第14話

「話してみるの」


窮地に助けに入ったのが効いているのか、こちらの話を素直に聞いてくれるようだ


「ヴィオレ嬢にご親族などはいらっしゃいませんよね?」


「物心着く前に前に殺されたの。そして私は奴隷として売られるとこだったけど、《暴力》に目覚めて全部壊して出てきたの。」


ほお!てっきり捨てられたか、両親揃ってのたれ死んだかの二択だと思っていたのですが、いやはやパワフルですね。


「それはそれは。お辛かったでしょう。そして今、あなたがの居場所であったぴんくどっぐ組は全壊しました。」


同情は要らないでしょう。彼女はそんなに軟弱では無い。だからメリットを提示すべきです。


「そこでどうでしょう?私と一緒に旅をしませんか?」


「無理なの。ヴィオレは市民権を持ってないから、街の外には出られないの。またスラムでやり直すの」


歳に似合わず酷く現実的だ。1人で生きていく力があるというのも大きいだろう


「それは不可能です。貴方の見た目ではどうしても侮られてしまう。それに、これだけの惨状を作り上げたのです。このスラムを牛耳っていたぴんくどっぐ組が壊滅したとなれば領主が兵を動かし、掃討に動くでしょう。そうなればいかなヴィオレ嬢でも殺されてしまうでしょう」


「む」


ヴィオレは短く呻き、悩ましげに考えを巡らしている


「そこで、ヴィオレ嬢を私の養子とすることで市民権を獲得し、大っぴらに日の元を歩けるようにしてあげましょう」


スラムの孤児が一般市民に戻ることは酷く難しい。ただの市民は日々を暮らすのにも苦労する。それなのに見ず知らずの卑しい子供に手を差し伸べるものなどいやしない。もっと言えば、貴族が汚らわしいスラムの民に関わろうなどするはずもない。自力で市民になる方法などないに等しく、手を差し伸べる者も居ない。


しかし、それはただの人間だった場合だ。《暴力》の印を得て圧倒的武力を持った彼女なら養う程度でいいのなら大儲けだろう。素晴らしい護衛になるのだから。


「私は貴方の力を借りたい。何も一生束縛する気はありません。恩を返すつもりでしばらく共に旅をしてくれませんか?」


「分かったの。よろしく頼むの、カタル。」


私は彼女へと手を差し出し、血にまみれた心強く小さな手と握手をした


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