第19話

市場を離れ歩くこと数十分、私たちは例の大樹の元に着いた。


「屋台がいっぱいなの」


ヴィオレ嬢の言う通り大樹を取り囲うように広めに道が舗装されており、至る所に屋台がある。おそらく町民の憩いの場となっているのだろう。巡回の兵士もそこらに見え、随分と安全そうだ。


「屋台もいいですが、ひとまずは冒険者ギルドに行きましょう。さすがに贅沢できるほどのお金が無くなって来ましたので」


そう言って私はヴィオレ嬢を連れて冒険者ギルドに入る


それは一般的な家の2倍ほどの面積を使った石造りの頑丈そうな二階建ての建物だ。ギルド長の執務室だったり、貴族なんかを相手にする応接間が二階にあることが多く、市民が用があるのは専ら1階である。


扉を開けるといくつかカウンターがあり、受付嬢はいるが他に人が見当たらない。空いているのは好都合だと思い老齢の受付嬢へ話しかける。


「こんにちは、今日はこの娘の冒険者登録をお願いします」


そう言って私はヴィオレ嬢を紹介する


「あら、年齢も性別も不問だけれどさすがにこんなに幼い女の子は厳しいわよ?」


受付の老婆は少し顔を顰めて言う


「こんな細くて弱々しい腕じゃ短剣も持ち上げられないでしょう?それじゃさすがに試験にならないわよ」


試験。冒険者になるための本当に最低限の力を見るテストだ。薬草取りや解体に刃物が使えるか、木などに登れるか、走る体力はあるのかなど。正直成人であれば女性でも簡単にクリアできる難易度だが、老婆にはヴィオレには無理に見えたらしい。


「大丈夫なの、ヴィオレは結構強いの」


ヴィオレは特に自信気でもなくそういった。


「そう?じゃあ裏に試験用のお庭があるからそこに行きましょうか」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る