第4話 強すぎて素材回収できなくて草

ダンジョン大橋を歩いてダンジョンの入口までやってきた。


俺の目の前にはポッカリと入口の穴が開いていた。


現状日本で最高難易度と呼ばれているダンジョンだ。


【始祖のダンジョン】と呼ばれている。


ここから全てが始まったと言っても過言では無い。


このダンジョンが生まれて日本各地にダンジョンが発生するようになった、と言われている。


俺のいた本来の日本では東京一極集中とか言われてたけどこの世界の探索者はこのアイランドに一極集中している。


それくらいこのダンジョンの知名度は高いし、攻略しがいがあり、全ての探索者の夢のような場所であった。


「さて、入ってみるか」


ちなみにこれ何気に珍しいレアシーンである。


原作の乃亜はダンジョンに入ったことがほぼない。


理由はもちろん、乃亜が黒幕系だからだ。

こいつの仕事はダンジョン関係よりその他で起きる問題の解決だったから。


このダンジョンは無機質な円形のフィールドが中に広がっているタイプのダンジョンである。


探索の必要もそこまで必要が無い。

なぜなら円形のフィールドがあってそこにモンスターが置かれているだけの超簡単なダンジョン。


次の階層に向かえばそれで終わりっていうダンジョン。


シンプルなダンジョン。

それだけに難易度が高かった。

逃げも隠れもできずにモンスターと向かい合うか、どうにかして次の階層に向かうしかないからだ。


俺はここから起きることを原作知識と知っている。


(雑魚モンスターとの戦闘だったな)


フィールドに目をやると、ゴブリンが一匹突っ立っていた。


【コアブレイク】


バギャッ!


「ギィ……」


倒れるゴブリン。


ちなみにダンジョン内部はかなりゲーム世界っぽくてモンスターを倒したあとは地中に溶けるようにして消えていく。


んで、死体が消えた後には【コア】が残る。


原作でもそうだった。親の顔より見た光景である。


ドロップを回収するために近寄ったのだが


「ん?」


コアが落ちてない。


(あっ……)


癖でコアを破壊してしまったのだが。


(俺の能力はコアを破壊するから回収できねぇじゃねぇかっ!)


てへっ。


やってしまった。


「強すぎてコアが回収できなくて草」


だが分かったことがある。


(なるほどな。これがあったから乃亜はダンジョンに向かわなかったってとこか?)


はっきり言って【コアブレイク】は乃亜の本体だ。

【コアブレイク】を使えないなら乃亜じゃなくてもいい。


ゲームで例えるなら他のメンバー使うわ!ってなるところだけど。


「知ったこっちゃないんだよなぁ」


乃亜くん。


俺は君を思う存分使うために転生したのかもしれない。


ということで俺はこのままダンジョンに潜っていこうと思う。


コアが回収できないからなんだ?

そんなことは些細なことだ。


俺が乃亜を使えるという現実の方が大事だ。


ということで俺はそのまま階段に向かってくことにした。


ゲームをする上で一番大事なことなんて決まってる。


それは……


自分の好きなキャラを使えるかどうかである。


性能なんて二の次だろ!


俺は性能厨ではない!


ほんとだ!



……40階層。


「ギャオォオォォォォォォォン!!!」


俺の前でドラゴンが飛んでいた。


「【雷槍サンダーランス】」


雷の槍をドラゴンに向けて投げた。


「ギャオォオォォォ……」


ドラゴンが落ちてきた。


一撃である。


ダンジョンの床に倒れると溶けるようにして消えていく。


【コア】がとうぜんのようにドロップした。


ごめんなさい、嘘つきました


実はこのキャラ性能もガチガチなんです。


俺は……性能厨だったのかもしれない。


「ていうか随分潜ってきちゃったな」


原作では10階層を超えると一層クリアするのにかなり時間かかってたのに、乃亜が強すぎてポンポン進んできてしまった。


「ふぅ、そろそろ帰ろうかなぁ?」


ダンジョンについてる小さな窓から外を見てみるともう日が登り始めそうなくらいだった。


「うげっ。もう朝かよ。今何時だ?」


俺はスマホを見た。


朝の6時。


メッセージが届いてた。



父さん:乃亜。学園に入学する前の話を直接会って色々したいと思う。今日病院に来れるか?疲れているだろうし夜分遅くにすまないな



このメッセージ届いたの夜中だった。



今更返しても遅いかもしれないけど。



俺:了解



返信するとすぐにメッセージが帰ってきた。



父さん:お前の戦闘データも取れたし、その上で次の指示も伝えようと思う。



俺:指示?



父さん:アイランドはいろいろと問題を抱えている。暗躍して欲しいのだ。



(暗躍……)


その言葉にぽわぽわしてきた。


頬が緩んでくる。


暗躍……くっくっく。


あー。やっぱり黒幕系っていうのは最高だよなぁ。

人知れず夜の闇を走って暗躍する黒幕。


俺はそういう黒幕が好きなのだ。

それを自分でやれるなんて、最高すぎるな。


1人でぽわぽわしていた時だった。


ガン!


背中に衝撃を感じて驚いた。

衝撃って言っても指で突っつかれたようなそんな感じだけど。


「なんだよ」


振り向くとドラゴンが俺を見ていた。


傍には尻尾の先端。

どうやら殴られたらしい。


「あーリポップしたのか。それにしても不意打ちとは恥を知らんのか?」

「ナゼダ。ナゼコウゲキガツウジナイ」

「お?お前喋れるんだな」


ドラゴン。

モンスターの中では知能が高い方とは聞いていたが喋れるとは。


「俺の言葉を理解出来るなんてかわいそうにな」

「ナ、ナゼキズツカナイ」


一歩歩くとドラゴンは一歩下がった。


本能的な恐怖を感じているらしい。

少し気が早いが、こいつの敗因はその本能的恐怖を感じるのが遅かったから、だな。


隅っこで震えているなら俺も無視してやったものを。


コア1個シングルコアの雑魚が調子に乗ったねぇ」

「ザコ?シングルコア?」


「俺はコア5個ファイブコアコア4個フォーコア未満の雑魚の攻撃を全て無効化できるんだよ。お前の知能ならこの言葉の意味は分かるよな?」


俺は雷槍をもう一度作り出した。


「俺とお前とでは生物としてのランクが違う。ミジンコが俺に攻撃できると思うなよ」


この世界には2コアまでの生物しか存在しない。

3コア以上は俺以外存在しない。


つまりこの世界に俺に危害を加えられる存在なんていないことになる。


「ヒ、ヒィィィィィィィィ!!!!」


ブンブンブンブン!


俺に何度も尻尾で攻撃してくるドラゴン。


全て無効化だ。

まるで猫じゃらしで殴られているような感じでくすぐったくなるくらいだ。


「もっと本気出してみろよ?全然効かないんだけど。このままじゃ戦闘じゃなくて虐殺だぞ?」


「ユ、ユルシテェ。モウシマセンカラァァァァァァァァ!!!」


ブン!


俺は雷槍を投げた。


ドラゴンは倒れて溶けるように消えていった。


弱いものいじめみたいでちょっとかわいそうになってきたけど、ダンジョンのモンスターというのは本来害虫のようなものだ。心を鬼にして駆除しなくてはいけない。


コトっ。

コアが落ちた。


「黒幕系に慈悲があると思うなよ?ドラゴンちゃん?」


俺はそう呟いてからダンジョンの壁を見た。


ダンジョンの窓から外に出ていく。


ちなみにこの窓だが、外から内側には移動できなくなっている。

不思議な窓だよなぁ。


てか、すっかり朝になってるわ。


このままコンビニ行ってコーヒーでも買ってから病院行くかぁ。


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