53.驚きの…

 迷宮調査を終えて数日後、俺は迷宮封鎖が解除されているか確認をするため、ギルドへ行くことにした。

 朝一の混雑している時間は避けて、少し落ち着いた時間を狙ってギルドへと向かう。


 朝の混雑帯は既に過ぎていて、ギルド内はかなり落ち着いていた。隣のレストランにはほとんど人もいなかった。

 すぐにカウンターに向かい、職員の一人に声をかける。


「あの、11階層から下の迷宮封鎖ってまだ続いてますか?」

「え?あ、明日には解除される予定になっていますね」

「そうですか。分かりました。ありがとうございます」

「えっと、【リドフーベス】のラディアスさんですよね?」

「はい。そうですけど?」

「ああ。良かった。少しお待ちいただけますか?」

「えっと……何かあったんですか?」

「ギルド長からお話がありますので……」


 ギルド長ディーガンさんから?

 何だろうか?少し不安を覚えつつカウンターの前でそのまま待っていると、ディーガンさんがさっきの職員と一緒に戻って来た。


「すみませんね。ラディアス君」

「いえ、お話があるとの事でしたので……」

「大した事ではありません。私がラディアス君を見かけたら教えてくれと、職員達に伝えていたものですから」

「そうなんですね」


 ディーガンさんは迷宮調査の後、ギルドで姿を見なかったから心配していただけのようだった。

 迷宮封鎖の前は迷宮に入らなくてもほぼ毎日ギルドには顔を出していたからなぁ。

 迷宮調査後はアティアともパルネとも会っていないからな。あんなに協力してくれたオルディアさんもあれ以来見ていない。

 この数日はずっと街中の散策や武器屋や道具屋を巡ったりして、知り合いには全く顔を合わせていなかった。

 

 そういえば騎士団の視察についてディーガンさんに聞いておくか。もしかしたら騎士団の誰が来るのか知っているかもしれない。


 

「あの、ディーガンさん。王国騎士団の定期視察が日程調整中と聞いてるんですが、もう日程って決まりましたか?」

「ええ。来週に決まりましたよ。ご興味ありますか?」

「ええ。まあ……」

「ははは、やはり騎士団には憧れますよね。でも昔の騎士団は威厳も強さもありましたが、今の騎士団は……」


 ディーガンさんも王国騎士団にはあまりいい印象を持っていないようだった。


「毎回貴族行列のように騎馬に乗って街の中を練り歩いて、冒険者ギルドを訪問しても態度が悪いものですから、冒険者連中をなだめるのにいつも苦労してしますよ」


 なるほど……。だからこないだの若い冒険者も嫌そうだったんだな。

 自嘲するディーガンさんの表情が真顔になる。


「でも今回の視察はいつもとは違った雰囲気になると思いますよ」

「どうしてですか?」


 ふふんと、鼻を鳴らしたディーガンさんが続ける。


「今回視察に来られる方は本物ですからね。本物の英雄です」

「英雄……」

「ええ。あの暴君伯爵リーパドアを討ち取り、国王から特別称号をもらった【女傑英雄】ですよ」


 

 俺の表情が固まった。

 姉上が来る……?このペグルナットに?

 ホントに……?


 更にディーガンさんが続ける。


「まさかこんなにも早く【女傑英雄】殿にお会い出来るとは思いませんでしたよ。その強さは言わずもがな、圧倒的なカリスマ性と美しさをも兼ね備えてるというじゃないですか。今から楽しみで仕方ありませんよ」


 姉上がこうやって認められて褒められてるのは嬉しいし、誇らしいんだけど……。

 何か少し恥ずかしくなって、愛想笑いを浮かべてディーガンさんの熱の入った話を聞いた。


「ラディアス君も是非お会いした方がいいと思いますよ。良い刺激になると思います」


 

 そうですね……。刺激的な再会になると思います……。


 

 その後、ディーガンさんに騎士団が視察に来る日程を教えてもらい、ギルドを後にした。


 さて……どうするべきか……。

 会うのはちょっと怖いな……。でも騎士になった姉上も見たいし…………。

 そんな事を一人で悩みながら宿屋に向かって歩いていると、アティアに声を掛けられた。


「ラディー?何ぶつぶつ言ってるの?」

「あ、アティア……」

「何か久し振りだね」

「いや二、三日しか経ってねえよ」

「そだっけ?ねっ!ご飯行かない?」


 陽はすっかり昇りきり、お昼時だということにその時気付いた。


「ああ。もう昼か」

「昨日、美味しそうなご飯屋さん見つけたんだよ。二人で行ってみよ?」


 そして二人でそのアティアが見つけたというレストランに昼ご飯を食べに行った。


 その店で食事中、アティアに次の騎士団の定期視察に姉上が来る事を伝えたら、せるほど驚いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る