第18話 都市伝説

 元鹿島高校の生徒たちから寄せられたメールの中に奇妙な都市伝説について書かれたものが散見された。

大まかにまとめると人もまばらな場所に建てられた病院が新種のウイルスを研究していて、身寄りのない患者を集めて人体実験をしていた。しかしある日アウトブレイクが起こり一晩で患者は全滅。職員も大勢亡くなったというものだ。

話しにはまだ続きがあり、その後病院は取り壊されて二十年近くたってから周辺地域の再開発が始まり、病院の跡地に学校が建てられた。

だが具体的な地名や名称は出てこない。

鹿島町と都市伝説に共通していることといえば、人もまばらだった地域が開発されて学校も建てられた、ということだけにすぎない。

そんなところは日本中にあると思った。

そのモデルが鹿島町だとしたら、町の開発に着手されるより以前にそんな大事件があったかどうかだ。

これは期間が長いだけに調べるのには時間がかかりそうだと思った。

こっちの方は明日以降にしよう。

カーテンが揺れて風鈴が弱々しく鳴った。時計を見るともう五時になる。

そろそろ美琴が帰ってくるころだ。

パソコンの電源を落として下に降りようとしたときだった。

「うわあっ!」

イスが倒れるくらいの勢いで立ち上がった。

「なに!?」

そのまま後退りする。

誰かが見ている……電源を落とそうとしたパソコンの画面から視線を感じたのだ。

瞬間、画面にまるで細かい電流が枝分かれに伝うような光が幾条も流れた。

「な……なんなの……!?」

いつの間にか部屋全体の空気が重苦しく感じる。

まるで圧迫されるように息苦しい。

そして部屋が暗い……蛍光灯は点いているのに暗く感じる。

なにが起きているのかわからない恐怖からどっと汗が出た。

部屋を見渡しても異常はない。でもいつもの部屋ではない。

私はしばらくそのまま動けないでいたが、ふいに空気が軽くなった。

「ああ……」

思わず声が漏れた。

蛍光灯の明るさもいつもと変わらない。

パソコンの画面からも視線は感じなかったし、変な光も流れない、いつものモニター画面だ。

窓の外からは蝉の声が聞こえてくる。

いつもの私の部屋だ。

今感じた変なのは気のせいってやつか……疲れてるのか私は……でも思いあたる節がない。

知らないうちに疲労が蓄積されてたのかも。

冷蔵庫に栄養ドリンクがパックであったから飲んでおこう。

電気を消して部屋から出た。


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