50.初めて知った視察
俺達三人は応接室を後にして、ギルドのレストランに再び集まった。
これからどうするか話し合う為だ。
椅子に腰掛けるなり、アティアが深い溜息をつく。
「スッキリしない終わり方だったね……」
「でもこれで
「そうだけど……ね」
俺達と【ルルーシィア】は誰一人欠けることなく、15階層の調査依頼を遂行することが出来た。だが20階層の調査をした【レガクリテ】と、もう一つのBランクパーティー【マクロン】の混合パーティーには犠牲者が出てしまっている。
【マクロン】は全滅し、【レガクリテ】は一人が犠牲になった。
それがあってアティアは依頼を完遂したにもかかわらず、スッキリしないってことなんだろう。
俺達は話し合って、俺達の迷宮探索再開は少し時間を置くことにした。本当なら迷宮封鎖の解除と共に迷宮へ探索に行くところだが、俺もアティアもパルネも今回の依頼では予想以上に疲弊したので、一週間ほど休むことにした。
こんなに休息が取れるのも、今回の依頼で思った以上の収入を得る事が出来たからだった。
急な依頼で、本来ならBランク冒険者が受けるような迷宮調査の依頼。
ギルド長のディーガンさんはかなりの報酬を俺達に出してくれた。
とりあえず俺達は体をしっかり休めて、一週間後に再びギルドに集合すると決めた。
ふと辺りを見ると、午前中で探索を切り上げた冒険者がチラホラとレストランに入ってくる。
迷宮上層の探索しか出来ない新米や下位ランクの冒険者の大半の者は、お昼に一度地上に戻って、午後からまた潜るという探索方法をとっている者が多い。
迷宮内のミニキャンプではしっかりと休めないし、緊張状態が続くのも体力を消費する。
冒険者ギルドで冒険者登録をした際に、最初はそういう風に迷宮探索を午前と午後に分けて探索するよう勧められる。
こうして今、午前の探索を終えた冒険者達が休息と食事を取るためにこのレストランへと戻り始めていた。
帰って来る冒険者達に気を使って、迷宮入口からは離れたテーブルにいた俺達の近くにも、冒険者達が腰を下ろし始めた。
俺達の近くに陣取った若い冒険者パーティーのテーブルから会話が聞こえてくる。
「
「へー、そうなんか。んじゃ、今度の
「ああ。そうだろうな」
テーブルを囲む四人の男冒険者。その内の二人の会話から
そのテーブルの会話に少し意識を向ける。
「貴族のボンボン共がわざわざご苦労なことだよな。迷宮都市にまで来るアレってそんなに大事かよ」
「俺ら冒険者に見せつけたいだけだろ?自分達騎士団の方が上だってことを」
「ホント、面倒くさいよな。苦労知らずの貴族様はよ」
その会話はアティアにも聞こえたみたいで、むぅと唸りながら複雑な表情でその会話を聞いていた。
先日討伐軍が討ち倒した暴君貴族リーパドア伯爵や、その他王国中央に近い貴族連中のせいで、王国市民の貴族への印象はあまり良くない。
俺の家であるサイブノン家や、アティアのネービスタ家は王国領の辺境である為、王国中央部の貴族とはあまり交流はないのだけど、市民からは同じような王国領内貴族としてひと括りにして思われているだろう。
この若い冒険者達にとっても“王国内の全ての貴族はワガママで自分勝手”という印象があるんだろうな。
でも冒険者に限らず貴族の印象が悪いのは分かっていた事として……。
彼らの話だと近々騎士団がこの町に来るっていうことか?
王国騎士団がなんでわざわざ迷宮都市に来るんだ?
しかも恒例行事みたいな言い方だぞ?
その後も彼らが退席するまで彼らの会話に聞き耳を立てていたけど、彼らの口からその詳細までは聞くことが出来なかった。
その冒険者達が立ち去った後、目が合ったアティアがその目で訴えてくる。
「やっぱアティアも気になるよな?」
「そうだね。騎士団、来るのかな?」
不思議そうな表情をしているパルネが俺とアティアに視線を向ける。
「あ、二人は初めてなんだね。騎士団、来るよ」
「「えっ!?」」
俺とアティアの声にビックリしたパルネの体がビクッと反応した。
「え、えと、アタシも二回ぐらいしか見たことないけど、何ヶ月かごとに王国騎士団がペグルナットの視察?に来るんだよ」
えっ?マジで!?
俺とアティアは顔を見合わせ、パルネが更に不思議そうに俺達の顔を眺めた。
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