第306話 復帰
「噂を小耳に挟んだだけだからさー、真偽は定かじゃないンだけど……」
ゼフィラはこう前置きをして話始めた。
「……あなたの話っていつも思うけど、一体どこ情報なの?」
「んっふっふー、このゼフィラちゃんは顔が広いわけなんですよ?」
「……『広い』を通り越して『怖い』とすら感じるわ」
「で? もったいぶんなよ。なんかおもしろい話か?」
アトリアは呆れた表情を見せ、ベラトリクスは話の先を急かす。スピカは少し前のめりになって話の続きを今か今かと待ち望んでいた。
「えっと……、ウェズンさん、近いうちに戻ってくるらしいんだけど――」
「ウェズン」の名を聞いて皆は一斉に反応を示す。ただ、ゼフィラの話はまだ続きがありそうだ。
「……けど、なに?」
「オレらが4年に上がるタイミングで、その――、3年を
つまりは学校に復帰こそするが、同級生ではなくなってしまう、とのことだ。たしかに元々体調不良の多かったウェズンは授業の出席日数が規定のギリギリだった。それでも、圧倒的な魔法の技量と知識によって成績は常にトップを維持しており、欠席のマイナスを帳消ししていたのだ。
「そう……。また競うことができないのは残念だけど、復帰の目途が立ったのならよかったわ」
そう口にしたのはシャウラ。編入してきたスピカ、アトリア、ベラトリクスよりウェズンとの付き合いは長く、彼女が常に学年トップに君臨するなか、2番手にい続けた。
ウェズンへのライバル意識も人一倍強く、改めて彼女と競う機会が絶たれたことに、かすかな落胆の色も感じられた。
「……3年からといっても、半期で飛び級もあり得るんでしょう? あのウェズンさんならなおさら。4年の後期にはまた同級生になっているかも?」
アトリアの言うことはもっともで、ウェズンは出席数が平均ならすでに飛び級で4回生になり、卒業を間近に控えていてもおかしくなかったのだ。
「あたしはまたウェズンさんと一緒に勉強したいです! 楽しみに待っていましょう!」
スピカは目を輝かせてそう言った。彼女の脳裏には先日偶然出会ったウェズンの姿が浮かんでいた。傍から見る限り、どこか身体に不調があるようには見えなかった。あの様子ならきっと噂通り、すぐに戻ってくるだろう、と……。
「オレはあの女、バケモノ染みてて苦手だがよ……。負けっぱなしは性に合わねぇからな……」
「僕もウェズンさんには負け続けてるからね。ベラトリクスと同意見だ。真正面から闘って、一度は勝ちをもぎ取りたいよ」
各人各様の思いはあるが、皆、共通してウェズンの復帰を期待していた。そして、できることなら、もう一度、同級生として魔法の技量を競い合いたい、と。
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