第29話 宿命 2
頭の中に椅子に座る四番の少女の姿が映った。
その体にはさっきよりも多くの電極が貼り付けられていて、手足は椅子に拘束されている。
なんなのこれ……?
拘束された少女の顔はさっきよりも窶れ、肌は土気色で、長く綺麗な黒髪はところどころ抜け落ちていて別人のように見えた。
そして落ち込んだ眼窩から恨むような目をまっすぐ正面に建つ人物に向けていた。
少女の正面には白衣を着た女性が立っている。
私からは後ろ姿しか見えない。
はなれたところに犬が数匹入れられた檻がある。
「十二番と三番、七番と八番の子はどうしたの?一昨日から見ないけど……それまで起き上がれなくなるくらい弱っていたのに」
「具合が悪いから他所の病院に移したわ」
後ろ姿の人物が答えた。私は直感的に、この人がさっき話に出たレベル4の研究を進める「所長」ではないかと思った。
「嘘。聞こえるわ。みんなの声が。痛い、悲しい、辛いって。その前にいなくなった子の声も最近になって聞こえる。本当にどこに行ったの?」
「くだらないことを言っていないでさっさと実験を始めるわよ!」
「先生もいなくなった。どこにいったの?」
「あの人は規律違反を犯したの。あなたを外に連れ出したから罰としてここにはもういないわ」
「先生に会わせて!」
少女が強く言った。
「レベル4の実験で満足する成果を出せたら会わせてあげるわ」
「また犬の実験?」
「そうよ」
「もう嫌!!」
少女が拒否すると所長は他のスタッフに指示した。
少女の体がガクガクと大きく痙攣して悲鳴を上げる。
「電気ショックは嫌でしょう?さっさとやりなさい」
「嫌だ……みんなに会わせて……」
所長は苛立ったように机を叩いた。
「いいわ。会わせてあげる」
その言葉に合わせてスタッフが少女の拘束を外す。
「来なさい!」
所長が少女の手を掴んで大股に歩く。
少女は力なく、それでも懸命に倒れないように従った。
長い廊下を歩いていく。
「ここよ。あなた以外の子供はみんなここにいるわ」
所長はそう言ってドアを開けた。
真っ暗な部屋の中に青白い明かりが幾つか見える。
「ここは……?」
少女が問いかけると所長が電気のスイッチを入れた。
「きゃああああー!」
少女が悲鳴を上げたのと同時に私も悲鳴を上げた。
「これがあなたのお友達よ」
冷然と言い放つ所長。
少女の目の前には、壁一面が棚のようになっていて透明の容器が置かれている。
その中には内蔵や脳髄、眼球が入っていた。
それを上についた青白い蛍光灯が照らしている。
「あわわわ……」
少女はわなわなと震えながら言葉にならない声を上げる。
「投薬とショック療法で耐え切れなくなった被検体は全部処分したの。ほとんど廃人だったわ。ただ、薬物投与のサンプルとしてこうして保存してあるだけ」
「あああ……」
がっくりと膝をついた少女の目から涙が、口から涎が垂れる。
「あなたもこうなりたくなかったら結果を出しなさい!!私の満足のいく結果を!!」
所長は怒鳴ると打ちひしがれた少女を足蹴にした。
「ちゃんと結果を出したら生き残ったあなただけは自由にしてあげる。ちゃんと戸籍も用意して外の世界で生きていけるようにしてあげるわ。こんなふうに切り刻まれて容器に保管されるよりずっと良いと思うけどね。どう?やる気になったでしょう?」
少女は床に倒れふしたまま体をわなわなと震わせる。
「よくも……よくも……」
「えっ?なんだって?」
少女が顔を上げたときにその瞳、鼻、口からは血が流れていた。
あまりの光景に私はまたも悲鳴を上げた。
鼓動が激しくなり、全身が発汗している。
胸が押さえつけられるような息苦しさ……。
まるで自分に四番の少女から激しい憎悪を向けられているように感じた。
「私の怒りは頂点に達して感応波は制御不能になった。ここが……頭の奥と胸の奥が荒れ狂うの。まるで嵐みたいに自分でもどうしようもなく、叫んでも叫んでも収まらない」
遠くから語る未来の声。
私の頭に映る四番の少女は泣き叫んでいた。
怒りながら、暴徒と同じように血を流して怒りに身を震わせ叫び、頭を掻きむしり、床を叩き、最後には自らの腕に噛みついて獣のような咆哮を上げた。
所長は発狂して自らの頭を何度も壁に打ち付けて絶命した。
ヴィジョンはそこで終わった。
私は必死で呼吸を整えた。
話しだけで聞くのとこうしてヴィジョンを見るのでは全く違う。
「暴走した私の感応波は外にも広がった。病院の人間も、外にいる人間も影響が出る者はみんな狂いだした。そこで所長の仲間たちは施設の空調設備から毒ガスを流し込んで私を殺したの。珠代が言ったように人間を狂暴にさせる感応波は遠隔操縦と同じで、うつろな精神状態や自我が弱い人間に強く作用する。あの頃の私はそれが限界だった。奴らはいつの間にか最悪の事態を想定して私の感応波を中和できる機械を作っていたの。それで感応波の影響を弱めている間に作業したのよ。私を殺す作業をね」
未来の顔に一瞬だが怒りが差したように見えた。
「それでも長時間私の感応波の影響を防ぐのは不可能だった。結局は中にある私の遺体も資料もなにも持ち出せずに施設を文字通り封印するしかなかった。中和装置は外へ私の感応波が危険なレベルで漏れることだけは完璧に防いでいたから」
未来は大きく息を吐いた。
「それからはとてもとても長い年月が流れたわ。私の怒りと憎悪、他の子たちの無念、全てが混ざり合い暗闇の中で増幅していった。何十年もたったある日、大きな地震がきて施設の天井の一部が崩落した。その瓦礫が中和装置のいくつかを壊したのよ。そして出口を塞いでいた壁も崩れた。これで外から人を引き入れることができる……。タイミングよくその場に来た人を引き入れた。中和装置を破壊させるために。でも充満していた感応波の強さは私の想像をはるかに超えていて、せっかく引き入れた人たちを殺してしまった。まず私は強力すぎる感応波を制御するよう努めた。そして自分の一部を外に飛ばせるようになったので同質の精神を持つ人間を探したわ。私のいる施設の上にはいつの間にか学校が建っていてたくさんの人間がいた。まずそこから探してみた。そして見つけた」
「もしかして、その同質の精神の持ち主というのが弓月未来さん?」
「そう。そして先生の血縁者である恭平も見つけることができた。しかも未来の親友で彼は未来に対して友情以上の感情を抱いていた。これは本当に想定していなかったことだったわ……奇跡だと思った……まるで先生が生きているみたいで嬉しかった……とにかくこの人間に、同質の精神を持つ弓月未来に私の精神核を入れて相手の自我を消し去れば私は新しい体で肉体を持った「人間」の生活をできるようになる……先生、いや、恭平と一緒に」
未来の小織准教授に対する思いは小織恭平に向けられたということか。
私はそのことに触れず、未来の口にした単語について質問した。
「同質の精神ってなに?」
「人の中に入って制御する実験を繰り返していくうちに精神的なタイプの近い人は長時間操れることがわかったの。もちろん疾患者と健常者の違いはあるけど、それでも完全に自分のものにする方法はなんとなくわかっていた。私の精神核(コア)……それを相手に入れて相手の自我を消し飛ばせば、その人の記憶を引き継いで私がその体を自分のものにできる。切り飛ばしたような枝葉の精神ではダメ。こればかりは精神核(コア)でないと無理なの。もちろん元の私は抜け殻になって死んでしまうけど」
未来は買ってきた飲み物を口にして喉を潤すと話を続けた。
「本当なら、その子……未来を操って地下まで連れてくればよかった。でも中和装置のおかげで私は持てる力の十分の一も外へ飛ばせない。ただ狂暴化させるよりも相手の自我を抑えて狂暴化もさせずに思い通りに操るのはずっと力と集中力がいる。もどかしかった。目の前に私の生きる道があるのに私は鎖でつながれていて踏み出すこともできない。どうすればいいか考えた……その結果、あの暴動事件を思いついたの」
「なぜ暴動事件なんて?何の関係もない人を巻き込むなんて」
「それは関係ない。私にとって他の人間なんてものは私のような存在をこの世に生み出した憎悪の対象でしかない。生み出して苦しめて殺した連中の仲間」
「違う、人はみんなそんな酷い人ばかりじゃない。あなたたちの境遇にはたしかに同情するけど、この世に生きている人たちだって」
未来が片手を上げて私の言葉を遮った。
「その話はよしましょう。不毛だわ。あなたと私では根本的な考えが違うからどれだけ話しても交わることはない。そもそも私は人間でもない。医学的に死亡して精神だけで何十年も存在し別の人間の体を我が物にする。そんな人間がいると思う?……あなたたちと私では種が違うの。それより話を聞きたくないの?あなたが知りたかった暴動事件の真相」
そう言われると黙るしかなかった。
それに今ここで未来と議論したところで仕方ない。彼女の言う通り、私がいくら言葉を尽くしても交わることはないと思った。
昂った自分の感情を落ち着かせてからインタビューを再開した。
「聞かせてちょうだい……それであなたはどうやったのかを」
「私はつぶさに学校を観察して地下の通路とどうつながっているか、どうすれば未来がここまで来れるのかを考えた。それに自分の力がどの程度のことができるのかも確認したかった。まずは街にいる動物や人間に感応波を浴びせて狂暴化した状態でどこまでコントロールできるか、副作用は、といろいろ試してみた。その過程で田島という老女を殺した。あの人は未来に地下のことを話した。余計なことをこれ以上吹きこまれて地下へ行くということに警戒心を持たれると操縦するときの妨げになるから。準備を整えた私は実行に踏み切った。まず街の人間を狂暴化させて学校に集めて逃げられないようにする。次に学校にいる人間に感応波を浴びせて狂暴化させる。ただし特定の人間は狂暴化しないようにガードしてやらなければならない。あらゆる場所の情報を同時に把握して対処するための集中力を維持するのは大変だったけど結果は大成功だった。私は職員室まで逃げてきた未来の中に入り、地下通路への話を田島から聞いたということにして鍵を持っている教師や一緒にいる生徒を焚きつけた。校庭を突っ切り第二校舎へ行く。そこで未来の体から出た私は自分のいる地下施設まで未来を導き中和装置を破壊させた」
「そして自分の核を入れたのね……」
未来がうなずく。
「肉体が医学的に死亡しても精神核だけで存在し続けて同質の精神の人間の体に入り込み新たな肉体を得る。これがレベル7。珠代に教えたら発狂したわね」
未来は声を立てて笑った。
「ついでにあなたにあげたファイルも持ち出した。あんな忌まわしい物でも過去に生きた証だから。それに恭平は先生みたいな研究者になりたいと思っていた。だからなにか役に立つかもしれないと思ったの。でも今の私にはもう必要ない。だからあなたにあげたの」
これで地下へ向かった未来が雑木林に行かずに学校へもどってきたわけがわかった。
職員室から地下へ行ったのは弓月未来で、学校にもどってきたのは弓月未来の体を得た四番の少女だったということだ。
「私は未来と一緒に職員室にいた生徒たちの記憶を操作した。地下のことを誰にもしゃべらせないために。同時に地下室に私の精神核(コア)の三分の一を残してきた。感応波を出して地下に入ってきた人間を殺すために。その三分の一は今日、あなたと一緒に地下へ行ったときに回収できたわ。これで私は完全になった」
「なぜわざわざ一部を残すようなことを?それにみんなの記憶を操作して地下のことを秘密にしたの?結局あなたはこうして地下のことを私に話してる。保奈美さんたちにわざわざ封じた記憶を蘇らせてまでして」
「精神核(コア)を残したのはあそこにまだ感応波が渦巻いていると監視している奴らに思わせるため。それは……」
未来はしばらくなにか考えるように黙った。
そして小さく息を吐くと話し始めた。
「人として生きてみたかった。私の中にある自分の憎悪……私と共にあるみんなの悔しさと憎しみ……でも、そういうの全部抑えつけたの。一度でいいから人として生きてみたかった。みんなにはお父さんとお母さんがいる暮らしを……私にはもう一度……もう一度先生と一緒に見た夢を実現させる人生を。だから一時、私は復讐を忘れていた。地下のことも秘密にして人としての生活が壊されるのを防いだ」
未来はそこまで言うと大きくため息をついた。
「でも現実はそんなに優しくなかった。完全に私の精神核(コア)が適応した未来の体は私の体に変わっていった。私だってそんなことは予想していなかった。そのことに未来の両親が気がついたの。感じたわ……私を恐れる気持ち。その恐れに私たちは過敏に反応した……意図したものなのか、そうでないのか、今となってはもうどうでもいい……私は未来の両親を殺した。私たちの感応波をまともに受けた未来の両親は一瞬で脳細胞が破壊されて死んだわ……私の……私たちの力は想像を超えて強くなっていた。私が、私たちが暗闇で怨みを増幅させていた間に得た新しい力。生きていたときにはそんな強力な力はなかった」
「それがレベル5と言っていた力ね」
「そうよ」
「恭平君は?小織恭平君はなぜ自ら命を絶ったの?」
「恭平は私の全てに気がついてしまった。彼は私の写真を持っていたから、日に日に顔つきが変わってくる私を見て不審に思った。私は全てを打ち明けた。恭平にだけはいつか話そうと思っていたから。嘘はなしにしたかった。その結果、彼に憎まれても嫌われてもいいと思った。だって私は彼の大切な友達を自分が生きるために殺してしまった。彼が友達の死を悲しんでいることは痛いほどわかったわ。だからその報いなら仕方ないと思っていた。でも彼は私の過去を聞いて受け入れてくれるよう努力してくれた。同情してくれたのだと思う……それに自分の大叔父が実験に関わっていたという責任感もあったのかも……事件が終わったときに恭平にファイルを見せたわ。大叔父が実験に関わっていたことを知った恭平は地下の存在を誰にも言わなかった。でも彼は良心の呵責に耐えきれずに命を絶ってしまった。友達を殺した者と心を通わせることへの罪悪感!おぞましい実験に敬愛する大叔父が関わっていたことへの失望!」
未来の頬を涙が伝った。
「私は自分の感応波でなんとか恭平の心を癒してあげようと思った。罪悪感を和らげてあげたかった……でも無理だった……私の力は人を殺すことはできても死を止める力はなかった……無数の人間は殺せても、たった一人の恭平を救えなかった」
未来は肩を震わせて嗚咽した。
涙が頬を伝い落ちていく。
「恭平……優しい子……本当に先生にそっくりだった」
未来は愛しむような笑みを見せながら涙を拭った。
「それで私は人として生きることは止めたの。もともと人じゃないのだから人としてなんて生きられないのよ。生まれたときから決まっていたのかもね。それからの私は自分のルーツを知りたかった……それはあなたの協力で知ることができた。今の私は自分の力がどれだけあるのかいろいろと試してみたい。例えばさっき話したレベル5。その気になればこの街にいるすべての人たちの脳細胞を一瞬で破壊できる。いえ……もっともっと広げられる。それこそ世界中に」
目の前の未来の口から出てくる言葉を聞いていて私は戦慄した。世界中の人間の脳細胞を一瞬で破壊するなんてできるわけがない。
そう思っていても、あの暴動が彼女の力のほんの一端だと考えたら不可能ではない気がしてくる。
もしかしたらできるのではないか。
仮に世界中でなくてもこの国だけでも。
この街だけでも一瞬で死の世界に変えてしまう力があるのではと考えてしまう。
そんな私の心を見透かしたように目の前の未来の口許がつりあがった。
「半信半疑なのかな?」
愛らしい笑みを向けて首を傾ける。
「範囲や対象なんて自由に調節できるから試しに見せてあげられる。なんなら今すぐでも」
そう言った未来の顔から感情が消えた。
瞬間、私の頭からつま先まで電流のように恐怖が駆け抜ける。
「ダメッ!!止めて!!」
「見たくないの?」
「それは……」
「あなた、本当は見たがっているでしょう。記録に残したら凄いことになるわよ」
そう。私はあの暴動事件を調べていて、あれが人為的なものだったらその一端を見て見たいと思ったこともある。ほんのわずかだがそう思った。
それを記録に残せればもの凄いことになると。
でも彼女を前にして言い様のない恐怖が私のつま先から這い上がってくるような感覚に襲われた。
いけない。
でも……。
「ふふふ……見たがっている」
そう言うと未来は立ち上がり窓際に行くと私に手招きする。
窓の下には西日に照らされた街を歩く大勢の人がいた。
とても小さい。こうして見ていると私と同じように家族がいて友人がいて日常がある「同じ人間」ということを忘れてしまうような気がしてしまう。
「同じ人とは思えない。そうでしょう?」
未来には私の心が筒抜けなのだ。
「たまたま外の風景を映していたら事件が映ってしまった。それでいいじゃない」
「ダメ!できない!」私は首を振る。
未来は鼻で笑うと「まずあれ」と、言って向かいにあるコンビニの前に屯っている三人の若者を指さした。
みんな長めの髪を染めてキャッチのような恰好をしている。
真ん中にいる一人が前のめりに倒れた。
両脇にいた二人が驚いてしゃがみ込んで声をかける。
「ほ、ほんとうにやってるの!?」
「ええ。次はあれ」
今度は左側にいた一人が倒れると右側の一人が悲鳴を上げて尻もちをついた。
通行人が異常な事態に気がつき、一人また一人と脚を止めて倒れた二人と助けを呼ぶ一人を見る。
「こんなのは?どんどんいけるわ」
すると周囲にいた十人ほどが今度は倒れた。
あちこちから悲鳴が湧き上がる。
街は阿鼻叫喚の場と化した。
悲鳴が上がる中、どんどんと人が倒れていく。
未来は無表情にただ窓の下を眺めているだけだった。
話しで聞かされるのと実際に目の前で起こされるのとではわけが違う。
「もう少しセーブすれば前みたいに暴動も起こせるわ」
そう言うと興味がなくなったかのように窓際から離れて椅子に腰掛けた。
「座って。まだ話があるの」
未来に促がされて私はソファーに座ろうと歩き出したが脚が震えて思うように歩けない。
歯が浮いたようにガチガチと震えている。
いつの間にか全身が発汗していた。
胸が締め付けられるように苦しい。
今すぐにでも叫びたい衝動にかられたが声が出ない。
前身で恐怖を感じている私を未来が冷たい目で見る。
「無理よ……」
一言告げてから震えながらもようやく座った私は未来を睨みながら中和装置の存在を告げた。
「あの装置があればあなたの精神感応波を防げるはず。現にあなたはあの地下から動けなかった。精神感応波の影響する範囲も限りなく小さくできるはずだわ」
「本気で言ってるの?」
未来は声を立てて笑った。
「私はこうしてどこにでも行ける体を得た。それにインターネット回線にも潜り込ませることができる。私の精神感応波を防ぐことなんて事実上できないことだってわかるでしょう?」
もう未来の凶行を止める術はないのだと実感した。
私たち人間ではもはやどうしようもない。
未来が珠代に言ったように、これは世界を滅ぼせる力だ。珠代が言っていた一つの惑星に存在する知的生命体を全滅させることだって可能だろう。
それはもはや人知を超えた存在が行使する力であり、災害と同じなのだ。
非力な人間は諦めるしかない……。
「そんな暗い顔しないで。次は別の話をしましょう。今日新しく約束したこと。私と一緒に動画配信するって話」
未来は形のいい唇の端を吊り上げると酷薄な笑みを浮かべた。
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