第33話 旅をすると調子が良くなる
北に向かえば涼しくなるかと思ったが、そんなことはなかったぜ!!!
待ってくれ待て待て言い訳をさせてくれ。
この世界では、その地に棲む「王種」の魔物の種類によって、環境が変わる!
ノースウッドにおいては、王たる魔物は『極雷狼王』、こいつは狼の魔物だった。
故に、狼に住み良い「森」が、ノースウッドには広がっていた……。
そして、これから向かうジャムールには、『黒砂大蛇虫王』というヤバい化け物がいるらしい。噂で聞いた。
蛇虫、つまりはミミズなどのワームで、全長が数百メートルにも及ぶ超巨大な黒い化け物なんだとか。
普段はおとなしいらしいが、数年に一度くらいの頻度で餌を求めて砂中を泳ぎ、ある晩いきなり地面から姿を現して、人や家畜をごっそり食べてしまうと聞いた。こわいなー。
まあ、ボスモンスターが己の身から溢れ出る魔力で周辺環境を変化させてるってことだ。
だから、地球人の知識でドヤ顔しつつ「北は寒いんだぞ!」などというと恥をかくんだわな。
知識チートをやろうにも、ファンタジー世界なので色々と勝手が違くて困る。
……いやまあ、確かにこの大陸の北には極寒山脈とかあるけどさ。エリアごとにそれぞれ気候も植生も違うから、一概には言えないって言うか、ね?
そう、そういう感じのアレなんで、俺は北のそのお寒い山脈とやらを目指して、そのついでに砂漠の国のアラビアン美少女をつまみ食いしちゃうぜ!みたいな、熱いハートをもって行動を開始した訳だね。
まーリーフェンハイム……あ、今までいた国ね。リーフェンハイムでは、もらった貴族女達は基本的にパツキンが多いからな。
ここは一発、褐色肌で黒髪の、ふしぎの海っぽい美少女をだな……。
それに女だけじゃない、砂漠の景色も見てみたいし、砂漠の国では様々な観光スポットがある。
「まず第一に、『バザール』だな」
「バザール?それ、なんすか?」
「んー、言っちまえば『大市場』かなあ。砂漠の国ジャムールは交易の要所だから、たくさんの人が集まる。人が集まるところには、金と物も集まる。だから、この大陸で一番大きな商店も集まってる訳だ」
「ふーん……。でも、店なんて見て面白いでやんすか?」
「ああ、面白いぞ。建物のある商店だけじゃなく、露店や出店、屋台の類がずーっと並んでるんだ。面白い掘り出し物とかあるかもしれないぞ?それに、欲しいものはなんでも買ってやる」
「ホントでやんすか?!わーい!」
後はそうだな……。
「『太陽神殿』も見たいよな」
「神殿でやんすか?」
「ああ。なんでも、『予言の巫女』って女がいて、そいつはその太陽神殿で必ず当たる占いをやってるらしい」
「面白そうでやんすね!」
「ま、パンピーは会えない高貴なお方らしいが、そこは俺の貴族パワーで押し通ろうぜ。ダメなら神殿に風穴ぶち抜いて無理やり会いに行く」
「流石師匠でやんす!」
だが、そんなのより俺が注目している面白コンテンツは……。
「一番興味があるのは、『砂漠の秘宝』だな!」
「お宝でやんすか?!」
砂漠の秘宝と呼ばれる何かだ。
きっと恐らく、ワンピース的ななんかそういうアレだろう。なんか歴史的ななんとかグリフみたいな文字が書かれた石とかそんなん。いや分かんないけど多分そう。
こういうのって大体、金銭的価値とかじゃなくって、世界がひっくり返る「情報」とかの方がそれっぽいじゃん?
逆に、ごく普通のデカいだけのダイアモンドとか出てきたら興醒めじゃね?
「いいか?まず、砂漠はとても広くて、移動するためには流砂の上を駆け抜ける魔道具である『砂走船』ってのが必要なんだ」
「船?海に浮かべるやつすか?」
「ああ、その船が、砂の上を滑るように駆け抜ける訳だ。なんでかって言うと、砂漠の砂は特別な砂でな。普通に歩いて越えようとすると、蟻地獄みたいにハマって動けなくなっちまう」
「蟻地獄?」
「あー……、凄いサラサラな砂で、砂場に行くと砂に埋もれて死ぬんだよ。だから、船が必要なんだ」
「はえー、怖いでやんすー!」
「そんでその砂走船で『砂の迷宮』とも言える大砂漠を越えて、その何処かにあるのが、砂漠の秘宝って訳よ。それがなんなのかは分からないが、見つけるのは面白そうだろ?」
「そっすね!面白そうでやんす!」
「そんな訳で、まずスケジュールはこう。バザールを冷やかしつつ砂走船を買って、太陽神殿の巫女に砂漠の秘宝について占わせ、それを元に船旅で秘宝を見つける!」
「うおー!最高でやんすー!!!」
「ははは!よーし、行くぞー!俺についてこい!」
「わーい!」
まあ行くぞー!と言って一瞬で着く訳ではない。
え?ア・バオ・ア・クゥの空間転移でどこへでも行けるけど、それ使ったら旅の意味がないじゃん?
そりゃ家に帰りたい時とかの移動に面白みがない時は容赦なく使うけど、こうやって旅行の時にまで時短移動しようとは思わんよ。
なんてーのかな、そういう粋や酔狂にこそ、人の世の中の面白みが詰まってるもんだろ?
便利さが全てじゃないんだよ。
人生を楽しまなきゃ。
そんな訳で空間転移も高度な未来予知も禁止禁止。
最低限の安全マージンを取った後は、面白味極振りで遊びましょーっと。
面白味がない人生なんて人生じゃないからな。
今この瞬間が最高に楽しい、と。毎日言える人生じゃなきゃダメだ。
そんな話をダラダラしつつ、俺は弟子とダラダラ道を歩いていた。
こういうダラダラした話を笑顔で聞ける我が弟子、割とマジでキャバ嬢の才能があるんじゃねーかな?
まあちんちくりんのチビ助だから無理……いや特殊な需要……ううん、分からん。
「それで話の続きだが……、そうソマリア。俺はイタリアで喧嘩を売ってきたアホを半殺しにしてからチンポにデカい釣り針をブッ刺して街の大教会に吊るしたんだがな、そいつがマフィアかなんかのガキだったらしくてさ。当然のように追われてヤベェ!ってなったんだ。で、ナポリにたまたま停泊していた船に潜り込んで国外逃亡したんだけど、何と驚き!その船が麻薬取引をしにきていたソマリアの偽装貨物船でよ!なんとか隠れてたんだが見つかっちまってな。だがそんな時もイスラムテロリストの馬鹿どもには、適当に旧約聖書の言葉を引用して信仰アピールすりゃもう大丈夫よ。聖書なんて一般的な社会人なら丸暗記して当然だろ?三流ライトノベルだから内容は面白くないが、教養として役に立つ。だから勉強する必要があったんですね」
「はえー」
適当に喋りつつ移動移動。
乗り物に乗るかなー?とも思ったが、俺は歩くのが好きなんで歩く。
一応は文化人なので、乗馬と単車転がしくらいはできるが、やっぱ人間歩く方がいいよ。健康的だしね。
『グギャー!』
たまにモンスターとエンカウントすることもあるが。
「ひょいっと」
『ギャッ』
パッと片付ける。
最近は召喚のスキルレベルが10を超え、俺の意思一つで何も言わずに召喚獣達が出てきて勝手に忖度して諸問題を片付けてくれるようになったからな。
今こうやって旅をしている間にも、空中都市と嫁達の管理維持のために常時召喚している無数の召喚獣の運用によって、スキルレベルはゴリゴリと上がっている訳だもんね。
いやあ、笑えるよね。
召喚スキルのスキルレベル……まあ熟練度な訳だが、このスキルレベルを上げる条件が、「召喚すること」「召喚を維持すること」「召喚物を使用すること」の三点なんで、現状俺は何をどうやっても無限にスキルレベルが上がり続ける。
スキルレベルの目安だが、世の中の人間の殆どは1で生涯を終え、使えるスキル持ちも普通の訓練を積む程度なら生涯で最大3程度。
5もあればその分野のトップとして鼻高々って感じと言えば、スキルレベル10の異常さが分かるだろうか?
少なくとも、人間が修められる技能の最大値を遥かに超えた練度だと思ってくだされば結構です。
『グギャ!』
『ギャッギャ!』
『ガギャア!』
んーしかし、なんか多いな、魔物。
やっぱりアレかな?二人きりで歩いてると、バケモノの皆さんも「おっ餌が来たぞ」となるのかな?
んー……、あ、そうだ。
「よーし、ザニー。修行の成果を見せてみろ!」
「ふえっ?!あ、はいっす!」
ちょっと試しに、ザニーに戦わせてみるか。
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