第18話

「市場がやってるの。見てみるの!」


そう言ってヴィオレ嬢は駆け出してしまった。この10日の旅でわかったことの一つにヴィオレ嬢は結構食にうるさいということだ。私は適当にジャーキーとパンを齧ればいいと思っていたが、ヴィオレ嬢は不服らしかった。そして自身で獣を捕まえ、捌いて焼いてパンに挟んだり、スープを作ってパンを柔らかくして食べていた。もちろん私も美味しいに越したことはないのでご相伴に預かった。


彼女が硬いパンや肉を噛みきれないわけがあるまいと思っていたが、貧しい時期とぴんくどっぐ組で贅沢していた時期を経験したために食事には妥協しないと決めていたようだ


「見るの!このリンゴとっても大きいの!こっちのも〜」


この時ばかりはヴィオレ嬢の瞳が輝いて見える。彼女がずっと表情を表に出さなかったのは舐められないためだったらしい。今でも子供らしい笑顔は見たことがないのはまだ警戒されているということでしょうか


「ええ、そうですね。ではリンゴを2つお願いします」


私はフルーツを並べていたおば様に注文した


「毎度。可愛いお嬢さんねぇ。」


「ええ、全くです。所で、冒険者ギルドはどちらにありますでしょうか?」


「おや、あんた冒険者だったのかい?痩せているしてっきり学者様かと思ってたよ」


冒険者。護衛や害獣退治などを請け負う武闘派集団だ。実力の低いものは薬草なんかの採集や街の掃除なんかをさせられる便利屋として使われることもある。色々な街の悩みや依頼なんかを集めて割り振るなどを組織として行うのがギルドであり、何故かどこの国であっても認められている。なんでも異世界人が創設したとか…


「ええまあ、そういったことを旨とした旅なのですが、路銀が尽きそうでして」


「まあ、そうだったのかい。冒険者ギルドならそこの通りに大きな木が見えるだろう?御神木って訳じゃあないんだが、初代領主のソー様が植えて代々領主様が守り育てている大樹さ。この街のシンボルみたいなものでね、あそこに行けばすぐ分かるよ」


街の中央にはそこらの家より遥かに高い背丈の木が生えていた。なるほど分かりやすい


「ご親切にどうもありがとうございました。ヴィオレ嬢行きますよ」


そう声をかけるとヴィオレ嬢は市場に並ぶ食べ物に目を配りつつも大人しく着いてきた


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