39.迷宮異常の原因
依頼という言葉を聞いて少し背筋が伸びた俺と、隣でニヤニヤと笑みを浮かべるオルディアさん。
「依頼かぁ。今、調査してる奴らでは手ぇ足らんっていうことやな?ギルド長」
「ええ。おっしゃる通りです。オルディアさん」
ディーガンさんも少し困ったように笑みを浮かべていたが、すぐに真顔になると、
「まだ深刻な状況ではありませんが……いち早く解決するにはその方が良いだろういう判断に至りました。【レガクリテ】と【ルルーシィア】の6人で解決してくれると確信していたのですが、予想よりも広範囲だったもので……。お恥ずかしい限りです」
「なるほど……で、その状況ってどんな感じなん?」
依頼を受けた
ディーガンさんの話によるとアティアの予想通り、迷宮の魔素と魔力の乱れが続いており、モンスターの出現場所にかなり影響が出ているとのことだった。
通常、下層へ下りるほど強力になるモンスターがその法則を破って、下層に弱いモンスターが出現したり、逆に上層に本来いるはずのない強力なモンスターが現れたりという現象が続いているとのことだった。
今は少し落ち着いて1階層から10階層までは通常に戻ったことを確認したので、10階層までの封鎖を解除したそうだが……。
「特に15階層から20階層辺りのモンスターの生態が未だかなり乱れています」
「なるほど……それで原因はまだ分かっていないんですか?」
「はい。ですが、魔素と魔力の乱れは15階層と20階層が酷いので、この二つの階層に原因があると確信しています」
オルディアさんがディーガンさんのその話を聞きながら何度も頷く。
「何かしらのアイテム使って、誰かが魔素を乱してるんかもしれへんな」
「ええ。私もそう思います」
俺とアティアが目を合わせ、アティアがオルディアさんとディーガンさんを交互に見る。
「そんな事出来るアイテムがあるんですか?」
「私も噂程度しか聞いたことありませんが、可能性はあるんですよ。アティルネアさん」
「何の目的でそんな……」
「……分かりません」
ディーガンさんは静かな口調で答え、真っ直ぐに俺達の視線を向けると、
「それで【リドフーベス】の皆さんには【ルルーシィア】の皆さんと協力して、15階層の調査をお願いしたいのです」
俺とアティア、パルネの視線が合う。アティアが少し戸惑ったように、
「あの……【ルルーシィア】の人達と、ですか?」
「はい。リーダーのタリアータさんはご存知ですよね?他のメンバーの方も頼もしい人達ですよ」
疑問が浮かんだ俺がすぐにディーガンさんに尋ねる。たぶんアティアとパルネも同じ疑問が浮かんだだろう。
「何で俺達と、なんですか?俺達、まだDランクになったばかりですよ?」
【ルルーシィア】はBランクの冒険者パーティーだ。彼女達と組んで調査するのなら俺達以外にも協力出来る、ランクの釣り合ったパーティーがいるだろうと思った。このペグルナットには他にもBランクやCランクの冒険者パーティーは数組いるはずだしな。
何故俺達が他の冒険者パーティー達を差し置いて調査を依頼されたのか?
ディーガンさんが少し戸惑ったような表情を浮かべた後、また軽く笑みを見せる。
「ラディアス君。冒険者のランクはあくまで実績の積み上げなんですよ。なので必ずしも強さとランクは正しく連動しているとは限らないんですよ」
「まあ理屈は分かるんですけど……」
「何や?ラディアス。
そう話すオディリアさんの表情は嬉々としている。恐らく迷宮封鎖のせいで最近迷宮に潜れていないから、この降って湧いたトラブルは堂々と迷宮に潜れるからむしろ大歓迎なんだろうな。
依頼受けてるのは俺達なのに何故かオディリアさんがノリノリの行く気満々で答えている。
アティアとパルネはそんな様子のオディリアさんを見ながら苦笑いを浮かべている。そしてチラリとアティアのジト目が俺に向けられた。
「いや、行きたくないわけじゃないんですけど……」
そう。気がかりなのは【ルルーシィア】のタリアータという女魔術師だ。
【ルルーシィア】のリーダーをしているとのことだったが、初めて会った時に俺に色目を使ってきたせいでアティアからの印象がめちゃくちゃ悪い。出来ればそういう方達とは行動したくないというのが俺の本音だ。
迷宮調査には行きたいけど……。
「ディーガンさん。俺達だけで調査に潜るというのは駄目なんですか?」
「それは出来ません、ラディアス君。貴方達と【ルルーシィア】には我々ギルドが派遣する専門家を護衛していただきたいのです」
「専門家の護衛?」
「ええ。今回の迷宮異常を解決する為、魔道具の知識に長けた専門家を派遣します。その専門家を護衛してください」
オルディアさんが腕組みして体を仰け反らした。そして首を傾けてディーガンさんに尋ねる。
「その専門家はこの異常を直せそうなんか?」
「はい。この
「なるほどねぇ~。ラディアス、どうする?」
……いや、何で
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