第15話

「とりあえず顔を隠して、1晩を過ごしますか」


ぴんくどっぐ組が壊滅したが、まだヴィオレ嬢を探している者もいるだろうし、薄暗いところでは組長として顔が知られすぎている。


「だったら、いい所があるの」


そう言ってヴィオレ嬢は私を先導して歩きはじめ、スラムの崩れた家にたどり着く


「ここになにか有るんですか?」


どう見たってただの廃屋以下の残骸だ


「ふんっ」


ヴィオレは軽く拳を振るうとその残骸は全て吹き飛び、地面に鉄の扉が現れる


「ここなの。誰も知らないヴィオレの隠し家なの。1日過ごすだけなら十分なの」


そう言いながら彼女はその扉を開ける。見るに100kgはありそうな分厚い鉄扉を持ち上げ開く。


「早く入るの」


そう言われて私は扉を潜り、部屋に入る


そこは広めの一部屋で扉も、当然窓もない。布団が1つと、保存食が置いてある棚があるだけだ。


ガンッ!


重く鈍い音を立て鉄扉が閉まり、ヴィオレ嬢が部屋へ降りてくる


「ここなら1日くらいなんでもないの。それで、これからどうするの?」


「明日の朝には役所へ行って養子手続きをして、スラムの騒ぎに領主が動くまでに街を出てしまいましょう。それ以外は別の街でも出来ますからね」


「そうじゃないの。どういう目的で旅をするのかを聞いてるの」


なるほど。確かに意味も知らずにただついて行くだけというのも面白くないのだろう


「私の旅の目的は世を恐怖にたたき込める怪談を作り出し、世に知らしめること。そのために国を、街を、村を周り、普遍的で斬新な語りうる怪談を知ることです。その一環で恐怖の代名詞でもある魔王にでも会いに行こうかと」


ヴィオレ嬢は少し驚いたように眼を瞠った、ように見えた


「結構なことなの。それぐらい突飛の無い方が面白いの」


「では、せっかくですからヴィオレ嬢も何か目標を決めては?」


ヴィオレ嬢は私の言葉を聞いて、少し考えた後に言った


「とりあえず、不自由しないお金と力が欲しいの」


ヴィオレ嬢の方は随分と俗的な目標を立てたようだ


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