市長の反撃
「貴様ら、いいところに来た!さすがわしの市民と部下たちだ」
市長は、集まって来たボランティアと監視者たちに言った。興奮してわめきまくっていたが、理性を失ったとか、そういうわけではなかったようだ。
何が「いいところ」なんだろうと思って、にゅうめんマンが見ていると、市長はボランティアの1人に近づき、突然この市民の首を大きな手でにぎった。
《首なんかにぎってどうするつもりだ》
と、にゅうめんマンが思うのと同時に、首をにぎられた市民に異変が現れた。
「やめてください……力が抜けて……」
市民は訴えるように弱弱しい声を上げた。呼吸ができないわけではなさそうだが、なぜか力が抜けていくらしい。
すぐにこの市民は、植物が枯れるように体がしわしわになった。市長は抜け殻のようになったボランティアを芝生の上にポイ捨てし、急ににゅうめんマンの方を向いた。それで、にゅうめんマンがドキッとした瞬間、市長が叫んだ。
「くらえ!市長フラッシュ!!」
市長は右の手の平をにゅうめんマンの方へ向けて広げ、突然そこから激しい光線を発射した。
「何だと!?」
驚く暇もあらばこそ、にゅうめんマンは市長の光線を受けて負傷し、荒々しく地面に打ち倒された。
市長は市民からエネルギーを吸い取り、それを光線として放出したのだ。市民の寿命を削って大きなエネルギーを吸収するため、「市長フラッシュ」の威力はすごく強い。
市長は別のボランティアたちをとっ捕まえて同じようにエネルギーを吸い取り、正確に狙いを定めて、にゅうめんマンに2発目、3発目の光線を放った。その度に市民たちが梅干しのようにしわしわになり、芝生の上に打ち捨てられた。
《うぐぐ……ちくしょう。何だあの技は》
冗談みたいな攻撃のくせにやたらと強いので、市長フラッシュを連続して受けたにゅうめんマンは急速に弱った。
「おい!覆面男がやられているぞ。何とかしなくては」
にゅうめんマンの危機を見て、市民ボランティアの1人が他の市民たちに呼びかけた。この市民たちは市長にしいたげられているので、市長とにゅうめんが戦っているのを見て、にゅうめんマンに勝ってほしいと思ったのだった。
「よしきた!」
「任せとけ」
「俺たちの力で覆面男をサポートして悪徳市長を打ち倒すんだ!」
市民たちは思い思いの言葉を口にしながら、にゅうめんマンの周りに集まって来た。
「よし!――で、どうやってサポートすんの」
市民の1人が別の市民にたずねた。
「……どうすんの?」
その市民はさらに別の市民にたずねた。
「俺にきくなよ」
威勢よく集まって来たくせに何の策もなかったらしく市民たちはまごまごし始めた。するとそこに次の市長フラッシュが飛んで来た。
「ぎゃあああああ!!!」
市民たちの一部が、市長フラッシュの尊い犠牲となった。でも、この市民たちが肉の壁となって偶然にゅうめんマンを光線から守ることができたので、結果オーライだった。
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