第32話 ザニーちゃんの秘密大解剖!

「師匠ーっ!カッコいいでやんす!」


「ワハハ!そうだろ?そうだろー?!カッコいいだろー!」


弟子にヨイショされ良い気分になった俺は、そのまま刀を腰に帯びて……、いややめとこ。


どうせなら軍刀にしよう。


刀はこの世界じゃ……、いや、この辺りじゃまずないからな。


この土地の人々から見れば「装飾過多な棒」にしか見えないだろうよ。抜かない限りは。


だから、側から見ても「あ、武器だな」と分かるように、サーベル拵えの軍刀を持つことにした。


反りがある片刃の剣ならば扱えるし、ハンドカードのあるサーベル拵えならばこの世界の人間も一眼で武器だと分かる。


ちょうど良い感じだ。


改めまして、軍刀サーベルを腰に帯びて、俺は弟子と歩き出した……。




二時間くらい歩いたかな?


「ちょっと休憩しようぜ」


俺はそう言って、土精霊ゲーノモスに石を固めて作った椅子を出してもらい、そこに座って休憩をすることにした。


日除けにパラソルもさして、よく冷えたりんごジュースを飲む。無論、弟子にも与える。


「うまいでやんす!」


んー、かわいい。


夏の暑さで汗をかいた弟子の体臭を楽しみつつ、しばし小休止。


あー、くっせぇ。


卑賤で下等な獣の匂いだ。


弟子のザニーは社会的立場は当然として、本人の知能も能力も高くない。


だからこそ可愛いんだよなあ。


結局、「可愛いな」という気持ちの根源は、自分より下の存在への憐れみだからな。


下だから守りたいと思うし、好きに操りたいと思う。それが男の愛欲の源だよ。


この弟子は、俺が養って、身分を保証してやらねば生活が成り立たない。


そう思うと、庇護欲がムラっと湧いてくる。


ああ、可愛いなあ!


しかも見ろよ、このボディ!


ザニーは種族の特性……ああ、最近分かったんだがな?


最初は俺、こいつを犬か猫のリカントだと思ってたんだよ。


けど、それにしてはあんまりにもチビなので、なんかおかしいなー?って思って、ちょっと調べてたら、たくさん買ったお徳用まとめ買いリカント奴隷の中の一人がこう言ったんだ。


———「え?こいつ、イタチのリカントですよ?」


とな。


なるほど、イタチ!


それならば、成体でこの矮躯も納得だ。


その他にも、こいつの特徴としてこんなものがあった。


・チビ

・胴長短足

・とても素早い

・雑食

・ハッカやミントなどの匂いが苦手


……そう言われりゃイタチだな。


犬猫にしてはスマートさが足りんなーとは思っていたが。


リカントってのはそれぞれが「氏族」という纏まりで存在してて、まあそれは「オオカミ族」だの「トラ族」だのそんな感じ。


その中でも、ザニーの「イタチ族」は、小柄ながらも極めて強力な戦闘力を持つ有力氏族……「アナグマ族」の従属氏族だ。


うちのお徳用まとめ買いリカント奴隷の中にもアナグマ族の女の子がいるんだけど、まあ気性が荒くておっかないのなんのって。


髪の上半分が白、下半分が黒でなあ……言ってて気づいたけどこれラーテルじゃね?そら強いわな。


まあそんなリカント奴隷ちゃん達も、ベッドの上じゃ全員子猫ちゃんなんだがなワハハ。


……ともかく、ザニーはイタチ。イタチのリカントだった。


つまりザニーは、これから何十年過ぎても、身長は140cm未満のチビロリのまま。


ロリから年齢を経ても合法ロリ、そしてロリババアになるだけなんだとか。


……お得!!!!


「うおおおお!ロリ嫁うおおおお!」


「うあ〜?!師匠ー!髪がぐしゃぐしゃになるでやんすぅ〜?!!」


あまりにも可愛いので、しばらくいちゃついた……。




いちゃついたので移動を再開。


半生を旅と共に生きた俺は、否応なしにアウトドアマンに身体改造された仮面のライダーなので、こうして歩いて健康的に汗を流しつつ景色を見るだけで全然楽しい。パンツと小銭があれば生きていけるタイプの生命体だ。


生えている草木もファンタジー特有の変なのが結構多くて、飽きることもない。


よく、インドア派とかいうつまらない陰キャ共は、家の中に篭ってゲームばっかりやってるけど、ゲーム内でオープンワールドとか言って景色を見るぐらいなら外出した方がいいってことに気がついてない。


フルHD?うん千万画素?アホかな?


リアル世界で自分の目で見る景色は五億画素だぞ。いやマジで。


そんな感じで、顔も知らない誰かを内心で罵り気持ちよくなりつつ、愛弟子と共に旅をする。


「……で、師匠?どこに向かってるんでやんすか?」


「おっ良いね、哲学的な質問だ。我道迷、ってことね?人生なんてそんなもんだと切り捨ててしまうのは容易いことだが、俺は知的でハンサムで優しいので、可愛い弟子に素敵で良い感じの教えを授けてやろう」


「い、いや、普通に行き先を聞いてるでやんす」


「それは分からん。俺は雰囲気で旅をしている」


「えぇ……?」


「ほらアレだよ、結果、辿り着く先じゃなくって過程が大事なんだよという日本風なふんわり努力崇拝の結果軽視型教育だ。というか行き先なんて最終的には転移門でどこでも好きに行けるんだからあんま気にしなくて良いんじゃねーの?」


「んん、まあ、それはそう、っすかね?」


「そうだよきっとそう。少なくとも俺は弟子と歩いて景色見てるだけで楽しいんだが、お前は違うのか?それならそれでちょっと考えるが……」


「あ、いや、楽しいっすよ?でも、普通に行き先は気になるでやんす」


「行き先、ねえ……。どこか行きたいところは?」


「んー、南の島でいっぱい遊んだから、今度は北とかどうでやんすか?」


「じゃあそれで」


行き先が決まった。


後は進むだけだ。


その辺の話をすると俺は行動が先にくるタイプなので、目的なしでも全然普通に動くんだが……。


よし、北!北だな!


北は……、地図によるとこうだ。


流砂の国「ジャムール」……。


……砂漠?北なのに?

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