第14話 微睡み
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ミウミは朝が弱い。
基本的に、何もない日は俺の方が早く眠るというのもあるが、たとえ同じ時間に寝たとしても先に起きるのは俺のほうだ。
んで、しばらくは起きてこない。
今日の場合はどうやら俺が作業中に寝落ちしてしまったらしい。
覚えはないが、椅子にブランケットがかけてある。
ミウミがそれを俺にかけて、起きた俺が椅子に移してからベッドに入ったのだろう。
手間と心配をかけさせてしまった。
起きたら、ミウミを起こす前にある程度色々と家事を済ませる。
基本的に料理以外の家事は俺の仕事だ。
料理だけは、ミウミが全て担当することになっている。
別に、俺が料理を作れないわけではないが。
「ミウミ、起きてるか?」
で、ある程度の時間になってからミウミを起こしにいく。
今の時間は8時、そろそろ朝の準備を始めないとまずい時間だ。
とはいえミウミはまだ寝たまま。
起きているかと聞きながら部屋に入るが、今まで一度として起きていたことがない。
絶対にこの時間まで快眠できるのは、ミウミのすごいところの一つだと思う。
「ミウミ、朝だぞ」
「んー」
そして、俺が起こせば若干だが反応してくれる。
しばらくミウミの名を読んでいると、ゆっくりと寝ぼけたまま起き上がった。
基本的に寝る時、ミウミはネグリジェを着て寝る。
スケスケのネグリジェの奥に彼女の肢体が見えるが、特に気にすることはない。
今更だしな。
「ぁぉー」
「おはよう、ミウミ」
寝ぼけ眼で、なんとかおはようというミウミに言葉を返しつつ、俺はミウミが脱ぎ散らかした服を回収する。
基本的に俺がいるというのもあるが、いなくたってミウミは結構部屋を散らかすタイプだ。
故郷にいた頃のミウミの自室は、それはもう酷いことになっていて定期的に俺が掃除していたからな。
んで、服を回収する間ミウミは座ったまま寝ている。
それでも眠ったままでいるよりは意識が覚醒に向いていくので、とりあえず時間を置いてミウミが起きるのを待つのだ。
やがて、俺が部屋を綺麗にする頃には、ミウミもなんとか自分が起きているということを自覚できるようになる。
目はしょぼしょぼだし、そのまま横になるとまた寝てしまうけれど。
そこまで来れば、なんとか活動が可能だ。
「ほら、着替え」
「ん」
そう言って、俺が着替えを用意するとミウミが手を伸ばしてくる。
今日は甘えたい気分のようだ、俺に着替えさせろとせがんでいる。
それを可愛いなぁ、と思いつつも下手に邪念を働かせると色々大変なことになるので、勤めて冷静に答える。
ちなみに着替え自体は昨日のうちにミウミが選んでおいたものを渡しているだけだ。
流石に、女子の身だしなみとか俺にはわからんからな。
「ほら、手をあげて」
「んー」
寝ぼけ眼のミウミが、俺のいう通り手を上げる。
ネグリジェを脱がせるのだ。
結果、その奥にあった下着が外へ晒される。
可愛らしいフリルのブラとショーツ、だが本人的には普段使いって感じだな。
後でこのことで睨まれないといいけど。
なんて思考でミウミの胸とかから気を逸らしつつ、ミウミが服を着るのを助ける。
流石にここまで来れば、ほとんど俺は服を渡すだけでいいのだが。
気分的なものが大きいだろう。
俺に甘えているというのが重要なのだ。
「できたぞ」
「あいがと」
最低限の会話ができるようになってきた。
着替えも済ませれば、見た目だけならSランク冒険者“灼華“のミウミそのものだ。
それでも目はだいぶ寝ているから、流石に他のやつには見せれないけど。
こんなミウミを知っているのは、俺と……あと、たまにお泊まり会をしている黒金だけだな。
そのまま、洗面所で身支度を整えて、顔を洗えば
「おはよう、リク! いい天気ね!」
「ああ、おはよう。調子はどうだ?」
「? バッチリよ? どうかしたの?」
「ならいいんだ、昨日はブランケットありがとな」
いつものミウミの誕生だ。
なお、寝起きのことを覚えているかは半々である。
今日はどうやら覚えていないようだ。
下着がどう考えても俺に見せることを想定していないものだったので、着替えを手伝ってもらうつもりはなかったはず。
覚えていたらやばかったな。
まぁ、それはそれでという気持ちもなくはないけどな?
「よーし、張り切って朝食作るわよ」
「おー、今日は何を作るんだ?」
「ヤポネ風の和定食よ! いい感じのヤポネミソが手に入ったの」
「そりゃ楽しみだ」
なんて話をしつつ、俺は魔道式洗濯機で洗い物を洗っていく。
最新式の洗濯機はとても高かったのだ。
その分、洗濯が非常に楽になって助かっているが。
その間にミウミが料理を作り、出来上がったところで食べる。
家事はミウミが料理全般、俺がそれ以外を担当している。
ミウミが掃除とかが苦手というのもあるが、最大の理由はミウミの作る料理は絶品だからだ。
レストラン顔負けの料理を作ってくれるからこそ、それ以外の部分を俺がやろうと思ったわけ。
そんなふうに、朝は穏やかな時間が流れていく。
「できたわよー」
「わかった、すぐいく」
さて、今日は何が起こることやら。
と思いつつ、まずはミウミの手料理に舌鼓を打つのだった。
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