第24話

私たちは町の北西に位置する森の恵み亭へとたどり着いた


「こんばんは、冒険者ギルドの依頼の配達にまいりました」


私が言ったことに次いで


「それと宿泊もお願いするの」


と、ヴィオレ嬢が言った


受付には妙齢の女性が立っており、まさに女将さんといった様子だ


「あいよ、配達ご苦労さま。それと宿泊だったね、2人部屋でいいかい?1泊銀貨2枚だよ」


私はまず手紙を渡した


「はい、2人部屋で、一先ずは5泊お願いします。」


女将さんはお金を受け取り


「はいよ、あんたらの部屋は2階の1番奥の部屋だよ。ああ、あんたら晩飯はもう食べたのかい?」


そういった瞬間、ヴィオレのお腹がぐーと鳴った


「ふふ、腹減ってんなら向かいの森の恵み食堂へ行きな。わたしの主人がやってる店でね、うちの宿泊客なら割引きするし、何より美味しいからね。後悔はしないよ」


「では、そうさせていただきます」


「美味しいご飯なの!」


女将さんに見送られ向かいの森の恵み食堂へ向かう


「いらっしゃいませ、あちらの席へどうぞ〜」


店に入るなり、10代の女性店員に案内される


「何かおすすめはおすすめはありますか?」


彼女におすすめを聞いてみる。ふと調理場に目をやると体格のいい30代後半に見える男性がフライパンを振るっている


「今日は野菜の旨みたっぷりのシチューと新鮮なボタン肉のステーキがオススメですよ〜」


ステーキという言葉に即座に反応したヴィオレ嬢は「ステーキにするの!」と言った


「では、私はシチューをお願いします。あとぶどうジュースとパンを2つずつ」


「承知しました〜。お父さんー!ボタン肉のステーキとシチュー1つずつ〜!」


彼女は元気いっぱいにそう言った


「やはり、女将さんとご主人の娘さんでしたか」


「あれ〜?お母さんのことも知ってるの〜?あ、もしかして旅の方?」


「ええ、そうなんです。女将さんにこちらで食事するといいと教えて頂きまして。5日ほど滞在する予定です」


すると、彼女は納得した様子で


「道理で見ない顔だったんですね〜。じゃあこれから何度か会うかもしれませんね〜。私、レースって言うんです。」


「ええ、私はカタル。この子はヴィオレです。よろしくお願いします」


「ヴィオレなの」


「はい〜、よろしくお願いしますね、カタルさん、ヴィオレちゃん〜」


「おい、レース!料理運べ!」


厨房からご主人の野太い声が響く


「はーい!それでは、ごゆっくり〜」


そう言ってレースはウェイトレスの仕事へと戻って行った

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