第5話ジメジメとした梅雨が明けても思考が晴れない

完全に制服が夏服へと切り替わった頃。

ジメジメとした天気に嫌気が指しながら、それでも僕ら男子生徒は楽しみだった。

女子も薄着になっており汗や雨でしっとりと濡れたシャツ越しにブラの形がくっきりと浮かび時々色までも把握できたからである。

そんなことに一喜一憂してないと、このジメジメとした梅雨に耐えられなかったのである。

一学期の期末テストまで一月ほどだった。

そんな季節だった。

莉子は何が何でも一番を取らないといけないため、授業が終わっても自宅で勉強に励むようだった。

「ごめんね。一ヶ月は勉強に集中する。きっと凪はお姉ちゃんのところに行くと思うけど…こればっかりは仕方がない…私は努力をしないと一番になれないから。お姉ちゃんみたいに何でも器用にこなせないんだ…」

帰り際に莉子は僕に懺悔のような言葉を口にして少し俯いていた。

「そんな顔するなよ。今までずっと一番だっただろ?それに誇りを持っていいだろ?もう少し自己評価あげてやれよ。自分が可哀想だぞ」

「そう言ってくれる?じゃあ頑張るっ♡ありがとうねっ♡」

下校路の途中で莉子を励ますと彼女は触れるようなキスをしてくれる。

それに薄く微笑むと彼女の頭に手を置いて一つ頷く。

「頑張ってな」

莉子もその言葉に大きく頷くと僕らは彼女の家の前で別れるのであった。



当然のように僕は莉々に連絡を入れる。

「今日、暇?」

その簡潔な連絡に莉々は直ぐに返事を寄越す。

「暇。だけど…今日はあの日。それでも良ければ来る?」

あの日とは女の子の日であることは明らかだった。

僕と莉々は身体だけの関係ではない。

そう自信満々に言えるかは定かではないが。

少なくとも莉々はそういう行為が出来なくても僕を歓迎してくれるようだった。

「分かった。すぐに向かっても良い?」

「うん。待ってる」

そうして僕は莉子を送り届けた足で莉々の家まで向かう。

移動時間は三十分も無かっただろう。

莉々のマンションに到着すると僕は部屋の中に入れてもらう。

「お腹も痛いし梅雨だから片頭痛もするしで…最悪な状態なの…」

家に訪れると莉々は辛そうな表情でリビングのソファに横になった。

「そっかそっか。僕に出来ること無い?」

「う〜ん。家事してほしいかも。洗濯物が溜まっているしシンクにお弁当箱とかデリバリーの空箱が散乱していると思う。掃除もして欲しい…出来る?」

「分かった。莉々はゆっくりしていてよ。どうにかやってみるから」

「うん。わからないことあったら聞いてね」

「了解」

そうして僕はそこから莉々の家の家事をこなしていくこととなる。

まずは脱衣所に向かうと洗濯機の中に放り込まれていた洋服に洗剤と柔軟剤などを入れて電源を入れる。

そのまま標準でスタートボタンを押すと洗濯は始まった。

キッチンに向かうとゴミが散乱しており、それらを分別してキレイに掃除をする。

掃除機のスイッチを押すと全ての部屋を掃除していく。

結局、洗濯が終わるまで掃除の時間は続いた。

風呂場には換気扇が備わっているためそこに洗濯物を干していく。

ピンチハンガーを使って下着や洋服、タオルなどを干すと家事は概ね終了する。

莉々はリビングのソファでぐっすりと眠っていた。

起こさないように莉々の足元にブランケットを掛けると少し椅子に腰掛けた。

ふぅと息を吐いた辺りで莉々は目を覚ましたようだった。

「ん…っ。よく寝た気がする。はぁ〜あ…」

莉々は大きな欠伸をすると僕の元までやってくる。

「家事は終わった?」

「うん。全部やっておいたよ」

「ありがとう。奉仕してくれた人には奉仕で返さないとねっ♡」

そう言うと莉々は僕の服を一枚ずつ脱がしていった。

されるがままに流れに身を任せていると莉々は記述するのも憚れるような行為を始めていった。

僕の中の命の源が吸い尽くされしゃぶり貪られるような快感を覚えていた。

莉々は僕の全てを食い尽くす程に何度も奉仕という名の行為を続けていく。

何度目かの行為が終了すると僕と莉々はそのままベッドへと向かい横になる。

手を繋いだ状態でお互いの体温を感じていた。

そのまま相手に自分の体温を分け与えるような感覚をお互いが感じていたことだろう。

まるで自分の中にある愛を分け与えているようだと思った。

僕にとって莉々との関係は毒のようなものである。

けれど何処か百薬の長でもあると感じていた。

しかしながら薬も接種しすぎれば毒になる。

僕と莉々の関係はその様なものだと思われた。

それは僕だけが感じていることだろうか。

そんな事を軽く思考しながら眠りについてしまうのであった。



そんな莉々と共に過ごす日々が一ヶ月ほど続いた。

一学期末テストを無事に迎えた僕らはテスト返却の日を迎えていた。

僕はどれも平均点を上回るぐらいの出来栄えだった。

テスト順位上位者が掲示板に張り出されており僕は何となく一番上を眺めていた。

やはりと言うべきか莉子の名前が表示されている。

ふっと軽く微笑むと僕は莉子の元へと急ぐ。

「今回も一位おめでとう。頑張ったんだな」

莉子に労いの言葉を口にして微笑むと彼女は複雑な表情を浮かべた。

「そのせいで…大事なものを失ったような気がする…」

莉子は僕の事を上目遣いで伺うような視線を送ってくる。

「何を失ったんだ?教えてくれ。どうにか取り戻そう」

「え?お姉ちゃんに完全に心が傾いたと思ったんだけど…」

莉子は想像していなかった言葉を投げかけられて困り果てているようだ。

「なんだ。そういうことか。大丈夫だよ。僕らは別れたわけじゃないだろ?」

「そうだけど…まだ私を愛してくれているの?」

「当然」

僕のあっけらかんとした態度に莉子は嬉しそうに薄く微笑んだ。

「今日はデートしようか」

その提案に莉子は嬉しそうに頷いて応えてくれる。

「じゃあ…家来る?」

「あぁ。そうしよ」

帰りのHRが終わると僕らは揃って教室を抜ける。

その足で莉子の家へと向かうと僕らは一ヶ月ぶりに行為へと向かうこととなる。

だがここで僕は少しの違和感を覚えた。

なんというか…。

莉子は相当上手になっている気がした。

「ちょっとまって…何で上手くなってんの?」

強制的に行為を止めると莉子は妖しく微笑んだ。

「うんっ♡勉強の息抜きで色々とこっちの方も勉強したんだっ♡満足してもらえると嬉しいなっ♡」

そうして僕と莉子は以前よりも激しくお互いを求め合う。

質が上がったような獣に近づいたような行為がいつまでも続きそうだった。

だがそれも夜の帳が降りた頃に強制的に終わることになる。

「もっと続けていたいけど…パパとママが帰ってきちゃうから…また今度ねっ♡」

莉子は時間を置いたことにより少しだけ余裕のある態度へと変わっているように思えた。

行為を終えて着替えている中のことだった。

「どうだった?お姉ちゃんより上手だったでしょっ♡?」

前言撤回である。

莉子は余裕のあるお姉さんには程遠い。

まだ姉の影を追いかけている子供のようだった。

「ふっ。そうだな」

そんな嘘ではないが嘘のような言葉を口にして微笑んだ。

「ホントに!?ホント!?」

完全にヤンデレの目をしていた莉子に苦笑すると鞄を手にした。

「じゃあ帰るな」

「この後お姉ちゃんのところ行かないよね?発散しきれていないものを発散しに行かないでしょ?」

「行くわけ無いだろ。じゃあまた明日」

本当に本日は僕も大人しく帰宅する。

帰宅すると風呂に入り自室へと向かうのであった。



そして高校二年生の一学期が終了することとなる。

僕らには待ちわびていた夏休みがやってくる。

騒がしくなる夏はもう目の前までやってきているのであった。



私は少しだけ余裕を覚えた。

どうすれば凪を振り向かせる事が出来るか。

何処となく分かってきたような気がする。

凪は自分よりも大人びた存在を求めているのだろう。

それが余裕のある態度というものなのだと思う。

男も女も余裕がある異性が好きとはありふれた話である。

でも姉と同じタイプの女性になることが得策とは思えない。

私は私になるのだ。

でも…どの様に…。

少しだけ時間を置いたことにより私と凪の関係は一つ先へと進んだようだ。

これからも試行錯誤の日々は続くのだろう。

いつかきっと凪が姉に飽きて私の元へ帰ってくることを願って…。



私は愛という名の毒に犯されていた。

もうどうやったって後戻りできなかった。

火遊び程度の話が本気になる何ていうのはよくある話だけど。

このままいくと私は全力で妹から凪を奪い取ることになる。

妹に恨まれても構わない。

愛してしまった凪を誰にも渡したくない。

などという独占欲のようなものが顔を出していた。

けれどこれを表に出すことは出来ないのだ。

そんな事をすれば余裕のない女性だと思われるだろう。

私の中の母性や愛情の全てを凪にぶつけたい。

もっと愛したいのだ。

もっと深く深くまで…。

そんな愛という名の毒に犯されているのだ。

このままいくと…

私達三人の関係は…。



僕はどうするべきは未だに悩んでいる。

答えが出ない。

どちらも同じぐらい愛していることだろう。

もう全てを投げ出して別の相手に向かうというのも手ではないだろうか。

そんな邪心さえも浮かんでくる。

でも僕はこの感情を抑え込むことは出来ない。

彼女らとの生活を終えることは出来ない。

僕はどうしたら…。

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