第6話

ここからは本当に普通に日々を送り、走馬灯が明けるのを待っていた。

そしてそんな中でも結構、あれはなんだったのだろうか。という内容があるので暫くはそれらの思い出に付き合って頂きたい。

突然だが私は恋をしていた。というよりは恋をしているのだと、勘違いをしていた。以前説明を挟ませて貰ったと思うが、当時リハビリは3つ、"運動、言葉、生活"と別れていた。生活のリハビリを担当してくれていたのは"久本"と呼ばれる男性の、同世代、同じ年齢の方だった。

今思うと申し訳ないのだが私は普通に名前を呼び捨てていた。何故ならそれがしっくり来たし、他の人に比べて凄く早く覚えられたのだ。私は元々、人の顔や名前を覚えるのは得意では無い。大体新しいクラスの人は顔が同じすぎて1クラス5人なのでは無いか?とすら思ったことがある。

「久本。」

普通は以前からの関わりがあるなら今更確認しないのだが、私は走馬灯だと思い込む程以前の記憶というか事故して入院したという記憶がなかったため、ある日突然名前を聞き出す変な人だったのだ。

さて、ここで久本について振り返ってみようと思う。

呼び捨てがしっくり来るほど違和感なく名前を覚えた。ここから私が導き出した答え。それは、「現実での私はこの久本が好きなのではないか。」という現実での私という存在自体ただの勘違いとなった今思うと有り得ない答えだった。

しかし私はこの久本を好きな相手と勘違いし、(全然趣味じゃないけどな〜)と考えていた。なら好きじゃねえよ。

なんなら今思えば私は当時付き合っていた異性がいた。絶対違うだろ。と、今なら思うが、自分は走馬灯の中にいる。と思っていたのだ。勘違いくらいするわなと思って欲しい。

なんならその久本には彼女がいた。そして私はいるはずのない現実の私を励ましていた。

(彼女いるってさ!大丈夫かな現実の私...落ち込むなよー!全然好みじゃ無いけど好きなら告白してもええからな!)

落ち込むわけが無い。

本当になんだったのだろうか。あの心配や励まし。

だが私の勘違い恋路も4ヶ月続いたのだった。

この後も久本は担当の人だったこともあり、4ヶ月毎日お世話になった。

しかし言っておこう。私は久本より、別の担当であまり会えなかったが、谷脇くんが好きだった。既婚者だったけど。しかしパパしてる谷脇くんもいいなと思っていた。

久本への恋路は勘違いだと分かった今、つまり谷脇くんへの恋の方が本当だったのだ。

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