第29話
『我はこの森の意思なり!疾く出ていけ!』
森の意思…?無機物に意思が宿るなど聞いたことがありません。そんなものは物語の中にしか存在しない。
「意味わかんないの!さっさと出てくるの」
ヴィオレ嬢が苛立たしげに木を殴りつけ、メキメキと音を立て1本の木が倒れた
『ヒッ き、貴様!森を傷つけおって!』
「嫌なら止めてみるの」
先程より大きな木が音を立て倒れる
『や、辞めんか!グワーッ』
木が倒れた先で白い何かがチラリと見えた
「そこなの!」
ナイフを投げつけるが、地面に突き刺さるだけだった
『フハハ!そのようなもの当たらぬわ!』
ソレはカサカサと草をかき分けながら、森の奥へと逃げる
「逃がさないの」
そう言って白い影を追ったヴィオレ嬢がスっと消えた
「ヴィオレ嬢!?」
「大丈夫なの。ただの落とし穴なの」
軽々と彼女は穴を登り、抜け出した
「あいつはどこなの?」
「見失ってしまいました。逃げ足が早いですし、明確に知能があります」
「超獣なの」
人以外の生物にも印が付くことがある。彼らはその際、特殊能力をえると同時に、感情が芽生え、知能が高くなる。そんな彼らを超獣と呼ぶ
「その様ですね。彼の能力は念話、といったところでしょうか。それ以外に能力があれば応戦していたでしょうし」
「口だけのやつだったの」
まんまと逃げられたことに腹の虫が治まらないようで、少し不機嫌そうですね
「あれが白影ということなのでしょうか。しかし…」
「もう暗くなるの!そんなのはあとなの!」
そう言われ、空を見上げるとやや赤みがかった色をしていた
「そうですね。今日のところは帰りましょうか」
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