第52話 楽しい旅が始まったね!

はるか東の自由都市、学術都市とあだ名されるバレアというところに向かう。


バレアは、貴族や国家などの支配を受け付けない自由都市で、都市の運営は街の役人と、街人達の投票によって行われている。


ギリシアのポリスみたいな感じらしい。


このクソみたいな文明しかない中世世界で民主主義なんぞやるのはアホとしか思えないが、そこは、学術都市らしく市民に遍く教育しているからどうにかなっているんだとか……。


あと単純に、民主主義だの選挙だのと言っても、「普通選挙」……まあつまり、万民が一人一票持ってるような感じではないからな。


ブルジョワ層って言うか、上位層……学者や地主に職人みたいな、そういう奴らしか「市民権」、つまりは「投票権」がない……。


要するに、「制限選挙」をやっているのだとか。


……まあ、末法中世世界であるこの世界の平均レベルよりかはマシなんじゃねーの?とは思うね。




はい、で、草原!


うん、また移動してる。


急ぐ旅じゃねえし、景色を見たいので……。


「んー、こっちの方はちょいと寒いでやんすねえ」


あ、今回も弟子(兼オナホ)を連れてきているぞ。


エリカやヒルザ、ダイアナも呼べば来てくれるだろうが……。


エリカは、子供を育てる方が楽しいみたいだし放っておいてやることにした。


ヒルザとダイアナも、勝手に空中都市の警備主任を名乗っていて、敵が来るはずのない空中都市を守るという名誉職で忙しそうだったので、置いてきた……。


スティーリア?あいつは、俺の名義で作った商会の会長にしておいてやった。楽しんでるらしいぞ。


他の貴族の子達は旅なんてできないだろうし……、行けるとすれば奴隷の女達かな?


確かに今回は、弟子だけじゃなく、奴隷を何人か連れてるしな。身の回りの世話役として。


ほら、貴族だから俺。近習も従者もなしに歩き回るのは良くないらしくてさ。


んで、ガラシャとメンシアには、ちゃんと約束通り飛空艇をやった。だからあの二人は、飛空艇で旅をしたり、空中輸送関係の仕事をしたりしている。なので呼ばなかったぞ。


拾ったスラムのガキとかはまだまだ教育中だし……。


結局、連れ回すとなると、こいつになるんだよなあ。


……あ、ちょっと待って、電話だ。


「もしもし?」


『ん、メンシア。私もバレアに行く?』


「あーうん、助かるわ。移動はもうちょいかかりそうだから、まだ後で良いぞ。着いたら連絡するわ」


『ん、分かった』


「ありがとな、愛してるぞ」


『ん、私も』


嫁(三百二十二人目)からだったわ。


メンシアはどうやら、バレアに俺を紹介するために、予定を合わせてくれるらしい。


そもそも、メンシアの提案だもんな。学術都市で教授になるってのが。


いや、目指すところは教授ではなく、『賢者』だっけ?


術派の開祖が『開門者』、術域の責任者が『教授』、術そのものの総帥が『導師』で、新たな術の開祖が『賢者』……。


聞いたが、なんかあんまりよく分からなかったし興味もなかったな。


とにかく俺は、偉くなって女の子にモテたいのだ……!


今でも十分にモテてる?それはそう。


けど、それでも、俺が地位と名誉を手にすると、飛行都市に住ませてる女達は、自分のことのようにそれを喜ぶ。


俺はそれが嬉しいのだ。


……いや、愛とかではなく、チヤホヤされるのが。愛してるってそりゃ口では言うけど、逆らったら潰すぞ、普通に。


あ、電話?これは魔道具。この前作った。




で、移動中。


今回のメンツは弟子のザニー、イタチのリカント。


それと、ラーテル、グリズリー、トラ、オオカミのリカント四人。名前はラジャ、エプシィ、ヴァイス、ディオナ。


双子のシャドウフォーク。名前はココナナとルルリリ。


フェイ族のファーブラー三人。名前はリリアーデ、シャロナール、トーリアン。


計十人の女を連れて行動中だ。


もちろん、全員が戦闘も小間使いもできるタイプの子だな。


奴隷だったり、スカウトした傭兵や冒険者だったり、スラム暮らしだったのを掬い上げたりと、出自は様々だが……、まあ俺はあんまりその辺を気にしないのでセーフだ。


まあ、賑やかしみたいなもんだな。


俺は周りから「流石ですご主人様!」と、一挙一動を誉められていないとやる気が出ないので、ここにいる女達には俺を褒めるという栄誉ある役職を与えた訳だな。


で、移動。


大型の馬車をユニコーンなどの馬型精霊に牽かせている。精霊は賢くて言葉が通じるので、御者は必要ない。


しかしフェイ族の三人のうち二人を御者席に置いておく。一応、その方が自然だろうからな。


馬車の中には天幕とかそういうものがあるが、空きスペースにテーブルがあり、シャドウフォークの双子にそこで勉強させている。数学のドリルを適当に渡しておいた。フェイ族の残り一人は、二人のシャドウフォークに勉強を教える教師役だ。


そして屈強なリカント組は、武装させて馬車の周辺に置き、護衛という体にしておく。


俺と弟子は、歩いて風景を見つつ写真を撮ったりなどしている。歩き疲れたら馬車に乗ったり、御者席を代わってもらったりするつもりだ。


旅はいい、心が洗われるようだ……。


「はえー、こんな寒い中外で護衛してくれるなんて、助かるでやんすねえ」


「俺らも外を歩いてるけどな」


「いや、師匠の隣にいると、なんかあったかいでやんすが」


「ザラマンデルを懐に仕込んでるからな」


『キュイ』


懐からちっちゃいザラマンデルがちらっと顔を出す。


そう、この辺は寒いので、ザラマンデルをストーブ代わりにして周りを温めているのだ!


「便利でやんすねえ。空のお城はいつもあったかいんで、そういう術は覚えてなかったでやんすー」


そう言いながら俺にひっついてくるザニー。


かわいいね。


「師匠の一番弟子として、バレアでも頑張っていいとこ見せるでやんすよー!」


うんうん、かわいいね。


期待はしてないけど、かわいいので全部が許せるな……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る