第4話

終わらなかった。

まぁ終わるわけ無いのだが。現実だから。

だがこの時私は、終わらないのかよ!と、思っていた。

そしてどうにか終わるタイミングを見つけなきゃ。と思った。

整理するために説明するが、私はつまり走馬灯を見てると思っていたため、現実は別にあって、この病院でのリハビリ生活は、現実の方でももう1回、つまり合計2回やらなければいけないと思っていた。

終わるタイミングを見つけたいと思ったのも、現実では記憶はないだろうが、早く終わればその分1回で済むと思ったからだ。生粋の面倒くさがりである。

こうして私の大体4ヶ月にわたる走馬灯が始まってしまうのだ。

取り敢えずちょうど年末が近かったこともあって、誕生日が切っ掛けでないとして順調に進めば新年か、病院を移ることを切っ掛けに走馬灯が終わると仮定することにした。

読んでて思っただろう。長すぎ。と。まあ私もそう思った。だから終わると思っていた誕生日の翌日、私はどうにか走馬灯から覚めないかと思い、もう本当に今思うとごめんなさいなのだが、起きた瞬間、気がついた瞬間、死んでもいいか、と思ったのだ。

全然重い話では無いのだが要はこの世界は現実じゃなく、別に現実が存在していると思っていたため、こっちで死んだら現実に行けるだろうと、考えたのだ。

だから誕生日を祝ってもらって、眠りについた。ここで冒頭に戻るのだが、そして起きてしまった。終わらないのかよ!と、思った私は、もうやる気はなかった。夜中にナースコールを押し、全然苦しくないのに苦しいと言って詰め所に入った。時間はまだ2時頃。突然苦しいと言い出した患者にスタッフ達が「どうしようか先生に来てもらう?」と尋ねる。取り敢えず手術とかになったら絶対目覚めるだろうし目覚めなくてもここが走馬灯の世界なのだとしたら、未練は無いし。と思った。

だから先生に来てほしいと伝えた。本当にオイである。

「じゃあ先生来るまでお部屋でいようか。」

私はうん。と、答えつつこれが最後だと思っているので心の中で別れを告げた。

そして部屋に運ばれ先生が来るのを待つ。

ここだけ読むとシリアスな感じだが、つまり、苦しいフリしたとっても健康な奴なのだ。そんな奴が夜の2時に先生が来るのを待って部屋でいる。わけないのだ。まあ寝た。

それはもうぐっすりと。

苦しいとほざいたのがまるで嘘のように、まあ紛う事なき嘘なのだが。

こうして私の走馬灯(違う)が始まったのだ。

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