第26話 水着回。これ以上何を言うことがあろうか
「学ー起きてー」
「あさだよ~、学く~ん」
「がっくんお~きて」
「起きなさい、福地くん」
「に~におきて~」
――なんだなんだ? 四方八方から俺を起こす声が聞こえるぞ……ああ夢か。俺、五つ子の知り合いとかいないもんな。すや~。
ビシャッ
顔面に水をかけられ、俺は跳ね起きた。気がつけば、水着の女の子たちに包囲され、水鉄砲で狙い撃ちにされている。
まず、オレンジ色のセパレート型の水着の村雨沙羅。胸についたリボンが可愛らしいが、それ以上に引き締まった身体に目が行く。高校生とは思えない大人な魅力が、肌を出したことでさらに強化された感じだ。
次に、ピンクのワンピース型の水着の松江萌菜。彼女は……うん、もなぴって感じだ。プニキュラみたいで可愛いです。
そして、布面積の少ない黒のビキニを着た澄川麗奈。セクシー、という表現がしっくりくる。思春期の男子は目のやり場に困りすぎて失明してもおかしくない。俺は幼馴染なので何とか耐えきれたが。
最後に我が妹、福地芽玖は学校指定のいわゆるスク水である。普通に中学生だ。以上。
そんな多種多様な水着の少女たちに囲まれた福地学を、ああ羨ましいなと思った者も多くいるだろう。たしかに客観的に見てこれは理想のシチュエーションだ。
が、それは彼女たちが大きな水鉄砲で武装し、対してこちらは防水効果を持たない服で丸腰、という状況で無ければの話である。
「な、なんだよ。みんな・・・…」
「誰が水鉄砲で学くんを起こせるか勝負してたんだよ~」
「にいに、覚悟してね」
「がっくんごめ~ん」
「ちょ、俺水着じゃないんだけど」
「それ~」
俺の服に水が染みていく。くそ、味方が誰もいない。そうだ! 田中は……なんでプライベートなプールでバタフライの練習してるんだよ。フォームがきれいだな、おい。
「学ー、行くよー」
涼音もこちらに接近すると、楽しそうに水鉄砲を放った。涼音……そんな攻めた水着を選ぶんだ。肩が出るタイプのセパレート型の水着で、正直直視できない。涼音の半そで短パン程度の露出にどきどきしていた俺には、ダイレクトに目に入ってくるおへそや肩や太ももは刺激が強すぎる……
「……もしかして、涼音ちゃんの水着に見惚れちゃった?」
「なっ?」
俺の背後から松江が声をかけてくる。見惚れたと言いますか……そもそも直視できないと言いますか……刺激が強すぎると言いますか……
と、動揺するおれを見て、松江はニヤリと笑った。
「へ~」
「う、うるさい」
「わ~、学くんが怒った~」
「おい、走ったら危な――」
プールサイドは滑りやすいので走ってはいけない。それを守る重要性を、俺は再認識した。松江が躓き身体が宙に浮く。やばい、と思った次の瞬間。
その身体は、たまたまそこにいた、村雨世羅に支えられていた。
「大丈夫ですか?」
「う、うん。……あ、ありがとう」
松江が顔を真っ赤だ。高校生にもなってはしゃぎ過ぎたことが恥ずかしいのか、あるいは新たな恋、というのはさすがにないか。イケメンとはいえ、中学生と高校生だし。……ないよね?
「ねえ、学」
「わっ、す、涼音」
武装は解除した涼音が、手を後ろで組んで俺に話しかけてきた。すなわち、水着姿の海原涼音を隔てるものは何もない。肌がきれい……
「……私の水着、どうかな」
「いい、と、思うよ」
近い近い近い。ふともも、お腹、腋、肩。涼音の初めて見るところばかりで、これ以上は俺の心臓が――
「可愛い……かな?」
座っている俺に目線を合わせるように腰を曲げる。待って、その体制は、お、お胸が……もう、だめ。
「……可愛いです」
「よろしい」
涼音はふふーんとドヤ顔をすると、みんなのところへ戻っていった。
今夜は寝れそうにない。
―――――――――――――
皆さんはどんな水着が好きですか……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます