第10話 組合とは?

 冒険者組合の受付の人、優しそうな女性の明るい栗色の優しそうな人で良かった。これでマッチョだったらコミュ障が発揮したかもしれない…前世と違って身長が違うから背の高い人妙に威圧感あるんだよなぁ。


「組合に来られたのは初めてですよね。説明とかいりますか?」

「できればお願いします」

「それでは簡単にではありますが…」


 冒険者組合に所属することは特に枷とかはなく強いて言えば問題事が起きても自分たちで解決してくださいねというもの。それとパーティを組む場合は事前に受付にメンバーがそろってる状態で合意の上で行わなければならないということ

 とはいえ解散等はパーティの誰かが言えば解散できるらしい。それって仲間だと思ってたら違いましたってなったらどうするの?と思ったけど

 次回解散したパーティの人が組合に来たらちゃんと受付の人が報告してくれるらしい。


 なぜ解散がほかの人でも言えるかってところは、死んだらメンバーはそろいませんよね?と笑っていたが目は笑ってないので結構あるのだろう死亡報告と言う名の解散が。


 ノルマみたいなものはないらしいので気楽にして良いのと、依頼も基本的に自由なものを掲示板から取っていいらしい。しかし受理されたあと掲示板の張り紙に書いてある期日を過ぎた場合はもう一度紙が貼り直しをされるらしく、そしたら後続の冒険者が向かうとのこと。


 一応張り直しの際にどういうメンバーが以前向かったか書いてあるので、内容と以前のメンバー、受付回数で危険度を各自で自己判断して依頼を達成してくれたら問題ないらしい。


 有名なメンバーが期日を過ぎても貼り紙に書いてあったら、討伐に時間がかかってるだけだろうと後回しにされることもしばしばあるのが問題なのよねぇ、とちょっと愚痴をこぼしてた。

 実際疑問点があればお姉さんが愚痴と言う名の説明で話してくれるので助かるのだが、そのたびに後ろの冒険者たちであろう人達がびくっとしてる音が聞こえるので、早く解決してこいと催促の意味もあるのかもしれない。


 私的に驚いたのは―


「ほかの街の組合に行ったら再登録ですか?」

「そうなりますね。基本的には登録された場所を活動拠点として動いてもらって、どうしてもほかの組合と協力体制が必要な場合は冒険者の方へ正式な書類をお渡しして、それを持って行ってもらう形になります」


 なにゆえ?と思ったら、これまた偽物問題が起きるのでとのこと。別の街で勝手に名を騙られて問題を起こされる人達や嫌がらせを受ける人があった時期を問題視して、とのこと。

 組合って犯罪歴ある人とか登録できるの?と疑問に思ったけど、普通に登録できるらしい。ただその街で問題を起こしたら指名手配になるが、別の街で冒険者になることもあるらしく。そこまで大規模になってきたら全冒険者組合が常時討伐依頼が出るとか、その時の報奨金の高さがとんでもないことになるため冒険者は大陸の端まで追いかけるらしい。


 わざと冤罪起こして一人をトカゲのしっぽ切りみたいにすることとかあるのかなぁと思ったがこれももちろん解決済みとのことで、かつてのパーティ履歴を漁られたり、少しでも怪しいものは犯人が捕まるまで監禁…


 なんというか、やることなすこと問題が起こった時は組合は脳筋になるっぽい…大丈夫かこの組織。


「とにかく!犯罪を起こしたら徹底的に!地獄の底まで追い詰めますので!気を付けてくださいね!」

「はい…」

「というわけで、それでも組合に登録なさいますか?」


 これは脅しの意味も込めているんだろうなぁ。というか毎回この説明してるのかこの受付嬢…


「はい!私は冒険者になります。それにパーティは組む予定ないですし監禁とかもへっちゃらです!」

「へっちゃら?ですか。まぁ、分かりました。それではこちらの用紙に名前と年齢をお願いできますか?」

「はーい…はい?」


 私はリアラ、年齢不明、言葉が通じると思ったら文字が分からないの


「あ!代筆必要でしょうか!代筆は銅貨10枚になります!」


 お金かからないって聞いていたんですが…


「えと代筆お願いできますか…?あと年齢なんですけど…」

「はい!ありがとうございます。年齢は犯罪者になられた方の寿命の目安になりますので必ず書いてもらうようにされてますね」


 脳筋すぎるだろう。寿命すぎても探して遺骨を指名手配するくらいなのだろうけど…


「えっと、お姉さん、私いくつに見えますか?」

「あら、別に年齢制限はないですよ?生まれた赤子も本人の意思があれば登録できますからね!」

「あー、そうなんですね!17!17歳です!」

「意外と…いえ何でもありません、それよりもお名前の方は?」


 意外と老けてたのかそれとも幼かったのか、もう少し若くすれば良かったかな?実年齢分からないんだよね、これ以上成長するのかも分からないし


「リアラです!」

「素敵なお名前ですね!銅貨はこちらへお願いしますね!」


 名乗るのと同時に器を差し出してきたあたり、さっさと払ってほしかったのだろう。10枚支払うと代筆をサラッと書いて終わった。


「それでは組合所属確認しました。以降はあちらの掲示板で貼り紙をご確認くださいね」

「あ、文字なんですけど…」

「安心してください、組合登録用紙が特別なだけであちらは読めると思いますよ」


 んー?どういうことだろう?

 とりあえず掲示板を見てみると普通に見える。見える?なぜ?


「嬢ちゃん、あの紙どの国の文字でも良かったんだぜ?」


 近くのテーブルにいた臭い人がなんかとんでもないこと言ってきた。


「え、でも私読めなかったですよ?」

「そりゃ組合が用意した文字だからな、大抵の人は銅貨10枚支払う仕組みだよ」

「反則じゃないですか!」


 受付の方を見ると両手を合わせて申し訳なさそうにしてる姿が見える


「なんでまたそんなことしてるんです?慈善団体って聞いてたんですけど組合は」

「それだ」

「ん?」

「慈善団体だから受付や組合に所属してる人らは常に金欠で募金活動もしてる」


 もはや意味が分からない、会計できる人いないのか組合


「それで騙すっていうのは…」

「まぁ。依頼一つこなしたら返ってくるから問題はねぇよ、安心しな」

「えっと…」

「組合に所属だけして依頼はしない。そんな奴が溢れてもそれはそれで困るわけよ、だから最低一回は依頼を受けてくださいねって言うのが組合の方針になったわけさ」


 あー。だから受付嬢の説明はあんなに丁寧だったのかとある意味納得、金欠の人もそこまで金欠になるほどなら体力的に依頼達成できるとも思えないだろうし、身の程をわきまえずに高難易度の高い報酬を受ける死ぬ予備軍に説明しても、無駄にならないようにせめて銅貨10枚…


 もうそんなに困ってるならギルドと同じように審査する方式にすればいいのにと思うが、人手不足だからそんな時間も設けれなくて…


 本当に冒険者大丈夫だろうか?主に組織、組合の方が心配だ。


 しかしこの臭い人もまたお人好しなのかな?って思う、わざわざ私に説明してくれるなんて


「なんか納得しました。教えてくれてありがとうございます」

「おう!口呼吸しなくなったら飲もうぜ!」


 その皮鎧を買い替える時が来たら考えてあげようと思いつつ、改めて掲示板を見ると何とも言えない


『北門側の森ホーンラビット1匹につき銅貨5枚※状態によって価値は変わります。』

『西門側街道盗賊がいるかも?報奨金出るかも?※生首を持ってきて価値は変わります。』

『西門側国境付近に幻の花を採取お願いします1輪につき金貨5枚』


 幻の花の名前が無い時点でもう駄目なのでは、珍しい花を持ってきて違いますと言われたら立ち直れない


『南門側の西か東に恐らく猪魔獣。オークに変異していた場合二倍の報酬銀貨40枚』

『東門側を抜けて南の森。魔物討伐、1匹につき銀貨20枚』


 もはや討伐の指定すらないではないか


 そして端の方にある紙に注意書きが記されている、見えづらい位置に…


『常設魔物討伐依頼※他の依頼とは無関係にゴブリンは常に1体銅貨1枚上位種を討伐した場合銀貨10枚』


 ゴブリンてここら辺いないんだなぁと思ったら別枠、しかも内容的に命を賭して銅貨1枚な上にたまに出てくる上位種に殺されるかもしれない危険もある以上好んで討伐にというより、発見次第討伐してくださいねって言うことなのだろう。


 私は気になってテーブルの皮鎧の人に「討伐証明はなんです?」と聞いてみれば魔核結石とのこと

 魔石は討伐とは別にサイズによって最低銅貨1枚~以上の金額になるとか、てことはゴブリンは最低でも銅貨2枚分なのか…それでも人語を介するゴブリンとそこまで死闘はやりたくないものだ…


 もはや選択肢も無いのでホーンラビットの紙を受付嬢の人に持っていくと喜ばれた。


「みなさんぐちゃぐちゃにしてくるんで、できる限りでいいんですけど綺麗に持って帰ってくださいね!」


 そういえばディズさんが言ってたなぁ、状態気にして戦闘する馬鹿はいないとか…でもこれくらいしかないし…

 ちなみに依頼書に私の名前を書いた後、また掲示板に張っていたのである意味常設依頼なのかもしれない


 さて、それでも銅貨はたかだか5枚である。しかも値段は下がるかもしれない…血抜きはするとしても数をこなさなければいけないから銀貨を目指すなら最低20匹毎日納品…


 組合に来るまでに寄った雑貨屋とかを見て、そういえばお店で文字に困ってなかったんだから気にせず書いちゃえばよかったのかぁと、まぁ依頼達成すれば上乗せ返金されるらしいし実質無料…!

 だがホーンラビット討伐の先行投資のために大きい袋を買わなければ!さらば銅貨3枚!


 ラビット一匹分の買い物をしたあと、準備は良いし、明日の朝にでも向かえばいいかなと思い宿屋巡りをしていく


「一泊10枚でーす」「一泊20枚です」「一泊15枚です」「一泊50枚ですよー」


 うん。ラビット換算で二匹~十匹~…野宿でいいんじゃないか?いや待て、せめて井戸を使いたい!水浴びしたい!


 最初の銅貨10枚のお店に向かって店員さんが客が来てくれたことに喜んでくれたのか笑顔で


「食費は別ですがよろしいでしょうか?」

「裏の井戸だけ使わせてください」

「あぁ…1枚!銅貨1枚で一日自由に使ってください!あ、でも無駄使いしたら駄目ですよ?」


 この世界どこも金欠すぎないだろうか?というか一泊銅貨50枚のところはたしかディズさん達が泊ってるところだよね。商人はそんなに金回りが良いのだろうか?


 誰もいないことを確認しつつ水浴びを終わらせ、北門に向かう。


 すると私たちがこの街に入るときは南門から入ったわけだけど、北門には見張りの兵士さんが下にもいた、危険度?なのかな組合の依頼書では南門側に猪の魔獣がいるかもって情報だったと思うけど


「あ、お嬢さん、一人かな?ご家族の方は…?」

「え。冒険者です」


 少しの間気まずい空気が流れる。これ多分組合の赤子でも本人の意思があれば入れるというシステムのせいで見張りの人がなんて言えばいいのか固まってるのではないだろうか


「あ、17歳です」

「そ、そうでしたか。すいませんお若く見えて!どうぞ!」


 それでも疑惑の目はあるが気にしない…

 さて、あとはゆっくり過ごしますかねと近くに座ると見張りの人がおろおろして


「お腹とか痛くなったんでしょうか…?」

「あ、ここで夜を過ごすのでお構いなく」

「え?」

「え?」


 さすがに門の目の前だとあれか、問題だったかな。


「もう少し端に寄った方がいいですか?」

「いや、むしろどうして中に入らないんですか?」

「どこで寝ても変わらなそうだから外の方が静かかなって…」


 しばしの沈黙の後。門は暗くなると閉じるので、その時挟まれないように注意してくださいねと言われた「絶対ですよ!危ないですからね!」と何度も


 大袋を少しでもクッションになるように下に敷いてピクニックのようにくつろいでいたら、本気か?こいつ?と何度も見られてる気がするが気にしない、金欠なんだ私は。

 それよりも目で見えるくらいの距離に見える森。確か北の門側にある森と指定されてただけで、そこから西側か東側という指定はなかったので恐らくどちらでも大丈夫なはずなのだけど、目で見える距離だと西の方が近いかなぁ?って感じである。誤差だとは思うが


 そのため明日は北西の森に行こうと思うのだけど東の方にも明後日は行ってみようと思う。どちらの方に多く生息してるか分からないため試してみないとと計画立てていると「閉めますからねー」と上の方から聞こえたので一応注意して離れたけど、そんな勢いよく閉じるわけではないみたいで少しずつ閉門されていった。


 この世界に来た時のことを思い出す。それは月がとても綺麗で幾つもあるから、空を見上げればそこには一つの月に雲がかかっても、ほかの月が光照らす前世とは明らかに違う月。


 しばらく休んで、気合を入れて森に向かう。


 油断はしてない、森の浅いところから様子を見て、明るくなる頃に深く入れば大丈夫、睡眠不足も私はショートスリーパーなのかそんなに必要としてないので眠気を感じない。


 今まで、ディズさんゲンボウさんがいたから無茶はしてこなかったけど、大丈夫。


「私、体力だけはあるからね!」


 そう言い、森に向かう。


 ホーンラビットを乱獲するため今日一日を活用してどれだけ捕まえてお金になるか楽しみなのと同時にもし手に入らなかったらそのときはまた外で野宿しつつ夜中に森に行く羽目になるだろう。

 とはいえ実際はそうなる気がする。ホーンラビットは、前世的に言えばうさぎは夜行性でもあるとか聞いたことがあるからどれほど生息してるのか、常設依頼のように扱ってたからそれだけ数はいると思うがそうではなかったら二日で様子見て、今の武器ではゴブリンと戦うにはあまり自信は無いし。


 やっぱアルバイト探したりも必要かなぁ、組合の受付とかは儲かりそうにないし


 色々考えつつ森に近づいて、じーっと眺めて見る。


 まぁ、さすがに外から見える位置にはいないか、少しは入らないといけないかな?


 これも、冒険かな。


「冒険者リアラ、初クエスト行きます!」

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