第9話
あれから日が落ち切る頃には泊まっていた宿屋に着くことが出来た。ここは瓶底の宿という名前でそこまで評判は良くない宿屋だ。朝食なんかは付かないし、中央通りからは外れていて、柄が悪い輩もそこそこ居る。唯一の利点は価格が安いと言ったところだ。自衛の心得はあるし、旅は始まったばかりなのでこの瓶底の宿屋を利用している。
宿屋に入るとガヤガヤとした雑音が響居ており、私に気づいた女将さんが声をかけてくる
「おや、カタルじゃないか、生きてたのかい。ぴんくどっぐ組に連れてかれたって耳に挟んだからね、くたばったかと思ったよ」
そう言って女将さんは豪快に笑っている。治安が悪いことが幸いしてかスラムの事情に詳しいようだ。
「どうも勘違いがあったようでして。怪しいものでも売っていると思われたようだったのですが、話せば分かっていただけて、お詫びとして歓待を受けていたのです。」
「へえ、歓待!アイツらがそんな殊勝なことをするなんてねぇ。頭が変わったって聞いたし、丸くなったりするのかねぇ」
「ここだけの話なんですけどね、どうも新組長であるヴィオレ様と副組長のガイア殿は仲が悪く、今にも下克上を起こそうなんて下っ端が言っていたんですよ」
「へえ!そりゃ怖いねぇ」
「でも、私が帰る頃にヴィオレ様とガイア殿が2人で部屋に入り、その後ガイア殿が出てきた時には酷く体調が悪そうで、毒でも盛られたんじゃないかって」
そう雑談をしている風に私に都合のいい情報を流す。きっと近いうちに愉快なことが起こるでしょうね。
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