第2話

遠くからぼんやりと話し声が聞こえてくる


「こいつが最近夜中に怪しい集会開いてるって奴か?」

「うす、集まってたヤツらもやけに周りを警戒しながら帰ってました!」

「おう、やっぱなんかやってんだな。うちに挨拶もねえとは礼儀のなってねえ野郎だ」


目が覚める。固く冷たい床に転がされていた。目を開くと正面には鉄格子とガラの悪いいかにも下っ端の男が1人となかなかの貫禄を持つ壮年の大男が見えた。彼らに誘拐された、ということだろうか


「おう、起きたか兄ちゃん」

「おはようございます。あまり恨まれることをした覚えは無いのですがどう言ったご要件でしょうか?」

「勝手に口聞いてんじゃねえ!」

「ははは、肝が据わってるな兄ちゃん。やっぱり善良な一般市民じゃねえって訳だ」


はてさて、これは会話でどうにかなる状況なのでしょうか。檻に入れられている時点で望み薄な気もしますが…


「んで、兄ちゃんどこの誰なんだ?」

「私はカタルと申します。隣町のフィアー領から旅に出たところです」

「それでそちらはどちら様でしょうか?」

「俺はこの街のスラムを仕切ってるぴんくどっぐ組の副組長ガイアだ」

「ぴんくどっぐ……?」

「ああ、新しい頭が決めた名だ。俺らに拒否権は無くてな。」

「はあ。それでぴんくどっ組の方がなんの御用でしょうか?」

「おい!シラを切る気か!」

「なあ、この街は俺らの縄張りなんだ。そこに知らんやつが夜中に人を集めて怪しい動きをしてるってんだ。問い詰める必要があるだろう?」


下っ端らしき男が声を荒らげ、もう一人の男が諭すように語りかけてくる。どうも雰囲気づくりのために夜中に講談を開いたことが不味かったらしい。


「ああいえ、講談を開いていたんです。」

「講談だあ!?人も出歩かねえ夜中にかあ?!」

「ええ、私の得意なジャンルは怪談でして。太陽が煌めく昼にやったんじゃ台無しでしょう?」

「ふむ。怪談ねぇ」

「それに昼間じゃ昼間は警備の方に咎められまして」

「そりゃ許可なく道を占有してりゃ邪魔だろうよ」

「そういう訳であの時間に講談をしていたのです」

「なるほどね。だが、こっちにも面子があってな、はいそうですかと返す訳には行かないんだ」


やはりこうなりますか。どう逃げ出しましょうか


「だが、兄ちゃんは運がいい!ある仕事をこなしてくれればそのまま解放してやろう。それもあんたにピッタリの仕事だ」

「私にピッタリの仕事、ですか。あまり荒事に向いていないと思いますが」

「もちろん、お前みたいな貧弱な野郎に荒事は任せねえよ。やって欲しい仕事ってのがある人にお前の怪談を聞かせてやって欲しいんだ」


はて?ギャングが怪談の依頼?全くもって意図が読めませんが、檻から出ない限りはどうしよもないですし、一先ずは従うとしましょう

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