第45話 酒の席での話を本気にする奴は空気が読めてないがたまにマジな話もする
「かーっ……!旨いっ!最高の酒だねこりゃ!」
「ん、料理も美味しい」
ジャムールが誇る金冠位冒険者のコンビ、ガラシャとメンシア。
『幻妖剣』ガラシャと、『燃ゆる指』メンシアは、ジャムールに知らぬものはいないレベルの大英雄だった。
まあ無論、俺の方が辺境伯なので立場は上のため、彼女達も従っている。
外国の辺境伯とは言え、飛行大陸という巨大な領地と、飛地の南の島を複数持つ俺は、立場はかなり高い。
そもそも、外国云々もあんま関係ないんだよな。前も言ったけどこの世界はそこまで文化的に成熟していないから、国威で威張るんじゃなくて、「俺はこんだけの兵士と土地を持ってんだぞ!」と威張るのが普通。
決して、「バックに国がいるんだぞ!」とはいわない。国って基本的に何かしてくれる訳じゃないしね。民事不介入ってか、「虎の威を借る狐」みたいな真似を許す組織じゃない。
だから俺は、「広大な土地と飛地をいくつも持ち、王権が及ばぬ辺境を王に任される信頼の篤い管理者」と思われている訳だ。
確かに英雄コンビも偉大だが、土地を複数支配している俺の方が上という判定らしい。
「旦那の話を聞かせておくれよ。結局、アンタは何もんなんだい?」
「え?俺?普通に転移者だけど」
「てんい……?なんだいそりゃ?」
ガラシャは知らないようだが。
「転移者……?!まさか、『遙から来たりし者』?!!」
メンシアは驚いていたようだった。
「なんだそりゃ?」
「ん……、遙から来たりし者。現世でも幽世でもない、遠い遠い遙か彼方から来た存在」
「へえ、そりゃ凄いね」
「彼らは、凄まじい『成長率』を誇り、少し戦うだけで簡単に大きな力を手にする。そういう血を持っている」
あ、そうなんだ。
俺って、レベルが上がりやすいんだな。
だから、一年弱のレベル上げで200まで持って行けたんだな。
聞けば、どんなに最高効率でレベル上げをしたとしても、凡人では年に1レベル上がるか上がらないかという程度なのだとか。
一般市民は基本的にレベル1で、冒険者や一般的な兵士が10から20程度。ベテランで30、有力者が40、英雄と言えるような存在でも精々50程度。
それに、大概の人類種は、三十歳にもなると衰え始め、五十歳だともうステータスは若い頃の半分くらいに落ちてしまう。
そんな中で、若い人間がレベル50は快挙だった。
かと言って長寿なフェイ族やドヴェルグ族などのファーブラーが高レベルなのか?というとそんなことはなく、奴らはレベルアップの速度が悲惨なほどに遅いという弱点があるみたいだな。
まあなんだ、転移者の本当のチートは、スキルじゃなくて「手持ちの知識」と「経験値倍率」だったというオチだ。
それはそれとして、メンシアの話の続きを聞く。
「ん、一説によると、超越者の殆どは、遥から来たりし者達だったらしい」
「へえー、じゃあリーフェンハイムの建国王とかも、転移者だったかもしれないのか」
転移者ってそうなんだ。
すごいな。
「ん、確か、リーフェンハイムの建国王は『ロームルス』とか言ったはず?」
あっえっ、はい。
狼に育てられた人かぁ……。
「メンシアは物知りだろ?こいつは、『学術都市』に居たフェイ族なんだよ」
学術都市?あー……。
「『学術都市バレア』だったか?東の方にあるんだよな」
「ん。術師が多い」
「学者とかいる感じ?」
「学者……。んん、まあ、そう」
「へえ、俺も教師になろうかな」
そして女生徒に淫行したい。
「本気?」
「ああ。砂漠の秘宝を見つけたら、学術都市で教師やるわ。召喚術を広めたい」
「ん、その時は力になる」
「それは助かるが……、メンシアは具体的にどんな立場にあるんだ?」
「ん……、フェイ族の魔導師。学術都市バレアで『火の指派』を結成している、『開門者』」
えーと……?
「『開門者』は、バレアの位階で四番目に偉い。『開門者』は、新しい魔術の開祖」
へえ、なるほど。
要するに、地球風に言えば「教授」ってことか。
「じゃあ、俺も『開門者』になれるってことか?」
召喚術の開祖だからな。召喚術の教授になれるんじゃね?
「んん……、なれるし、なれない」
「つまり?」
「新しい術だと、周りに認めさせるのは難しい。根回し、政治、論文の提出……、色々必要」
ふむ、そりゃそうだな。
地球だって博士号をとって教授になるまで、十年じゃきかないだろう。
「それに、貴方の『召喚術』は全く新しい技術。であれば……、召喚術士という新しい学問での『賢者』になる」
なるほどね。
賢者、ってのは、バレアでは第二位。
魔術だの、呪術だの、忍術だの、「術」そのものの開祖の後継者であるということなんだとか。
因みに、第一位は『大導師』と言われるらしいが、名誉称号みたいなもんで、今の時代には存在しないんだそうだ。
「賢者か、なりたいな」
「んん……、難しい。召喚術に関する論文はある?」
「術理や方式については、まとめた資料がある」
「それを提出して……、添削されて、学会で発表して……、最短でも二十年?」
うわめんどくせー。
「でも、この大陸一番の学術都市に、俺が書いた本を残したいと言い気持ちはあるなあ」
「ん、やる気があるなら、知り合いに声をかける」
「マジ?じゃあちょっと手伝ってよ。砂漠の秘宝見つけたら暇だしさ」
「ん、分かった」
そうして、ガラシャとメンシアの二人と酒を飲みつつ、色々とお話をした……。
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