連戦
「さて……」
田山は、にゅうめんマンの方へ顔を向けた。
「とうとう我々が戦うべき時がやって来たようだな」
「思ったより早くやって来たな」
「覚悟はいいか」
「ああ。来るなら来い」
田山は背広の上着を脱ぎ、眼鏡も外してケースに入れ、田山田に預けた。
「これ持っといて」
「うん」
田山はにゅうめんマンに戦いの開始を宣言した。
「こちらから行くぞ!」
「おう」
戦いが始まるやいなや、田山は人間離れした跳躍力で華麗に宙へ跳び上がった。
「メテオライト・キック!」
田山は、流れ星のように足先から光の尾を引きつつ、にゅうめんマン目がけて鋭い蹴りを打ち下ろした。
《む、速い!》
思った以上に動きが速くて安全によける余裕がなかったので、にゅうめんマンは両腕を上げてそのキックをブロックした。
「ぐっ!」
キラキラと輝く田山のキックには不思議な力がこもっていて、腕で防いでもその威力を殺し切れず、腕を通り抜けて胴体に衝撃が来た。それで、にゅうめんマンは一瞬ひるんだが、体勢を立て直すために、後ろへ引いて相手の間合いから逃れた。
だが、逃がすかとばかりに田山は間合いを詰めて、次の攻撃を放った。
「コズミック・フィスト!」
田山は腰にひねりをきかせて、幻想的な青白いきらめきを振り撒きながら、強力なパンチを繰り出した。
だが、にゅうめんマンは、このパンチはよけることができた。そこで反撃のチャンスを見出したにゅうめんマンは、こちらからもパンチをしかけた。しかし、田山は光の渦でできた円盤状のバリアーを体の前に張った。
「ギャラクティック・バリアー!」
このバリアーのせいで、にゅうめんマンは完全に攻撃を防がれただけでなく、一気に危ない状態に追い込まれた。
《何だこれは!腕が抜けない!》
何と自分の腕がバリアーに吸いついて離れなくなったので、にゅうめんマンは焦った。田山のギャラクティック・バリアーは中心部がブラックホール状になっていて、近づいた敵を吸い寄せて動きを妨害する強力な機能が備わっていたのだ。
「隙だらけだぞ、にゅうめんマン!正義の味方だと聞いたが所詮その程度か」
「くっ」
「次はこいつをくらえ!エクストラテレストリアル・逆水平チョップ!」
バリアーに腕を吸われて自由に動けないにゅうめんマンの胸に、田山は猛烈な逆水平チョップを打ち込んだ。
「ごほっ!」
この逆水平チョップにも当たり前のように不思議な力がこもっていて、その威力は見た目よりもずっと強かった。胸を打たれたにゅうめんマンは、肺に衝撃を受けて呼吸困難になり、よろめいた。
にゅうめんマンが弱っているのを見て、田山は自分の頭にすばやく宇宙のエネルギーを集めた。田山の頭からエネルギーがほとばしり激しく光り輝いた!
「アストロノミカル・ヘッドバット!!」
田山が放った超人的な頭突きに耐えられず、にゅうめんマンは仰向けに地面に倒れた。すかさず田山は追い打ちをかけた。
「無重力アクロバット・ストンピング!」
田山は3次元的にグルグル回転しながら高く華麗に跳び上がり、にゅうめんマンの体を激しく踏みつけた。
「ぐふっ!」
「よおし。とどめだ!」
田山は空に向かって大きく両腕を広げた。
「究極奥義 副市長流星群!!」
すると、空から何かたくさんの物が、にゅうめんマンのいる辺りを目がけて降って来た。
《まずい!》
にゅうめんマンには、すぐに立ち上がって落下物から逃れる気力が残っていなかった。それでやむなく、頭を守りながら体を丸めて防御した。
空から降って来たのは、(多分市役所の)事務用品や備品類だった。にゅうめんマンは、分厚いフォルダーや、ノートパソコンや、判子や、やかんや、人生ゲームや、大リーグボール養成ギブスの直撃を受けたが、幸い致命的な打撃はまぬがれた。
副市長流星群が収まった後、にゅうめんマンが恐る恐る周囲の様子を見ると、田山は事務机の下敷きになってのびていた。田山田もコピー機の下敷きになってのびていた。生きているだけでもすごいと思う。
そばにいた競輪の選手や観客も、運の悪い者は、いす、ロッカー、自転車など様々な物の下敷きになって、うめいたり、気絶したりしていた。
「……手ごわい相手だった」
強敵田山を打ち破ったにゅうめんマンは、市長邸を目指して競輪場を後にした。
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