地下鉄と競輪場
他の店で適当に昼食を済ませたにゅうめんマンは、市長が向かったという競輪場へ行くため、市役所のそばにある地下鉄の駅に下りた。できれば星鬼松市の電車には乗りたくなかったが、バスに乗るよりは電車の方が命の危険が少ないと考えたのだ。
駅は、電車を待つ人たちの一部が乱闘していた他は問題なさそうだった。駅のホームで時刻表を確認すると、もうじき次の電車が来ることが分かった。それで、にゅうめんマンが静かにその電車を待っていると、間もなく、なぜか予定の時刻よりも早く次の電車がやって来て、すごい速度で駅を素通りし、走り去った。
《電車はすべて各駅停車のはずなのに、なんで通り過ぎたんだ》
わけが分からずに、にゅうめんマンが困惑していると、ホームにアナウンスが流れた。
「ただ今の電車は、運転士の居眠りにより当駅を通過しました。そのうち次の電車が参りますので今しばらくお待ちください」
電車を待っていた人たちはこれを聞いて激怒した。
「ふざけるな!前の電車も居眠り運転で素通りしたじゃねえか!!乗客をなめるのもいい加減にしろよ!ここの駅員全員血祭りに上げてやる!!」
駅員を血祭りに上げるのは八つ当たり気味だが、怒るのも分からないではない。逆上した人たちは、駅員たちをぶちのめすため、集団でホームを去って駅員室へ向かった。
仕方がないので、にゅうめんマンは引き続き次の電車を待った。そうしてしばらく待っていると、駅員室へ向かった人たちが、
次にやって来た電車は、運転士が漫画を読みながら運転していたせいで停止するのが少し遅れて、停車位置が数十メートル前方にずれたが、にゅうめんマンは無事この電車に乗車し、やがて競輪場前の駅に到着した。
* * *
駅の目の前にある競輪場は、見たところ普通の競輪場だったが、なぜか、気絶した人たちが通路に点々と倒れていた。繁盛しているようで、平日の昼間であるにもかかわらず数千人の観客で盛り上がっていた。
《ここまで来たはいいものの、こんなにたくさん人がいては市長を見つけようがないな》
と、にゅうめんマンが思案していると、ちょうどレースが終わって観客たちが騒ぎ出し、走り終わった選手に向かってわめき立てた。
「なんだ今の走りは!まじめにやれ、ドアホウ!!おばはんのママチャリの方がまだ速いぞ!」
「そうだ!そして俺はそのおばはんよりもっと速いぞ!」
「一番人気が聞いてあきれる!貴様のようなごみレーサーは三輪車にでも乗っていろ!」
「八百長だ!」
どうやら1番人気の選手の順位が悪かったせいで観客が荒れているようだ。
襲撃を受けた選手も
「バカ野郎!文句があるなら自分が走れ!平日の昼間からしょうもないギャンブルをしているゴクツブシどもめ!!」
と声を限りに言い返し、他の選手たちと一緒になって、乗っていた自転車をフルスイングし、観客たちを殴り倒した。
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