人でなし怪談師の旅路~怪談の人気が無さすぎるので魔王に会いに行こうと思います。~
タイムクライムライフ
出会い
第1話
「ご清聴ありがとうございました。怖がっていただけたのならチップをお願いします。」
辺りは真っ暗闇に包まれ、月だけが明るく輝いている。人の動きのない夜に公演を終えた私はそう言った。しかし、客はほんの数人いる程度だ。最初は興味本位で聞いていた人々も話が続くにつれて去っていった。その数人が少額のチップを置いて去っていく。唯一の救いと言えば皆が顔色悪く、暗闇に怯えるように帰っていくことだろうか。
さて、こんな人も集まらぬ夜に公演をしている不審者は誰かなのか
不審者の名前はカタル。男にしては長い紫髪をたずさえ、夜闇に光る深紅の瞳を持つ。第一印象を言うのなら胡散臭い、暗闇に佇む姿は不気味の一言だろうか。怪談を愛し、怪談に愛され、《怪談》の印を受けた男だ。今は怪談の執筆と公演の技術向上を目指し、街々を巡る旅を始めたところである。
印とはなにか。その正体は未だ不明で、誰にも明かされていない世界の謎です。しかし、何かを模した模様の印が体に現れたその時は、超常の力を得ることができるのです。とは言ってもそれほど珍しいものではありません。剣士であれば剣の、農家であれば野菜か農具か、長年の修練や仕事に従事することで現れることが多く、あれば一流と言えるほど希少では無いのです。しかし、一流は皆持っていると言っていいでしょう。
つまり、その道に通じているほどそのものの印を得やすいと言うことです。
そんな中で《怪談》の加護を得ている私の放蕩ぶりはお分かりいただけるだろうか。武芸を極めるでも、農業に従事するでもなく、娯楽を極めようとする私の放蕩ぶりが。無論金にならないのでひもじい思いをしているが、これも精進ということなのだろう。
まだ、旅は始まったばかり。ゆっくりと行きましょう。
そう決意を新たにし、空を眺め、新たな怪談を考えつつ宿へ向かう途中、
ガンッ!
後頭部に強い衝撃が走り、私は気を失った。
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