第27話

冒険者ギルドに入ると昨日とは打って変わって騒がしい。掲示板の依頼表を吟味するものや、今日の予定を話すパーティ、依頼を出そうとする老人。


「今がちょうど皆さんが動き出す時間ということですかね」


「どの依頼を受けるの?」


「そうですねえ」


薬草や果実を採取するのは少し効率が悪いでしょうか。一般的な植生の知識はあるとはいえ、この土地についてはさっぱりですからね。それは動物にも言えることですが。見つけさえすればヴィオレ嬢に負けはありませんしね。換金率が高いのはイノシシでしょうか。オオカミも討伐料が払われますが、売り物としては価値が低いですからね。


「とりあえず森の中腹辺りを下見程度に、獲物は運良く見つかればって所でしょうかですかね」


つまりは無計画だ


「おい、お二人さん!」


「分かったの。今日はそのくらいにしておくの」


ヴィオレ嬢の了承が得られたところですし、出発しますか


「旅人の兄さんと嬢ちゃん!」


先程の声は私たちを呼んでいたようです


「いかがしましたか?」


声をかけてきたのは私より少し年上の男性だった


「あんたら、来たばっかで詳しくねえだろ。それにこんな女の子を危険な森に連れていこうなんて正気か!」


正義漢、ですか


「こう見えてヴィオレ嬢はとても強いので大丈夫ですよ」


「信用ならねえな!そんな子にデカいバック持たせやがって。その子はお前の奴隷じゃないだろ!」


私がイノシシ1匹分の肉を背負おうものなら走るどころかすぐに倒れてしまうでしょう


「なんの事情も知らずに人様の関係に口を挟むのは如何なものかと思いますが」


「んだと、てめえ!」


彼が私に掴みかかろうとしたところ、ヴィオレ嬢が私を引っ張り、彼の手は空を切る


「ちょっと何してるんだい!」


昨日会った受付の老婆だった


「あたしゃ、森について教えてやれって言ったんだよ!なんで喧嘩しようとしてるんだね!」


「だってよ、婆さん…」


「いい年こいて言い訳してんじゃないよ!」


どこに行ってもご老人は強いのですねえ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る