第3話
続いた。
続いてしまったな。と思った。だからといってどうする訳でもないし、朝食を取りながら叫んでみようかとも考えたが、如何せん思考は普通なのだ。普通に人目が気になるのでやめた。
とりあえず覚めるまでは普通に過ごそうと考えた。幸い1日毎に記憶はあるがリセットされるのだし。今思うと全然されてないけど。
昨日の誕生日ケーキ2切れのうち1つ残しておいた方を食べさせて貰いながら、仕事もしなくていいし、痛みもないし、食べさせて貰えるし案外悪くは無いな。と思っていた。障害を持っている人には申し訳ないけど。とかいって私もそうだけど。
そんな中で運動のリハビリ途中、PTさんが
「身体柔らかいね。何かやってたの?」
と尋ねてきた。私は所謂オタクなので運動は小学生の頃剣道を習っていたぐらいで、あとは関係ありそうなものと言えば、高校生の時に演劇部で柔軟をやっていたのと、レントゲンなどを撮ってもらった時に骨が細いとよく言われたくらいだ。そしてそれを伝えると事故の影響で上手く喋れない事が相まって
「新体操部か!だから柔らかいんだ!」
違う。どこの誰情報?いやそりゃここの私情報でしょうけども。
そして面倒くさいし、夢ならいつか覚めるだろうしでこの瞬間から私は元新体操部になった。とにかく色々と嘘を重ねていく。まるでミルフィーユのように。
そして今日も再び終わってゆく。
すると唐突に、それはもう唐突に、この事故は本当に起こったことなのだと思い立った。
流れ的に急すぎるだろうと思っただろうが、そこなのだ。
本当に急すぎだから、私自身走馬灯の中にいるのだと勘違いをしたのだ。
夢、現実といけば良いものを夢、走馬灯、現実と現実に行く前に無駄なワンクッションを挟んでしまった。
そして走馬灯なのだと思った時は寝たら現実に行ってしまうのだと思い、寝ようと、声をかけられるまでは起きておこうと考えていた。
「やってることは違うけど響きは似てるから好きかもね。」そうしてテレビの前へと連れていかれるまでは。
なるほど、こういうこともあるのか。と自分の嘘を、全然興味無いのだけど。と悔やみつつ取り敢えず試合が終わるまでは見た。
しかしテレビが終わっても、かけられない声に、やはり最後は自分で現実を受け入れ、この一日を終わるのだと言わなければいけないのだろうな。と思い、呼び出しのベルを深く息をつき、しかし直視は出来ず、ああ、走馬灯だったんだなと考えながら、ゆっくり鳴らした。
今思うと何してんねんの一言である。
しかし、この時はきっと、今までで1番。これから先でも多分。
こんな真剣な気持ちは無いだろう。
それぐらい、覚悟を決めて、私はベルを鳴らしたのだ。
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