第49話 頼むからネタ被りは勘弁してください

「『魔眼』を使う!離れてな!」


ガラシャは、実はシャドウフォークの混血だったらしい。


片方の、眼帯に隠した側の瞳だけが『魔眼』で、視界に写したものの時間を停止させる『停止の魔眼』の持ち主だそうだ。


これで動きを止めたミイラの群れを……。


「揺蕩う水仙、御仏の白、白の輪郭、輪の烈火、燃ゆる硫黄、黄色の雄蕊……!『壊滅燐火(フレア・デトネーション)』ッ!!!」


メンシアが、焔の華の魔法で吹き飛ばす。


「今だ走れーーーっ!!!」


空いた穴に向かって、俺達は走り出す……。




そして。


クソデカい黄金の三角錐。


頂点にはオレンジ色の球体が浮かんでおり、その球体を中心に、大小様々な輪っかや角錐が衛星のように浮遊している。


その他にも、オレンジのエネルギーラインらしきものが入った、黄金の正方形がふわふわ浮かんでいるな。


パーツには一つ一つ、人の瞳のような紋章が何個も描かれていて、正直不気味だ。


しかし少なくとも……。


「あれだ!あれが秘宝に違いないよ!」


「ん!歴史的発見!」


砂漠の秘宝があれだと、誰が見てもわかるくらいには幻想的な光景だった……。


そんな感じで、皆で近づくと。


「「「「おおおっ?!!!」」」」


浮遊する正方形が浮かび上がり、道となったではないか。


近寄るミイラは、三角形がその先端から謎ビーム(魔力の反応があるから恐らくはマジックアイテムかな?)で始末してくれている。


気付けば、小型の正方形が近くにいて、それが俺の懐を照らして……。


「ああ、なるほど。これだろ?」


俺は、懐から、コレオ王子から受け取った秘宝の鍵……、円盤を取り出した。


それを翳すと、浮遊正方形くんは突然ポリゴンのように崩壊して、矢印の形になった。


「来い、ってことか」


俺は、浮遊矢印くんの案内に従い、ピラミッド(?)の麓へ……。




ピラミッドの麓には、クソデカい壁があった。


そしてそこには、いかにも「嵌め込んでください」と言わんばかりの穴が一つ。


丁度、手のひらサイズの円盤が嵌りそうな……。


「はい、ハメハメ」


なので、嵌め込んでみた。


「うおっ」


すると、鍵を中心にオレンジ色のエネルギーラインから燐光が走り……!


「おっおっ、お、これは……!」


砂が割れて、地面の底から……!


……街が出てきて。


……空を飛んだ。


「……被ってんだよーーー!!!ネタがよーーーっ!!!」


俺は叫んだ。




「つまんねーーーーー!」


飛行している古代都市の真ん中で、大の字に倒れてキレている俺。


「師匠ーーー!」


「旦那ー!」「ドーマ!」


そこに、弟子とガラシャ達がやってきた。


「すっごいよ、旦那!これが砂漠の秘宝かい?!」


「ん!学術的興味!」


「飽きた!俺はもう帰る!」


「「えぇ……?」」


「あー……、そのっすねえ?」


弟子が、ガラシャ達に説明する。


「……は?飛行都市をもう持ってる?作ったァ?!」「ん、んん……?!??!?!」


「もう飽きた!帰ろうぜ、打ち上げしよう打ち上げ」


「え、あ、いや、帰りたいのは山々だけどね、さっきの砂のうねりに巻き込まれて船が……」


「ん、というか、ここは空の上」


あー……。


んー……。


そっか。


「なあ、ガラシャ」


「ん?なんだい?」


「お前ら全員を愛人にするって件だが」


「えっと……、本気で言ってくれてたのかい?でも、アタイは……」


「お前が望むなら、新しい船もプレゼントするぜ?旅に必要なもんは全部くれてやる。代わりに、今年は俺の子供を産んでくれ」


「本当かい?!船に全部の資産を積んでたから、アタイらは一文なしになっちまったところなんだ!船をもらえるんなら何でもするよ!」


「うんうん、何でもやるから。気に入ったから全員嫁な」


「「「「よろしくお願いします!!!」」」」


そうして俺は、砂漠の秘宝こと『浮遊黄金都市』を放置して転移で……。


あ、ちょっと待って。


時空の精霊ア・バオ・ア・クゥ召喚。


「え?」


「よう」


「えっ御友人?!いきなり何ヲ"ッ?!!!」


コレオ王子を浮遊黄金都市の管理者ルームに引き摺り込んで、管理者権限を全部渡して最上級権限を永久登録させて、改めて。


転移で女達と共に、自分の飛行都市へと帰還した……。




「……ってな訳で、期待外れだったわー。まあこんなもんかー」


「ふふ、でも楽しめたんでしょう?顔に書いてあります」


「そうかね?」


「そうですよ!」


エリカに膝枕されながらしばらく寛ぐ。


そのままなんかそういう雰囲気になったんで一発ヤってから、シャワーを浴びて。


ガラシャ達に飛空艇を一隻プレゼントして遊ばせておく。


で、晩飯食って風呂入ってから……。


「……あ、そうだ」


夜、俺は浮遊黄金都市の管理者ルームに再転移した。




「ご、御友人……?!」


コレオ王子が死にかけてて笑える。


「悪い、忘れてたわ」


「はは、死ぬところだったよ御友人。恨むぞ……」


「まあ良いじゃん、秘宝はこの通り、全部やるからさ」


「扱い方が分からないのだが……?」


あー?


「えーと、このモニターが多分気温調節だから、ここの数値を上げてみ?」


「こうかな?….…おお、暖かい!」


「で、ここが多分気温固定だから、こんなもんか?」


「なるほど」


「で、防衛システムにミイラ共を始末させて……、あ、てか、水道も再起動してねーじゃん」


「水道?」


「押すんだよ!ここ!」


「こ、こうかな?」


「んで、カメラを……」


「おお……!これは凄い!」


そうして、浮遊黄金都市は。


コレオ王子の手で完全に再起動し、空を飛んでジャムール王都の隣へと移動した……。

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