第4話 桜町中学校

 「喫茶店の前はどこに?」

 

 「ええと、孫の学校、そうだったわ。中学校に行ったわ」


 レトロな喫茶店、コスモスを出て、わたしたちは再び緑山公園前の商店街にいた。


 「お孫さんの中学校って桜町ですか?」

 この駅に中学校は桜町中しかない。つまり、わたしの通ってる中学校だ。と言っても駅からはちよっと歩かなきゃいけない。

 わたしの足で10分。往復20分か。おばあさん歩けるかなぁ。


 わたしの心配をよそに、おばあさんは急にぱっと顔を輝かせた。

 「そうよ、桜町中学の一年生。ねぇ、さっきから考えていたのだけど、あなたヒナタのお友達じゃなくって?」


 向山ヒナタはわたしの親友中の親友だ。

 「あ!おばあさん、ヒナタの、向山ヒナタさんのおばあちゃんだったんですね。

小さいころおうちで会ったことありますね!」

 やっぱりどこかで会ったことがあると思った。「わたしミサトです。奥田ミサト」


 「中学校にも行ったんですか。ヒナタに会いにですか?」

 中学となると探すの難しそう。広すぎる。だいたい入学式でも参観日でもないのに、どうして中学に行ったんだろう。


 「そうそう、ミサトちゃんだったわよね。大きくなったのねぇ」

 ヒナタのおばあちゃんは懐かしそうにわたしを眺めた。憶えてるのかな。ほんとにわたしのこと。


 「実はね、列車に乗る前にヒナタの顔が見れたらと思ってね。校門の前で待っていたの。だから落ちているとしたら校門のあたりね」


 「でも、それって外ですよね、、、そこで落としたとしても風で飛んじゃってるんじゃないかなぁ」


 「そう、そうよね。もうないかもしれないわね」


 「でも、念のために行っときましょうか」

 こうなったら最後まで付き合うか。ヒナタのおばあちゃんだし。

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