第14話 パーティメンバーを集めるマン
俺が出した条件は以下の通り。
・女
・顔がいい
・前衛型
・年齢は十五から三十
・護衛経験アリ
結構厳しい条件にしたつもりだが、一人、ヒットする奴がいたらしい。
受付嬢の手引きで、俺は、冒険者ギルドの酒場でそのパーティメンバー候補と会った……。
爛々とした赤い瞳は、南の蛮族「ヴァルバ族」の血を引く女の証。
褐色の肌、芦毛の長髪を適当に刈り揃え、鼻や頬に古い切り傷。
俺より10cm以上は低いとはいえ、この世界の女にしては規格外にデカ過ぎる185cm程度の身長があり、更に腹筋バキバキ、腕も太い。
顔つきは、生意気そうな、負けん気が強そうな感じ。クールビューティーと言えれば良いが、顔の古傷と若さ、それと溢れる血気から、その形容詞は相応しくない。
年齢的には二十そこらってくらいか。
うーん、合格。
理由?可愛いから。
自慢じゃないが、俺の女の好みの幅はかなり広い。
じめっとした陰キャの女も、ギャルも、ロリも、セクシーなおばさんも、全部行ける。
既に合格は確定しているのだが、折角なのでおしゃべりして仲良くなろうかな。
「ドーマだ」
「ヒルザだ」
握手?この世界にもあるんだ。
握っておこう。
おっ?
強く握ってきたな。
握り返してやるか。
「……!」
俺の力の強さに気づいたらしく、ヒルザは。
「驚いた!術師の力か、これが?」
と、一言言ってから、手を離して席に座った。
レベルの力なんだがな。あえて口にはしないが。
俺も、向かい側に座る。
「少しからかってしまったな、許してくれ」
「構わんよ」
「改めて……、私は、銅盾位のヒルザ。肌色から分かるだろうが、ヴァルバ族だ。一応、レベルは25ある」
ああ、あったね、そんな設定。
レベルは、本人の基礎スペックの高さを表す指数。
一般的な冒険者は、平均して15程度のレベルがあり、これは1レベルの一般人と比べると大人と子供くらいには格が違う。
一般人では、刃物を振り回したとしても、素手の冒険者に簡単に制圧されるレベルだな。
まあ、このレベルで基礎スペックが上がるシステムがないと、銃器や大砲なんかが存在しないこの世界じゃ、街まで降りてきた山のヒグマとか倒せねーもんな。
そんな中、レベル25ってのはかなりの上澄みだな。
人間が一生を武に捧げたところで到達できるレベルは、精々50程度。
カンストである99を超えたレベルの持ち主は『超越者』などと呼ばれ、権力で押さえつけることのできない、枠組みから外れた半神と見做される。
「俺はドーマ、精霊使いだ。レベルは40」
「ドーマ、お前は私を徒党に入れてくれるか?」
「ああ、良いだろう。だがその前に、条件の擦り合わせをしたい」
「もちろんだ。それに、悪いが、私からも条件を出したいからな。話し合いは臨むところだ」
っつっても、こっちから出す条件なんてほぼないけどね。
「こちらは、当面は俺の愛人の護衛を頼みたい。護衛の任は、一日につき銀貨で十枚出す。その際の食事や水はこちらが出す」
「それでいい。けれど、もう一つ、どうしても頼みたいことがある。これが叶えば、私は無給でもいい」
「ほぉん?言ってみろ」
「私には妹が二人いる。異母姉妹だが、今年で上は十八、下は九つの可愛い盛りの子だ。だが、この下の子にはどうやら『魔術(マジック)』のスキルがあるようでな……」
「ふむ?稽古をつけてくれ、とでも言うつもりか?」
「……無理か?」
「俺としては可能だが……」
「何か問題があるのか?」
「俺の術は主流の術とは違うんだよ。むしろ、主流の魔法の使い方は俺は殆ど知らん。だから、俺に師事すれば、一生俺から習わなきゃならなくなるぞ?無論、『魔術』のスキルがある以上、スキルレベルが上がれば自分でも覚えていくだろうが……」
「ううむ……」
顎を撫でるヒルザ。
そして。
「……だがお前は、黒熊や硬角鹿を仕留める術が使えるのだろう?それだけの力があれば、普通に生きる上では充分のはず。あくまでも、力の使い方を誤らないように心得を教えてやって欲しいのだ」
術の力に溺れるようなことはあってならないからな、と付け加えつつも、ヒルザは再度手を差し出してきた。
契約成立ということだろう。
紹介を再度受ける。
長女、ヒルザ。
二十一歳、褐色肌に芦毛(灰色髪)の大女。斧と丸盾の使い手。
次女、ダイアナ。
十八歳、薄褐色の肌に赤毛、狼のリカント、弓の使い手。
三女、シアン。
九歳、白肌に白毛、細身の少女。術師の才あり。
「……本当に姉妹か?」
俺は三人に聞いてしまった。
顔つきも雰囲気も、肌の色も全く違うのだ。
疑ってしまうのも無理はなくないか?
「ヴァルバ族の習慣と特質でな、異母姉妹はこうなりやすいと聞く」
……聞けば、ヴァルバ族。
『嫁獲り』という習慣があるらしく、男性のヴァルバ族は気に入った女の子を誘拐して強姦し、子供を産ませる伝統なのだとか。
そして、産まれた女の子は母親側にとても似るとのこと。
そうして残した多用多種な子孫の内、最も強いものを当主に据える、戦闘タイプの蛮族だ。
「私はヴァルバ族同士の間に生まれた純血だが、ダイアナはリカントの子で、シアンは異国の貴族の子なんだ。だから見た目が違う」
なるほどねえ……。
まあ、俺には関係ないか。
顔がいい女が三人!それでいいじゃないか。
「ダイアナよ、銅盾位の冒険者で、弓使いなの。よろしく」
ふむ、ダイアナの方がシャープで細身だな。
弓を引くには、姉のヒルザのような大きく膨らんだ筋肉は邪魔ということか。
「シアンだよ!よろしく、先生!」
ロリ。
ロリはロリだな。
顔がいい、品がある。
親が貴族と言ったか?遺伝だろうな。
「では、ヒルザとダイアナには日に銀貨十枚ずつ与える。シアンは、日中に預かって、俺の弟子として術を教える。ヒルザとダイアナはいつでも休んで良いが、どちらか片方は必ず来ること。これで良いな?」
「良いだろう。これからよろしく頼む」
そんな訳で契約成立。
活動開始。
しばらくはこの街で、レベル上げしつつ金を稼ぐとしようか。
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