いつも元気そうにしようけん、全然気づかんかった

 休憩時間、昼寝の前にスマホを手に取った僕は、ふと気になってエビちゃんが飲んどった薬の名前を検索した。

 シートに書いてあったんをちらっと見ただけやけど、なんでか名前は正確に覚えとった。

 検索結果には『抗不安薬』とか『安定剤』とか書かれとった。

 ほういう薬って、病院に行かんかったらもらえんやつよな?

 ていうことは、エビちゃんはほういう病気で病院にかかっとうってことよな……。

 いつも元気そうにしようけん、全然気づかんかった。

 アカン、エビちゃんの泣き顔を思い出してしもた。こんな気持ちで昼寝やできんわ。

「エビちゃんおる?」

 僕は無線機のスピーカーマイクを握って、エビちゃんを呼び出した。

「伊勢原さん、海老名です」

 あぁよかった、いつものエビちゃんの声や。

 ほなけどなんて言おうか?「元気?」って言うんもなんか変やな、えーと……

「エビちゃん、飯食うたん?」

「食いましたよ」

 エビちゃんは不思議そうな声で言うた。

 うん、飯食うたんならいけるな。

「ごめん、ほんだけ」

「東雲さんがおったら怒られますよ?」

 責めるようなエビちゃんの声を聞いて、僕は思わず苦笑いしてしもた。

 電話にしたらよかったかな? まあええか。

 ちょっと安心したし、ひと眠りしよか。

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