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自宅のテレビでバラエティ番組をぼんやり眺めていたら、警察から連絡があった。
「お宅のお祖母ちゃんがスーパーで万引きをしたので、身元引受人として警察署に来てください」
男性警察官の事務的な声が、雑音に交じってスマホの向こう側から流れてくる。明け方に見る現実感のない夢みたいだった。「ウチのお祖母ちゃんに限って……」と思ってしまった私は、将来立派な親ばかになることだろう。
間違いや詐欺の電話でないことを伝えるために、警察官は一文字ずつ区切りながらゆっくりと祖母の名前を口にした。どうやら夢ではないらしい。
コンビニに行く用のくたびれたダウンジャケットを手にとり、警察署に向かう。どうしようか悩んだが、母には連絡を入れずに家を出ることにした。その代わり、『夕飯は先に食べてていいよ』と殴り書きしたメモをテーブルに置いておいた。
夜のネオンを縫うように、両足を懸命に動かす。こうして祖母のために走るのは二回目か。マロンが脱走した夜のことをふと思い出す。あの日から約五ヶ月経ったことを、肌を刺す冷気が告げていた。
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