第3話ご主人様とお母上様
ご主人様はまだ来ない。
母上様との生活も悪くない。というかとても心地がいい。
暖かいし、穏やかだしエサはきちんと出てくるし。
ご主人様には悪いがこちらの方がいい生活としてなじみつつある。
そんなとき、ご主人様は現れた。
「ミケ、ごめんね。こんなところに預けてしまって」
「こんなところとはご挨拶だね。きちんと世話もしている。健康だと獣医さんにも太鼓判を押してもらえた。それで、彼氏さんとは話が付いたのかい?」
「それが、話は平行線で。でもミケに会いたくて」
「彼氏さんが無理なら別れるしかないんじゃないか」
「ミケにもう一度会えば、気持ちが変わるかもしれないわ」
「そんな危険な場所にミケを置いておくなんて反対だよ」
「だって」
焦っているご主人様からは嫌なにおいがする。
「ミャー」
母上様の周りをぐるぐるしている。ご主人様にはすり寄りたいけれどすり寄れない。
きつい匂いが阻むのだ。
「今、あなたに近寄らないのが答えじゃないかい」
「そうかもしれない。ミケ、別れたらまた側に来てくれるよね」
「ミャー」
結局ご主人様は帰っていった。
「ミケ、あの子が別れたらまた戻るかい?」
「ニャーゴ」
もどりたいな。戻れるものならば。まだあの男の匂いが場に残っている。
母上様の足元をぐるぐると回ってみる。
「あら、においが嫌なのね。ちょっと冷たいけれど、換気しましょうか。しばらく辛抱してね」
「みゃーご」
母上様は察しが良くて助かるにゃ。まだまだあの男の匂いがするの。今日はスペシャルなご飯が食べたい。
「あら、今日はご褒美ご飯なのね。でもまだ駄目よ。少し多めにご飯をあげているからしっかりと動かないと」
「ミャーゴ」
ご主人様はあっさりくれたのに、母上様は手ごわい。
「ほら、たくさん動いて少しやせたらご褒美ご飯が食べられるわよ」
動かないともらえないということで、必死におもちゃを追いかける。楽しいからな何でもいいのだけれどね。換気が終わって少し気持ちが楽になる。
「そうそう。動物は動かないと本当にすぐ脂肪がついてしまいます。ミケもね」
き、厳しいお人なのです。
「あなたもね」
リモートワークで休憩に入った父上様にも厳しい一言。
「やっぱりもう少し健康に気を遣った方がいいよなぁ」
「自覚しているなら即行動してくださいな。今日は青汁飲みに行きますから」
「えっ。あの苦いお店かい?」
父上様は本当に嫌そうにしている。
「そう。フルーツジュースの専門店。おいしいものだけでなくて青汁ブレンドもやっているの。今度はミカンでもベースに入れてもらってのみましょ」
母上様はハマっているらしく上機嫌だ。
「じゃ、ミケ。言ってくるわね。お留守番よろしくね」
2人はそろって外へ行ってしまったのにゃ。待遇はよくともちょっとしたことで悲しみも感じるのにゃ。
母上様は床が温かい使用尾にしていってくれたようだにゃ。
楽しい時間が多いけれどb、ご主人様との時間はもっと楽しかったの。
返ってくるかな。ご主人様。あんな男の手なんて取らないといい。待っているから早く日常が戻ってきてほしいな。日の当たる場所ではなくて、暖かいのは少しサミシイのにゃ。
少し眠る。母上様と一緒にいることでいい運動をしてきたので疲れが出たのかも。
「ニャーゴ」
端役ご主人様に空いた会いたいにゃ。
日が沈んでからしばらくしたら母上様と父上様は帰ってきた。
「お待たせ。さみしかった?」
「にゃーん」
「ちょっと時間がかかってしまったわ。ごめんなさいね」
お母様はガサゴソと荷物を探している。
「実はこれを買ってきたのよ。あの子の荷物にはなかったの。これで毛並みをとtのえましょ」
何だろうか。ちくちくしたものを持っている。背中を何度もさすられて櫛を入れられる。
「痛くはないかしら」
「にゃー」
なんだか気持ちがいいにゃ。この作業は好きなのだ。母上様の膝の上で寝ることにした。さみしかったので思いっきり甘えるのにゃ。
母上様は受け入れてくれた。
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