第305話 進路
魔法学校の1室、スピカはティラミスとエクレール、2人の教師と進路について話し合っていた。
「スピカさんは――、ここを卒業したらそのまま、今籍を置いてるギルドに入る予定なのね?」
「はい! マスター・ユタタさんも許しも得ています! ラナさんもアビー先生もいるので早く一緒に働きたいです!」
「なるほど……。噂には聞いていましたが、新設されたギルドにあの『ローゼンバーグ卿』が所属し、アレンビー・ラドクリフも手を貸しているとは。ある意味、新人魔法使いにとっては理想的な環境かもしれません」
セントラル魔法科学研究では、進級の時期が近付いていた。次で4回生となるスピカたちは、卒業後について真剣に考えなければならない。
スピカは迷いなく卒業後の進路を「幸福の花」と決めていた。しっかりと「魔法使い」の免許をとり、一人前としてギルドで働きたいのだ。
教師との面談が終わったあと、スピカは、アトリア、ゼフィラ、シャウラ、ベラトリクス、サイサリーのいつもの仲間たちで集まり、お互いの進路について話をしていた。
「……スピカはある意味、安泰よね? 卒業さえしっかりできれば、ラナさんところに迎えてもらえるわけだから」
「はい! アトリアは『ブレイヴ・ピラー』ですか?」
スピカの問い掛けにアトリアは無言で頷く。彼女が魔法使い――、否、「魔法剣士」の道を志したきっかけはシャネイラとの出会いから。ゆえに彼女の進む道は最初からブレイヴ・ピラーと決まっており、この魔法学校さえそのための足掛かりに過ぎないのだ。
「オレは絶対『知恵の結晶』だ! アレンビー先生が臨時で来てくれた時に決めたからよ!」
ベラトリクスは、女性陣からすると不純な動機と思われるそれを堂々と誇らしく語っていた。この3人はある意味、今の時点で確固たる進路を決めている。ゆえに迷いがほとんどなかった。
「……サイサリーの希望は『やどりき』だったかしら? あそこは研究もずいぶんと注力してるから、学科に強いのは有利かもね?」
「僕の場合、君たちと違って特別な拘りはないからね? あくまで『第一希望』って感じさ。厳しかったら他の選択肢も視野に入れているよ」
「私は『王国魔導士団』もアリだと思ってる。もちろん、『やどりき』や『知恵の結晶』も選択肢のひとつよ? 推薦は絶対譲らないんだから」
サイサリーは癖のある前髪をいじりながら答え、彼に続いて話をしたのはシャウラだった。ともに実技も学科も優秀な2人だ。
「オレはどうすっかなー……。お堅いところは苦手だし、小さくていいから自由にやれるところ探したいよなー」
ゼフィラは手を後ろに組み、椅子を傾けて馬漕ぎをしながら呟いている。彼女だけはまだ進路について明確な筋道を立てていないようだ。
「あっ! そうだ! みんなに話そうと思ってたことがあったんだ! マジメな話してたらついうっかりしてたぜ!」
ゼフィラは皆の注意を引くように、ポンと軽く手を鳴らした。仲間たちの視線が集まったところで、彼女はゆっくりと口を開いた。
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