幕間③ 女の子たちが水着を買いに行くだけのお話

「いろいろな水着があるのね……。どれがいいのかしら……。機能性は……」

「涼音ちゃん、これとかどうかな? 可愛いし、絶対似合うと思う!」

「おお、可愛い! けど……」


 サイデリアの後、そのまま女の子3人で水着を買いに来ています。もなぴちゃんが見つけてくれたのはオフショルダー、つまり肩が出るビキニ型の水着。たしかに可愛いけど……わきとかお腹とか見られるのはちょっと恥ずかしいな。布も少ないし……


「ごめんね、もなぴちゃん。私にはまだ早いかも」

「もー、もったいないよ。涼音ちゃんは可愛いくてスタイルいいんだから、どんどん挑戦していかないと」

「うーん、でも……」

「それを着ている涼音ちゃんを見たら、学くんもドキドキして惚れ直しちゃうかもよ?」


 学に、見られる……? 私のお腹とか、腋とか、太ももが……。うう、想像したらもっと恥ずかしくなってきたよお。身体が熱い。

 でも、学が私を見てくれるのは嬉しい……かもしれない。


「……ちょっとあててみる」

「うん!」


 鏡の前に立って、水着を身体の前に置いてみる。思ったより似合ってる、かも? 少し雰囲気も大人っぽくなるし。でも、お腹を出す水着は初めてだし、やっぱりまだ恥ずかしい……。どうしよう。


「あれ、沙羅ちゃんはもう決めたの?」

「えっと、ええ。一応ね」

「お、見せて見せて~」

「これよ」


 村雨さんが見せたのは、上下が繋がった濃いグレーの水着だ。少し地味な気もするけれど、村雨さんくらい美人だったら、着ているものとかあんまり関係ないんだろうな。……少しだけ羨ましい。


「ねえ、沙羅ちゃん」

「なにかしら、松江さん?」

「どうしてそんなにもったいないことするの!!!」


 もなぴちゃんが頬を膨らませて村雨さんに訴えてる。どうしたんだろう。


「もなぴも本当はいろんな可愛い水着を選びたいのに、ここが寂しいから着れないの! 着たくても着れない人もいるんだよ! 沙羅ちゃんは綺麗だし、なんでも似合うじゃん。もっと可愛いの選んでよ!!!」


 そっか。もなぴちゃんは可愛いものが大好きで、友だちのことも大好きだから、私の水着も一生懸命選んでくれたんだ。それを、私にはまだ早いなんて曖昧な理由で断るのは、似合うと思ってくれたもなぴちゃんにも、それに私自身にも失礼だよね。


「ごめんなさい、松江さん。私そういうものに疎くて、正直、考えなしに決めてしまったわ」

「……うん」

「だから、もしよかったら、私の水着を代わりに選んでもらえないかしら?」

「え、いいの?」


 しょんぼりした顔から一転、もなぴちゃんは目をキラキラさせて喜んでいる。こういうところ、本当に可愛いなあ。


「じゃあこれにしよ! 沙羅ちゃん」

「ありがとう。ちょっとあててみるわね」


 もなぴちゃんが持ってきたのは、オレンジ色のリボンが付いたビキニ型の水着。私に選んでくれた水着以上に、セクシーで大人な感じ。ただでさえ美人な村雨さんだもん、これを着たら男の子はみんな釘付けなんだろうな。私でさえドキドキしちゃうし。学もきっと……ってだめだめ。私だって、私の魅力があるもん。


「……サイズは大丈夫そうね。じゃあこれにするわ。ありがとう松江さん」

「どういたしまして~」


 満足げな顔のもなぴちゃん。よし、私も決めた。


「私もこれにするね、もなぴちゃん!」

「やった~。嬉しい!」

「選んでくれてありがとう。もなぴちゃんの水着もすっごくかわいいよ」

「えへへ。ありがと」


 もなぴちゃんが籠に入れているのは、ピンクのフリルが付いたワンピース型の水着。プニキュラみたいで、可愛いもなぴちゃんにぴったりだと思う。

 すると、もなぴちゃんは私の耳元で囁いた。


「……その水着の涼音ちゃん、可愛すぎて学くん直視できないかもね」

「⁉」


 身体がまた熱くなっていく。

 可愛いかな、私。


 でも……学を少しでもドキッとさせられたら、嬉しいな。


―――――――――――――

最近幕間が多いことは自覚しつつ、水着回の前には水着を買いに行く回が絶対に必要なので(使命感)。……次回は本編進みます。

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