ち、栄養不足で痩せ細り、ノミやシラミにたかられて皮膚はボロボロ、臭くて汚い。


だから俺が捕まえた女達は、若くて綺麗な貴族女や、幼い頃から肉体が強い亜人の類だな。


そいつらは、まあそれなりの立場があった女達だが、地球のほんまもんの贅沢には流石に敵わない。


俺好みに磨いて、マナーを教え込み、たーっぷり贅沢させる……。


地球の女はね、自分に人権があるって思ってるからね。いや、あるんだけどさ。


でもこの世界の女達は、基本、自分の権利を振り翳さないから。


可愛がってやると、無垢に感謝し、捨てられないように必死になるみたいなのよ。


「この剣に恥じぬよう、精進するぞ!」


「はいはい。……ってか、頼んでもいないのに、何でわざわざ将軍に?」


「え?やることないから……」


あ、はい。


「もう何年もここで過ごした。最初は調子に乗って、美味いものをたらふく食って、良い酒を浴びるように飲み、一日中映画を観て、遊んで暮らしていた……」


ふむ。


「……けれど、何というか、な?」


「飽きたか?」


「飽きるなんてとんでもない!今でも幸せだとも!ただ……、何でも手に入るから……、つまらない、そう、つまらなくなってしまったんだ」


ふーん?


「どんな我儘も聞いてもらえて、どんなものでも手に入る。旦那様の力でな。そして旦那様は、私達一人一人のことを愛してくださる。愛すらも手に入るんだ」


「つまり、何が問題なんだ?」


「私達は、何のために生きれば良いんだ?目的も、仕事も、何もないんだ……。狂いそうだよ……」


「遊んでて良いぞ?」


「それで本当に遊び呆けて、旦那様への服従と献身を忘れ、旦那様の寵愛を失えばどうなる?」


「殺すけど……?」


「だろうな。だから私達は、使命がほしいんだ。でも、それは与えてもらえなかったから、各々が使命を自分なりに考えて、それに殉じようとしている……」


ふーん。


要するに、遊んで暮らすのにも飽きちゃったし、遊び過ぎて俺に捨てられたら死ぬしかないし、何とかして目立って俺に捨てられないようにしたい!ってことらしい。


難しいよなー、その辺は。


三百人くらい愛人がいる現状、いつ誰を相手にするのかはランダムだし。


いや、一応正妻が床に来る女のローテーションをチェックしているらしいけどその辺は知らん。俺の仕事じゃないんで。


まあ、俺にいっぱい構ってもらって、承認欲求を満たすには、何かしらの仕事をやって目立たなきゃならんってことみたいだ。


「空中都市の……、『アッシャーの民』に、貢献したいのだ!そして、称賛されたいのだ!」


あーはい、承認欲求ね。


衣食住に困らないと、人間、承認欲求が湧くらしい。


他者からの尊敬が、愛が欲しくなるのだ。


そのために、必死に目立とうって?


「私を見て〜!」ってか?ガキみたいでかわいいね♡大好きだよっ♡


こぉーんな哀れで健気な女の子達を、可愛がるのは当然だよな?


必死に頑張っている女の子達を見ていると、思わずムッハハハ!とネオサイタマの支配者みたいな笑い声が出てしまう。


先日に妻子(?)をぶっ殺したナントカ君は、とっとと俺をスレイしにきてくれ〜!来たら最大の屈辱を与えた上で殺すが。


「ああ、嬉しいよ、ヒルザ!俺の為に頑張ってくれてるんだな!頼んでないのに!」


「あ……、その……、駄目、か?わ、私は、私達は、自分で手に入れたものなんて何もない。全部、全部旦那様のものだ、から、す、捨てないで……!」


「んー……?」


「私には、何もない。力も、知恵も、衣食すらも全て、全て貴方のものだ。私の力で手に入れたものは一つもない。仮に下界に降りて、何かを手に入れたとして……、それはここで手に入るものより良いものであることなんて、ない」


「そうか?探せば美味い飯があるかもよ?良い男もだ」


「は、ははは……、あり得ない。私だって、知っているんだ。下界のことは、使い魔なんかで見ている」


「ほう?」


「旦那様……、ここは、『天の国』だよ。地上のどこにも、ここよりも豊かで、幸福で、快楽の限りを尽くせる場所はない。ないんだ」


「そうなのォ?」


「ここにいれば、飢えることも凍えることもなく、それどころか老いることも病めることもない!美食も、美酒も、何でも!何でもッ!!!」


んんーん。


「よちよち、そんなに興奮なさらないでください」


俺は、海外で少子化問題解決のネットミームにされてそうな総理大臣的スマイルを浮かべて、縋り付くヒルザを抱きしめた。


「さ、捧げる!私の全て、全てを!だ、だから、だからどうか!私を捨てないでくれ!今更下界に降ろされては、生きていけない!貴方の力がないと、私はもう、駄目なんだッ!!!!」


あらまあ。


こんなレベルで依存してんのね〜。


都合のいいハーレム作って遊ぼー!とは思ってやったが、思いの外、人間の心って脆いんだね。勉強になったよ。


確かに、この世界の「遅れた文明」の皆さんに、地球でも不可能なレベルの贅沢にジャブジャブ漬けたら狂うんじゃね?とは思っていたけど、こういう方向になるのかー。


社会実験って奴だな!学位ください。……ん?そういや学術都市に行くんだったよな?マジで社会学の単位とか貰えるんじゃないのこれ?


「俺は別に、行動を制限するつもりはないぞ?別にやりたきゃ、地上の男を摘み食いしても……」


膜なくても、他の男に靡いても別に……。


俺の方がセックス上手いし。僕が一番この女を上手く鳴かせられるんだ!


「……冗談だろう?なあ、冗談だよな?何で、この世で一番強く美しい男の種を得られる立場にあるのに、下界の猿に穢されなきゃならないんだ?」


んー。


「さっきから言ってるけど、下界ってのは?」


「この、空中都市の下に住む、ヒトモドキの奴らだよ」


んー!


選民思想ができてるーーー!!!


え?


何?


めっっっちゃ面白いじゃん!!!!


空に浮かぶ都市に住む、『アッシャーの民』……。


天人族みたいな感じでしょそれ?


色んな作品で、強い力と技術を持つが排他的な高位種族みたいなノリの……。


え?マジ?


いや、めっっっちゃ面白!!!!最高じゃんそれ!!!!


最終的に薄汚い炭鉱のガキにバルスされてもおいしい展開だし、都市の下のゴミ溜めにいる猫みたいな名前のサイボーグ女が謎武術使って攻めてくるのも最高!やっぱり良いよ、やってよかった、空中都市!!!!


「そうだよなーーー!!!下界の民はぁ、やっぱりこう、汚れてるって言うかぁ!!!駄目だわ下界は!!!カス!!!ゴミ!!!おバカ!!!」


「そ、そうだ!わ、私は違う……、違うんだ!違うよな?旦那様の元に、永遠に、永遠に、居れるんだよ、な……?」


あ、そうだ。


「実はァ、前々から考えてたんですけどォ(大嘘)!アッシャーの民に相応しい装い?って言うかぁ、身体機能があればなぁ〜!みたいな!」


「き、機能?」


俺の現在の『召喚』のスキルレベル?


———13Lvや。


10レベルが恐らく、生命体の限界っぽいんだが、俺はそれを超えた。


するとどうなるか?


10レベルの時点で、現代地球のありとあらゆるものが手に入り、概念や天候すらをも『召喚』できるブッ壊れだったのだが……。


13ともなると。


「『空力学飛行用幾何学的翼状力場格子ナノマシン』……、『A.N.G.E.L. (Aero-Nanotech Geometric Elevation Lattice)』だ」


地球ですらない、どこか未来の、気狂いじみた科学の産物すら……、簡単に手に入る。


いや、まあ、20はあるんだけど、13時点でこれな。


20になってくると最早、「緑色の浴びると進化するエネルギー」とか「緑色の勇気で無限にパワーが出る石」とか、出しちゃいけないもんしかレパートリーになくてだめ。


「これは……?」


「あげちゃう♡」


このナノマシンの注射器を、ヒルザの胸にブッ刺した。


「あ"っ……?!な、何を、っ?!」


俺も刺しとこ。


んお"っ、翼生えるっ♡赤い牛っ♡


……うん、そうね。


簡単な話。


このナノマシンを注射すると、背中に力場の翼が生成されて、空を飛べるようになります。


子供にも受け継がれます。


うーん、空を自由に飛べる天空の民、アッシャー族!


楽しくなりそうだ!

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