第11話

騒がしい方へと歩みを進める


きっと、そちらに居るだろうから。ヴィオレ嬢が見つかった時にどうするかと言えば戦闘制圧の一択でしょうから。


そこらに倒れている人が増えてきた。スラムには平常でも倒れている人が居るが、今はそれ以上だ。ボコボコにされた男たちが転がっている。ここでヴィオレ嬢を発見したが返り討ちにあったという事だろう


それらと騒ぎをあてにしてスラム街を進む。急に道が開け、円形の広場のような場所に着くと、そこには20人近くのゴロツキが倒れており何人かは事切れているようにも見える。中には印付きもいる。そんな中返り血で髪と拳を真っ赤に染めたヴィオレ嬢が立っていた。


その感情がこもらない漆黒の瞳がこちらを睨む


「次はお前なの」


そう言ってヴィオレ嬢が私に向かって疾駆する

私に抵抗するすべはなく、彼女を説得しようと試みた、その時


「やっと見つけたぞォ!ヴィオレ!!」


威厳が薄れ、粗野な印象が強くなったガイアが部下を連れてそこに居た。


「あれじゃ、死ななかったの」


そう言いながらヴィオレ嬢は拳の感覚を確かめるように手を握ったり開いたりしている


ガイアの顔をよく見ると頬が赤く腫れており、察するにヴィオレ嬢に殴られたのだろう


「てめぇをぶっ殺すまでは死にゃぁしねえよ!組長の座をかっさらわれ、てめえの下で使われた。この恨みはてめえの死以外で晴れねえんだよ!」


おやおや、随分とプライドが傷付けられている様子。これなら噂でガイアを慕う部下たちを焚きつける必要はなかったかもしれませんね。


「知らないの。お前達が弱いのが悪いの」


一方ヴィオレ嬢は何処吹く風といった様子。しかし、これまでの戦闘のせいか息が上がり、疲労が見える


「ハハハ!もうフラフラじゃねえか!てめえは全員でいたぶってやるよ!」


ふむ、ここらが良いタイミングでしょうか。懐から眼鏡を取り出し装着し、ヴィオレ嬢の前へ出る


「あん?お前は確か…」


「覚えて頂き恐悦至極。怪談師のカタルと申します」


「なんのつもりだ!?さっさと退けば見逃してやる!」


いやはや、恐ろしい恐ろしい


「《恐感》」


《恐感》は私の怪談で感じた感覚、記憶を他者へと共有する能力です。


「ひいいいい」

「うわぁっ」

「おえええ」


ガイアさんに聞かせた怪談を追体験し、恐怖を覚えた者が数名。やはり私もまだまだですね。


「おい!あいつをさっさと殺せ!」


ガイアさんが叫ぶ。しかし、それももう遅い。


「《怪演》」


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