41.混合パーティーの調査隊
ディーガンさんの説明では20階層を調査する【レガクリテ】ともう一つのパーティー、そして魔道具の専門家は朝早く、既に迷宮に潜っているとのことだった。
俺達は準備が整い次第、15階層に向けて迷宮へと潜ることとなった。
ディーガンさんはテーブルを囲む全員の表情を確認しながら、テーブルに広げられた迷宮の地図を指差して説明を続けていく。
「では皆さんに連れて行っていただく専門家を紹介致します」
ディーガンさんはそう言うと、声を上げて隣の部屋で控えていた人物をこの部屋に招き入れた。
入って来たのは若い女性だった。
魔道具の専門家というから研究家みたいな男性を想像していたのでちょっと意外だった。
きっちりとした服装に眼鏡姿のその女性は俺達に会釈をすると、ディーガンさんの隣に腰掛けた。
「紹介します。ヴァルナ魔道具店の店主ナサラさんです」
「ナサラ=ヴァルナと申します。冒険者の皆さん、この度はよろしくお願い致します」
ナサラさんがソファに座ったまま俺達に向かってペコリと頭を下げた。
俺達もナサラさんに自己紹介をしていく。
【ルルーシィア】のオドオドした
全員が自己紹介を済ませると、
「ではタリアータさん。迷宮内で皆さんの指揮をとっていただきたいのですが、よろしいですか?」
ディーガンさんから指名を受けたタリアータさんがこの場にいる全員の顔を見渡した。俺達も【ルルーシィア】も全員が無言で頷くと、
「承知致しましたわ、ギルド長」
「ありがとうございます。それでは準備が整い次第、出発をお願いします」
ディーガンさんが深々と頭を下げた。
元々迷宮に潜る予定だった俺達もオルディアさんも準備は整っていたので、【ルルーシィア】と俺達はすぐに迷宮へ下りることにした。
◇
「ねぇ、貴方。貴方は剣士よね?」
「ああ。そうだけど」
「じゃあ、前衛?
迷宮へ下りてすぐ俺達は隊列順を決めていた。
タリアータさんとエレシアが各自の
エレシアは未だに格下の俺達と組まされたことに納得していないのか、時々乱暴な口調で俺達に話し掛けてくる。
俺は普通にスルー出来るが、横で聞いているアティアはそうもいかないらしく、時々キツい目をエレシアに向けていた。
俺達は1階層の少し開けた空間でミニキャンプを開き、隊列順を決めていった。
【ルルーシィア】はエレシアが剣士、ネルアリアさんが僧侶(近接武器有り)、タリアータさんが魔術師。
俺達【リドフーベス】は俺が剣士で、パルネが軽弓手、アティアが精霊魔術師。で、オルディアさんがハルバードを使用する重戦士だ。
非戦闘員のナサラさんがいるので、ナサラさんを中央で護衛出来る隊列を組む必要があった。
各自の
俺とエレシアが先頭ですぐ後ろでパルネが控える。二列目にナサラさんとタリアータさんが並び、その後ろにオルディアさんとアティアとネルアリアさんという三列の並びに決まった。
隊列が決まると俺達は階層の奥へと進んで行った。俺の隣を歩くエレシアは細身の剣レイピアを腰に携えてしなやかな足取りで進んで行く。
出発の際に俺に向かってフンッと鼻を鳴らしてからは、俺やパルネには見向きもせずただ前だけを見ていた。
パルネの方に振り返ると、パルネは苦笑いだけを浮かべていた。
やりにくい……。ま、戦闘になれば大丈夫だと思うけど……。それにしても俺以外みんな女性っていうのも……。
もうちょっと配慮してほしかったな。今更だけど……。
俺達混合パーティーの調査隊は迷宮を順調に下りて行った。
時おりモンスターが出現してもエレシアが先行して前に出てあっという間に撃退していった。
エレシアの背中が俺に引っ込んでろと言っているような気がする……。
俺が戦闘に加わろうとすると、
「別にお気遣いいただなくて結構よ。私一人で問題ありませんから」
と、返ってきた。
本人が一人で大丈夫って言ってるし、タリアータさんからも特に指示は無いし、しばらくはエレシアに任せとこう……。
一応いつでもフォローが出来る位置でBランク冒険者エレシアの戦闘を見守っていた。
そんな調子でエレシア一人でモンスターを撃退しつつ、俺達は11階層まで下りてきた。
ここから下の階層はストーンゴーレムを倒して以来になる。あの時は11階層から15階層まで全くモンスターに遭遇しなかったけど……。
11階層から12階層へ下りる階段へ向かうと、階段手前の少し広い回廊でパルネがモンスターの気配に反応した。
「いるよ。この回廊の先」
暗闇の奥に赤く光るモンスターの双眼。向こうもこちらの存在には気付いたようで、ガサガサと蟲系モンスター特有の気持ち悪い足音が聞こえてくる。
ぼんやりと光る赤い双眼が暗闇の中に無数に見える。
エレシアも俺も剣に手をかけて前方を警戒する。エレシアがチラリと俺に視線を向ける。
「大丈夫よ。私一人でも……」
エレシアはそう言ったが、隊列の後方からオルディアさんの声が響いた。
「ラディー!気ぃつけや!数が多いで!」
赤い双眼の持ち主の姿が見える距離になった。その姿は
しかしその背丈は成人男性ぐらいある。
「ディノマンティス!」
俺は初めて会ったモンスターだったが、【ルルーシィア】は出会ったことがあるみたいでタリアータさんがモンスターの名を叫んだ。
……ディノマンティス。
それほど大きくないし、武器は鎌状の前脚ぐらいだろう。
だけど、この数は……。
赤く光る眼は回廊の奥の暗闇に続いていた。
その数はざっと100は超えていそうだった。
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