幕間④ 澄玲ちゃんの恋心
夜、部屋を抜け出し外に出て、ベンチに座る麗奈さんを木の陰から見ています。麗奈さんに言われて来たけど、ちょっと悪いことをしてるみたい。
……これから、麗奈さんと学、そして私の運命が決まります。
~~~~~
あそこで告白、受けちゃえばよかったかな。
何度もそう思った。
協力してくれた麗奈さんを出し抜いて、落ち込んだ学の感情につけ込んでも、強引に彼を奪うべきだったのかな。
この先、私がどれだけ努力を重ねても、学を超えられる保証はないし、もし超えたとして、その先で学が私を選んでくれる保証もない。そもそも、学の気持ちが変わらないとも限らない。
でも、気がついたら言ってたんだ。
――今はだめ――
そうはっきりと。
そのあと、私は麗奈さんに謝罪した。告白は保留したとはいえ、学との距離を縮めない約束で勉強を教えてもらったのに、学にはっきりと好きと言ってしまったから。
けれど麗菜さんは怒ることもなく、一言。
「そう、なのね」
その目には涙をためていた。
「……でも、私は学に勝つまで、付き合うつもりはありません」
半分は本音で、半分は……虚勢だ。
本当は今すぐにでも学を手に入れたい。彼の慰めになりたくないけど、それ以上に、彼を誰にも取られたくない。
「いいえ、その必要はないわ」
「え?」
麗奈さんはその潤んだ目を真っすぐに向け、はっきりと告げた。
「ただの幼馴染である私に、2人の気持ちを止める権利はない。私への義理を感じる必要もない。あなたがやりたいようになさい」
「麗奈さん……」
「でも、最後にお願い、聞いてもらえないかしら?」
「はい」
すると、麗奈さんが私に深々と頭を下げた。
「もう一度だけ、チャンスが欲しいの。がっくんの気持ちを聴くチャンスを。そうでないと私、前に進めない……。この通りよ」
「そんな! 顔を上げてください。私は、麗奈さんの気持ちを全力で尊重しますから」
「……ありがとう」
麗奈さんが涙を袖で拭いた。私に許可を取る必要なんてないのに、真面目な人だな。少し、学にも似てる。
「あなたと初めて会った時、薄々感じていた。ああ、がっくんは、福地学はきっと、こういう女の子が好きなんだろうなって。その上で、私はあなたに貸しを作ろうとした。性格悪いでしょ?」
「そんなことないです! 麗奈さんは、最高にかっこよくて……優しいです」
麗奈さんだけじゃない。学の周りにいる人は、みんなそれぞれかっこよくて、優しい。きっと、福地学という人間の生き方が、そういう仲間を引き寄せるんだと思う。
真っ直ぐで、努力家で、けれど脆くて。自分の中の悪意に敏感で、だからこそ、他者を傷つける前に自分を傷つけてしまう。そんな優しい人。
「ありがとう、本当に。素敵なお友だちに出会えて、私は嬉しいわ」
「そんな……それはこっちのセリフです。麗奈さんに出会えて、私も少しだけ成長できた気がします。ありがとうございます」
後日、もなぴちゃんにお泊りがしたいと言われて、麗奈さんにもそれを伝えたところ、良い宿泊場所を用意してくれた
麗奈さんはその日の夜、学の気持ちを聴くと言っていた。
私は麗奈さんの気持ちを応援しながらも、学は麗奈さんを選ぶのではないかという不安もあって。
破廉恥だなと思いながらも、プールで学に少し大人な水着を見せてみたり、ささやかな抵抗をした。でも、麗奈さんが一番セクシーだったからあんまり意味がなかったけどね。
やっぱり、学の周りで一番性格が悪いのは私だと思う。学に釣り合うような取柄もない。
でもいいの。それら全部をひっくるめて、海原涼音だから。
~~~~~
「あ、がっくんやっほー」
「おう、麗奈」
麗菜さんのところに学が到着した。
彼はどんな答えを出すんだろう。
私は……彼の隣に立てるのかな。
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