第21話

「さて、とりあえずの目的は達成しましたし、宿に行きましょうか」


そう言って私は冒険者ギルドを後にしようとする


しかし


「何か依頼を受けるの!」


ヴィオレ嬢はそう言って依頼書の書かれた掲示板に張り付いている


「そうは言いましても、お昼はとっくに過ぎてしまいましたし、これから森に入るとなると夜になってしまいますよ」


私は彼女を宥めようとする


「お金無いって言ってたの。ちょっとでも稼ぐの!」


「それほど急を要するほど困窮しているわけではないでしょう?」


「行くの!」


私が再度宥めようとするがヴィオレ嬢はやけに頑固になっていた。そこで


「じゃあ、この依頼なんかどうかしら。」


そう言って老婆が渡してきたのは町内の配達の依頼書だった。


「これなら街の中だから安全よ。街の散策も兼ねて行ってきたらどうかしら。新人がこなす依頼としてもポピュラーなものよ。報酬はそれに見合った程度しかないけれどね」


「分かったの。受けるの!」


ヴィオレ嬢が即答する


「ふむ、そういうのであれば引き受けましょう。」


確かに街を散策するのであれば、多少暗くなっても安全ですしね。それにヴィオレ嬢に本気で抵抗されれば連れていくことなど私にはできませんからね。


「荷物は全部で3つです。この冒険者ギルドから南方向の服屋にひとつ。東の領主邸近くの宝石店へひとつ。そして東南にある森の恵み亭へひとつです。」


「なるほど、了解しました。まずは服屋から行こうと思います。」


「出発なの」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る