第20話 爽やかなタイプのイケメンって勉強もできるイメージがある

 松江との楽しい百円ショッピングを終え、教室に帰ってきた。村雨と涼音は、画用紙に旗のデザインをいくつか描いてる。


「はい、これ差し入れ」

「……これはなに?」


 【悲報】村雨さん、おいしい棒知らなかった。


「ふふふ。学くん、もなぴちゃん、ありがとう。私は明太子味にしようかな」


 さすが涼音、お目が高い。やっぱ王道 is Best だよな。


「そういえば、さっき澄川さんから連絡来てたわよ」

「おお、麗奈から……ん? なんでお前が連絡先知ってるんだよ」

「一緒にサイデリア行った日に交換したのよ。あなたが全然連絡つかないから、伝言役になってくれってすごく不服そうに。あなたも連絡くらいちゃんと返したら?」

「それは……すまなんだ」


 一応返してるんだけどなあ。3日後くらいに。だって毎日すごい送られてくるんだもん。こわいじゃん。


「それで、なんて?」


 村雨がスマホの画面を俺に見せた。


「『来週の土曜の愛北模試、私と勝負なさい!』ですって。」

「愛北模試? それって愛北生以外も受けられるのか?」

「受験料4000円を納めれば誰でも受けられるらしいわよ」

「へえ。知らなかったな」


 元愛北生とはいえ、高等部のことはあまりわからない。


「……でも愛北にお金入れるの、なんか嫌だな。村雨は受けるのか?」

「ええ。模試は初めてだけど」

「模試は初めてって……まじかよ」


 たしかに模試の順位表で村雨の名前を見たことはない。けど、ここまで優秀なやつが模試を受けないのは、なんかもったいない気もするな。順位高いと結構自慢できるのに。


「それに海原さんも受けるそうよ」

「そうなの?」

「うん! 学、次は負けないよ」

「お、おう」


 なんか俺が受けること確定の流れになってるけど。愛北模試ってことは愛北学園の生徒と勝負になるわけで……。せっかくその環境から逃がれたのに、という気持ちが少なからずある。


「なによ、あんま乗り気じゃなさそうね」

「そういうわけではないけど。うーん」

「お、何の話してんの?」


 爽やかイケメンの田中クンが、サッカー部のユニフォームのまま教室に入ってきた。なんか制服の時よりイケメン度が増してる気がする。不快だ。帰れ。


「優斗くんじゃん。やっほー。手伝いに来てくれたの?」


 松江がいち早く反応する。こいつ、ほんと誰でも名前で呼うよな。コミュ力の最上位に位置する存在にのみ許される技術だ。


「ああ。部活早めに終わったから顔出したんだけど。なんか盛り上がってる?」

「……模試の話をしていただけよ」


 村雨さんもあまりこういったノリの人間は好きではないらしい。顔がいかにも嫌そうだ。


「もしかして、愛北模試?」

「田中、知っているのか?」

「ああ、上位の大学ねらってる先輩は、けっこう受けてるみたいだし。俺も昨日申し込んだぜ」

「まじ。お前勉強得意なのか?」

「委員長や村雨ほどではないけどそれなりにな。一応こないだの定期テスト、うちのクラスの三位は俺だぜ」

「まじかよ……」


 こいつイケメンで運動できるコミュ力強者であるだけでなく、勉強までできるやつなのかよ。なんでなの? 顔がいいと勉強できるんですか? いや、逆に考えろ。顔も良くないし誰も褒めてくれないのに頑張ってる俺が偉いんだ。そうだ、そうに決まってる。そうでないと困る。


「委員長も受けるんだろ?」

「受けないらしいわよ。レベルの高い集団と競うのが怖いって」

「そうなの、学?」

「学くんの弱虫~。まあ、もなぴは受けないけど」


 ううう。みんなが寄ってたかって俺をいじめるよお。


「……受けるよ、受けりゃいいんだろ!」


 周りの空気に流され、俺は再び愛北の人間と争うことになってしまった。くう、こんなはずじゃ。


「お前も大変なんだな」


 田中に同情的な目を向けられる。イケメンの憐れみつらい。

 まあでも、そこに村雨との戦いがあるわけで。倒すチャンスがあるのに、逃げるわけにはいかないか。

 それに、村雨は模試の初陣だ。意外とあっさり勝てるかもしれない。元々愛北にいたわけだし。


 だが、この時の俺は知らなかった。

 本気を出した村雨沙羅が、いかに遠い存在であるかを……


―――――――――――――

 いつも読んでいただき、ありがとうございます!

 PVも1500を超え、本当にうれしい限りです。


 さて、ここまで毎日投稿を続けてきたのですが、次回の更新は少し空いてしまいそうです。申し訳ありません。なるべく早く更新できるよう頑張ります!


 学くんのトップに向けた戦いや恋愛周りは、ここから大きく動いていきます。

 おもしろい!続きが気になる!と少しでも思っていただけましたら、☆や♡など頂けると、とてもとても励みになりますので、是非よろしくお願い致しますm(__)m


(近日新作も投稿予定ですので、ユーザーのフォローも是非……!)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る