第62話 お妾さんのエリカ

さあ、学術都市バレアだー!


……と、その前に。


俺はあえて、一度空中都市に帰還することとした。


理由としては、正直あんま期待してなかった女達が割と結構頑張っていると、たった今弟子から聞いたから、確かめたくなっちゃった……、ということ。


そして、今なんか丁度、バレアでは選挙期間中らしく、ここに登場してもなんか空気読めない奴みたいになってカッコワルイから、ということもある。


選挙は一月位かけてお祭り騒ぎになるらしく、投票権のない外部の人はあんまり関われないっぽいのよねえ。


学園も、しばらくお休みらしいから、一旦帰って女達を構ってやろうかなーって。


いかに、空中都市には俺以外の男は居ない(隔離された観光エリアは別として)とは言え、ハーレムを放置は良心がない。


偉大なる総統閣下の俺としては、なるべく全員を可愛がってやる方針である。


はい、そんな訳で、時空の精霊ア・バオ・ア・クゥ召喚。


転移、と。




今まで俺が、女達の空中都市での生活の様子をあまり見ていなかったのには……、事情があった!事情が!


まあ純粋に、俺は空中都市だと、純粋にプライベートとして映画を見たり飯を食ったり、女達の「情熱を秘めた肉体」を味わったりしているだけ……という、見ても面白くない内容だったからだ。


なんかこうさぁ……、デカくて凄くてカッコいい空中都市なんだけどさ、作ったらこう、満足しちゃったっていうか……。


そんな訳で、あんまり見て回ったりとかしてないんだよね。


女達にもアホほど贅沢させてるから、普通に堕落してんだろうなーって思いきや……。


「「「「お帰りなさいませ!旦那様!」」」」


「おやまあ」


……意外とみんな、まともじゃん?




はい。


ではまず、一度も行ったことのない保育施設へ。


「あー!パパだー!」


「パパー!」


「わー!」


うーん、ガキ。


顔も名前も覚えてねえが、まあ教育してやるし、そこそこの財産もやるから、あとは個人個人が勝手になんとかしてくれってスタンス。


そんなガキ共の面倒を幸せそうにみているのが……。


「エリカ」


「あら、旦那様?ここにいらっしゃるなんて、珍しい……」


愛人から妾になった、エリカだ。


エリカは、赤ん坊におっぱいをくれてやっている。俺にもくれないかな?俺もおっぱい吸いたいわ。お母ちゃんのおっぱい欲しいんだも!


「きゃっ?!も、もうっ!旦那様、そういうのは夜にしてくださいっ!」


流れるような動きでおっぱいに飛びついたら、普通に怒られた。


まあそれはそう。


「何やってんの?」


「私は、ここで子供達の面倒を見ているんです。全員、あなたの子ですよ」


抱いてあげてください、と。


先ほどまでおっぱいを吸わせていたガキを渡してくるエリカ。


俺は、受け取ったガキの後ろ襟を摘んで持ち上げる。


「だぁ」


「へえ」


うーん、ガキ。


特に感想はない。


俺、あと千年は生きるつもりだから、子供に興味がないんだよね。基本的に永遠不滅だから、子孫を残すことに興味はないっていうか……、いや、セックスはしたいんだけど。


ほら……、究極生命体だからさ、俺。SEX:必要なし、なんだよ。頂点は常にひとつってことね。……宇宙に放逐されても自力で戻ってこれるし、調子に乗っても大丈夫だな!


とりあえず、空中都市には、「ハーレムエリア」、「観光エリア」の他に、「家族エリア」を作っておくので、ある程度成長したらガキ共はそこに押し込む予定だ。


俺の子とかその時点で嫌な予感しかしないので、ワンチャン母親(つまり俺の女)に手を出す可能性もあるからね、隔離しなきゃね!


「可愛いでしょう?」


「そうかぁ?お前の方が可愛いよ?」


俺は、ガキをポイ捨てし、ガキはそのままその辺に転がる。普通に虐待だが、ガキは生まれた時点でレベルが相応に高く、このくらいじゃ死なない。


「ふふっ、旦那様らしいですね。……子供を愛しておらずとも、行動はしてくださっていますから。私も、この子達も、幸せですよ」


そう言って、俺がポイ捨てしたガキを拾って抱き上げるエリカ。


「そうなの?」


「ええ、もちろんです!だって、この子達は、何にでもなれるんですよ?豊かで、安全で、死ぬことなんてないこの空中都市で育って……、必要なものはなんでも手に入り、幼いうちから勉学と武技を身につけられて。旦那様の、貴族としての立場から、貴族の子であるという立場も得られて。望んで、相応の努力をすれば、この子達は何でもなれます、何でもやれます……!」


あー、はい。


そうだったね。


この世界、身分差ガチガチでエグいもんねえ。


農民の子は農民、貴族の子は貴族。


ドロップアウトして冒険者や娼婦にはなっても、基本的には、いくら努力をしても職業選択どころか、結婚相手すら自分で選べない。


自由がないのだ。どんなものを食い、どんな教育を受け、どんな仕事をしてどんな伴侶を得てどんな人生を歩むのか……。選べない。


俺が子供を愛していなくても、行動的には「愛している」という「ことになる」訳か。


思っているだけの気持ちなんて子供には分からない、伝わらないもんな。


逆説的に言えば、愛していなくても、さも愛しているかのように行動すれば、愛されると感じる訳よ。


なんだかんだで俺、ガキにそれなりに優しいからね?


さっきから言ってるように、生活の保証は完全にしているし、毎年クリスマスプレゼントも渡している。カードもだ。休暇も取ってる。


あとは純粋に、危害を加えてもいない。


俺、実は、自分のガキを殴ったりしてないんだよね。


むしろ、教育役のメイドとかの方がビシバシやってるらしい。


俺?俺は適当に褒めるだけ。


大人なんだから、ガキにマジになったりしないよそりゃ。


とにかく……。


「エリカ」


「はい?」


「楽しいか?」


「……はい!最高の人生です!」


よし、問題なし、と。

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