第二章 王都で成り上がってなろうチートでオレツエーって感じでよろしく

第18話 出産の時が来てしまったぞ

花の都フローラン。


その名に相応しい美麗なゴシック調の街並みが特徴の、この国「リーフェンハイム」の王都だ。


驚くべきことに、なんと、この街の道端からは腐臭がしない!嘘、するけどまあマシな方!


この世界は、中世ヨーロッパのイヤなところを煮詰めたようなクソ(物理的にも)みたいな世界。


なので、あまり余裕がない街では、道端にクソや生ゴミがぶちまけられており、それを放し飼いの豚が食って始末している。


だがこの王都では、リカントなどの被差別階級を使って、道の片付けをしているではないか!


文明的だ……!極めて文明的だ!


恐らくは人口が多過ぎて、豚に食わせるだけでは生ゴミを処理しきれないのだとは思うが、それでも「掃除をしよう!」と考えているだけかなり文明的よ。


地球だって、「煙モクモク工業廃水たくさんだと病気になる!」みたいに、周辺の衛生環境などによって人体に被害が出ると研究されて結論が出たのは、産業革命が終わってからしばらく後の話。


この世界の人は、「汚れ=病気の元」という思考がまずないのだ。


そんな中、街の景観のためにと道の掃除をしているのは、本当に凄いことなんよ。


え?被差別階級が居ることについて?うるせえな〜、そんなん今始まったことじゃねえだろ?この世界はそういうもんなんだよ!


とにかく、この王都は、他の都市と違って大都市の風格が確かにあった……。


そうそう、それで目的の方だな。


目的は、手が滑って、いや、下半身が滑って誤って孕ませてしまった女四人の出産の為だ。


何でも、出産専門の回復魔法使いという職種の人間がいるらしく、死産でもなければ確実に子供をとり上げるそうなのだ。


最悪、俺が、回復魔法を使える精霊を喚んで子供をとり上げでも良いのだが、やはり専門家がいた方が助かる。


……いや、本当はそうしたい。この世界の人間とか、1ミリも信用できんからな。


でもそれじゃ嫁が納得せんだろ。


こういうのは、産婆ってのがいて、それにやらせるのが絶対。


日本で言えば、産婦人科の医者じゃなくて自分で出産します!と言ってるようなもんだ。あり得ない話し!


そんな訳で、嫁らの精神安定のためにも、大金を擲って、然るべきところで然るべき人間にやらせなきゃならん訳よ。


ああ、そういや、嫁のうち一人、リカントである冒険者三姉妹の次女、ダイアナの子は俺がとり上げることとした。


被差別階級だからな、教会には入れないんだ。


うーんまあ、なんだ。


隣で見ててヤバそうなら手出しする……って感じで良いだろう。


それに、そんな辛いお産にはならないと思うよ?


事前に精霊を使って、『無痛分娩』させるから……。


酩酊の精霊サテュロスは、肉体の一部を『酔わせて』、麻酔状態にすることができるからな。


しかも魔法だから、拒絶反応とかそう言うのもないし、麻酔の強度も効果時間も思うまま。麻酔医師に殺されそうなレベルだ。


本当の本当にヤバいなら、精霊をフル稼働させて帝王切開して、再生の精霊ユニコーンで治すから安心。


なあに、どうしてもダメなら、ガキを切り捨ててより大切な女の方を助けりゃ良い。


俺の女を、ガキ一人ひり出す程度で死なせたくないもんね。




さてさて、四人だが。


もう半年くらいだ。


腹はそこそこ出てきたな。


妊婦だし気ぃ遣ってやらにゃなあ、と俺が優しくすると、嫁らは馬鹿みたいに喜んだ。


「妊婦なんて穢れそのものですのに、ここまで優しくしてくださるなんて!」


とな。


酷い話だが、そういやここは中世だったなと、何度目か分からない再確認をする。


妊婦には優しくしようだの、妻の出産には立ち会おうだの、そういうお優しい価値観は人類の長あい歴史から見ればごく最近にできたもの。


段々と「食欲が湧かない」とか言い始めた女達に、「なら粥なら食えるか?菓子なら食えるか?」と甘やかしてやると、女達は泣きながら俺に抱きついてきた。


そうやって介護をしながら、王都で庭付きの一軒家を郊外に買って、そこで女達を休ませた。


奴隷も買い集めて女達の世話役にし、教会にお布施を払って日程の調整やら何やらをしていると、もうこんな時間。


早速出産が始まった……。


「出よ、『サテュロス』!女達の痛覚のみを鈍らせてこい!」


『あいよ〜!』


「続けて、浄化の精霊『キリン』!女達の周辺から汚物を取り除け!」


『ブルル……!』




……結局のところ、この時代の新生児や産婦が死ぬのは『産褥熱』が原因のことが多い。


産褥熱ってのは、まあ、ガキをひり出して傷ついたお股に、不衛生な中世人がベタベタ触るから悪い菌が繁殖して、感染症でおっ死ぬって感じのやつだ。


あとは、母体の体力不足とかかなあ。


だからこうして、産む場所を浄化し、産む前の母親にちゃんと飯を食わせときゃ、まあ何とかなるってことよ。


ダイアナの子も、俺が産ませてやった。


全部成功だ。


……まあ、エリカはちょっと上手くいかなくて、仕方なく帝王切開したが、ユニコーンの効果でちゃんと子宮も腹も再生させたよ。


いやあ、狼狽える産婆のシスターを押し除けて、いきなり腹を裂いた訳だから異常者扱いされちゃったわー。


でもまあ、自分の女と子供の命を天秤にかけると、この世界の常識とかどうでもよくなるね。


しばらくは、王都の外れに買った屋敷でゆったりし、子供を抱き上げて撫でるくらいはしてやった。


ぶっちゃけ、自分の子供を1ミリも可愛いとは思えなかったが、まあ、女達を喜ばせる道具として見れば良い感じ。


ちょっと「良い父親」っぽいところを演じてやるだけで、女達は涙を流して喜び、何度も俺に愛と忠誠を誓う言葉をかけてくるんだもん。


やっぱり、自分より弱くて、俺に一生懸命媚びる顔がいい女は可愛いね。


庇護欲は可愛さの根源だもんなあ。


これからももっともっと強くなって金を稼いで、良いもん食わせて贅沢させて、俺抜きじゃ生きていけないようにしてやろーっと!

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