第10話

 先輩の言葉を伝えに戻ると、アカネは呑気に河原の石で水切りをしていた。平べったい石を探すために、子供たちが積み上げた塔を崩している。鬼よりも、鬼。


 名簿を取り出して彼女の頁を開いたが、そこには他殺としか書かれていない。これは私たち地蔵が人間に余計な感情移入をしないための措置で、名前と性別、生年月日の他には、輪廻転生の履歴が書かれているぐらいだ。アカネの直近の前世はメスのカマキリだった。


「で、どうだったの?」

「すみません。やっぱりだめでした」

 彼女は深いため息を吐く。

「バイトだってもうすこし役に立つわよ。てか、あなたが怒られている様子をずっと見ていたけどさ、あんなハゲに言われ放題で悔しくないの?」

 そんなことは言われるまでもない。

「だったらもっと頭を使いなさいよ」

 そう言うとアカネはスマホを取り出した。そして、

「これで、地蔵っちの未来を変えてあげる」と不敵な笑みを浮かべた。

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